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チャールズ・ミンガス / 宮沢 昭 / シェリー・マン / 松本英彦 / ジョン・コルトレーン / ハービー・マン / ホレス・パーラン / マシュー・シップ / ルー・ドナルドソン / カリン・バーマン / コンラッド・ハーウィグ / スウェーデンの街角のジャズ



--- チャールズ・ミンガス ---


直立猿人

直立猿人

直立猿人

直立猿人(裏面)


このミンガスの代表作は苦手だった。「直立猿人(PITHECANTHROPUS ERECTUS)」は4楽章に分かれていて、それぞれ「進化」「優越感」「衰退」「滅亡」という副題がついている。各楽器が原始人のそういう状況を表現している、という説明に従って、この曲はドラマチックに聴かなくてはいけない、という先入観で聞いていた。そういうようにして音楽を聴くと少しも楽しくないのだ。ミンガスはめんどくさい人だ、という位置付けができてしまい、長いことこのレコードはお蔵入りになっていた。

最近ジャズ喫茶メグのマスター寺島靖国氏の著作を読んで、ミンガスにはJ.R.モントローズとジャッキー・マクリーンの咆哮するサキソフォンが必要だった、ということを知った。モントローズもマクリーンも好きな演奏家だったから改めてこのレコードを聴いてみた。

副題のことを考えず、曲として聴くとなかなか面白い。初めて聴いた時はビッグバンドの演奏かと思ったものだが、各楽器を追いかけながら聴くと、下記に記したようにわずか5人編成のバンドであることがわかる。サキソフォンの咆哮に誤魔化されずに聴くと、それぞれの楽器が真っ当なジャズを演奏している。マル・ウォルドロンのピアノ演奏などはモダンジャズそのものである。

「霧深き日(A FOGGY DAYS)」は霧のロンドンを行き来する自動車のクラクションや救急車のサイレン、警官の笛などを思い浮かべずに、ガーシュインの曲をジャズにアレンジしたものとして聞けばやはりこれはモダンジャズの曲である。ミンガスの思わせぶりにひつかかってはいけない。

2面では打って変わって正当的なモダンジャズを展開している。「ジャッキーの肖