2026年
| 山下洋輔 / ソニー・ロリンズ / ポール・デスモンド |
--- 山下洋輔 --- | |||
![]() FROZEN DAYS ![]() FROZEN DAYS(裏面) |
山下洋輔(pf)、森山威男(ds)、坂田明(as)の第二期山下洋輔トリオによる演奏である。第一期のメンバーは山下洋輔、森山威男、中村誠一(ts)であった。筆者は両方ともリアルでは聴いていない。 筆者が山下トリオをライブで聴き始めたのは山下洋輔、小山彰太(ds)、坂田明の第三期からである。新宿のピットイン、吉祥寺の次郎吉、市川のりぶるなどで聴いていた。 第一期の中村誠一はフリーではあったが比較的トラディショナルなジャズを志向していた。完全にフリーフォームのジャズになったのは管楽器が中村誠一から坂田明に代わってからだと思う。ヨーロッパ・ツァーにおけるライブ盤「クレイ」の演奏はその代表的なものである。 「クレイ」の3ヶ月後に日本国内でスタジオ録音されたのが本アルバムである。まだヨーロッパ・ツァーの余韻が残っている時期である。山下洋輔32才、森山威男29才、坂田明29才であった。1969年頃結成された山下洋輔トリオはその後断続的に昨年まで続いていたが、トリオとしての全盛期は1980年頃までの約10年間だと思う。1975年に発売された本アルバムはその頂点に近い演奏であろう。 「プロファーゼ」。細胞の有糸分裂前期の意味。坂田明の不安な、おどろおどろしいアルト・サックスのソロから始まる。何かを訴えているようでもあり、独り言を呟いているようでもある。森山威男のドラムスと山下洋輔のピアノが相ずちを打つかのようにバッキングする。 「ダブル・ヘリックス」。DNAの二重螺旋構造の意味。山下洋輔のピアノ・ソロから始まる。何か呟いているようである。森山威男のドラムスが素早く相ずちを打つ。坂田明のおどろおどろしいアルト・サックスが入ってくる。 「キアズマ」。減数分裂の際の染色体の交差の意味。彼らのコンサートでよく演奏される曲である。三人の見せ場が発揮される演奏である。咆哮する坂田、切れ目なく打ちまくる森山、超スピードで弾きまくる山下。山下得意のひじ打ちも出る。狂いまくる坂田のブローが印象的である。 「インターフェーゼ」。細胞分裂を行わない期間の意味。坂田のアルト・サックスから始まる。山下のピアノが続く。静かに対話する二つの楽器たち。そして楽器は三つになる。 「ミトコンドリア」。細胞の糸粒体の意味。山下トリオの真骨頂である、スピード感に満ちた演奏である。三人それぞれが勝手に演奏しているかに見えて、実はお互いの音を注意深く聴いている。緊張感あふれる緊密な演奏はその結果であろう。 ライブ演奏では分かりにくいが、スタジオ録音盤を聴くとそれぞれの楽器が実に良い音でなっているのがわかる。その代わりライブ演奏の興奮は得られないのだが。 1974年9月25&27&28日 クラウンレコード No.1スタジオにて録音。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
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| (2026.3.4) | |||
--- ソニー・ロリンズ --- | |||
![]() サキソフォン・コロッサス ![]() サキソフォン・コロッサス |
モダン・ジャズの名盤中の名盤である。 「セント・トーマス」。軽くて、ウィットに満ちていて、音が良い。ソニー・ロリンズといえばこの演奏である。 「YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS」。あなたは愛がわからない。ロリンズのテナー・サックスが切々とうったえかけるように歌う。トミー・フラナガンのピアノがバックで見事な合いの手を入れている。 「ストロード・ロード」。STRODEは大股で歩く。RODEはRIDE(乗る)の過去形。意味は大股で行く、みたいなことだろうが、これは語呂合わせ、問いか韻をふんだような感じである。STとRODEの言葉遊びのようなものか。 「モリタート」。「三文オペラ」の劇中歌「メッキー・メッサーのモリタート」をアレンジしてジャズ化した。これは後にジャズ・スタンダード「マック・ザ・ナイフ」として世界的に知られるようになる。多くのジャズ・ミュージシャンが演奏しているが、ロリンズの演奏が有名である。ロリンズがテーマを演奏し、続いてトミー・フラナガンのピアノ、マックス・ローチのドラムス、ダグ・ワトキンスのベースがソロをとる。 「ブルー・セブン」。4ビートで内面に切り込んでくるような曲と演奏である。ロリンズの軽くて陰影に富んだテナー・サックスの音が良い。ローチのドラムスが独特のリズムであと押ししている。 「セント・トーマス」「ストロード・ロード」「ブルー・セブン」がソニー・ロリンズ作曲による。 1956年6月22日 録音。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
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| (2026.2.5) | |||
--- ポール・デスモンド --- | |||
【CDに採り上げられた ![]() BLUES IN TIME ![]() FIRST PLACE AGAIN ![]() TIME FURTHER OUT ![]() DESMOND BLUE ![]() COUNTDOWN : ![]() TWO OF A MIND |
「SIX CLASSIC ALBUMS」と題されたシリーズは「ラムゼイ・ルイス」、「ホレス・パーラン」、そして本アルバムの3シリーズ持っている。いずれも1,000円以下の価格で6枚から8枚分のCDが入っているお得なシリーズである。中身はいずれも名盤で、現在ではなかなか入手できないものもある。 今回のデスモンド盤は4枚組のCDに実質6枚分のアルバムが入っている。「BLUES IN TIME」と「TWO OF A MIND」はジェリー・マリガン、「TIME FURTHER OUT」と「COUNTDOWN:TIME IN OUTER SPACE」はデイブ・ブルーベックとの共演盤となっていて、それぞれのミュージシャンとのコラボレーションが楽しめる。 ー ー ー ー ー 【BLUES IN TIME】 1957年、録音。 アルト・サックス、バリトン・サックス、ベース、ドラムスという変則的なカルテットである。アルト・サックスはポール・デスモンド、バリトン・サックスはジェリー・マリガン。二人のサキソフォンによる会話が楽しめる。ジェリー・マリガンはポール・デスモンドに合わせるように、まるで会話をするようにバリトン・サックスを吹いている。ジョー・ベンジャミンのベースとデイヴ・ベイリーのドラムスは会話の邪魔にならないように背景に徹している。 【FIRST PLACE AGAIN】 1960年、録音。 アルト・サックス=ポール・デスモンド、エレクトリック・ギター=ジム・ホール、ベース=パーシー・ヒース、ドラムス=コニー・ケイというカルテット。ポール・デスモンドがアルト・サックスを吹きまくり、他の三人がバッキングをするという形態をとっている。 【TIME FURTHER OUT】 1961年、録音。 副題が「With DAVE BRUBECK」となっている。実質的にはデイブ・ブルーベック・カルテットである。ピアノ=デイブ・ブルーベック、アルト・サックス=ポール・デスモンド、ベース=ユージーン・ライト、ドラムス=ジョー・モレノという布陣である。 【DESMOND BLUE】 1962年、録音。 ポール・デスモンド=アルト・サックスとジム・ホール=アコースティック・ギターを全面に出し、ハープとストリングスがバックを支えている。冒頭で「MY FUNNY VALENTINE」、末尾で「BODY AND SOUL」というスタンダード・ナンバーを演奏している。二人のデュオ演奏は、都会的な孤独感を漂よわせ、マイルスの「死刑台のエレベーター」を彷彿させるような響きを奏でている。デスモンドの特徴的なアルト・サックスの音色を味わうのに最適のアルバムである。 【COUNTDOWN:TIME IN OUTER SPACE】 1962年、録音。 再びデイブ・ブルーベック・カルテットによるアルバムである。デスモンドは常連のピアノ・トリオをバックにアルト・サックスを吹きまくっている。 【TWO OF A MIND】 1962年、録音。 ポール・デスモンド=アルト・サックスとジェリー・マリガン=バリトン・サックスの双頭コンボである。バック・ミュージシャンとして、ジョー・ベンジャミン=ベース、ジョン・ビール=ベース、ウェンダル・マーシャル=ベース、コニー・ケイ=ドラムス、メル・ルイス=ドラムスがいるが、ほとんど目立たない。一瞬これはデュオ・アルバムではないか、と思うほどである。 ー ー ー ー ー 1960年代のモダンジャズ界で、ポール・デスモンドのような音色で、曲想で演奏したミュージシャンはほかにいるのだろうか。ポール・デスモンドというひとは、チャーリー・パーカーの影響の強い、ある意味パーカーに支配されていたアルト・サックスの演奏方法を、根本から組み立てなおした、革命的なミュージシャンであったように思う。 | ||
| (2026.1.2) | |||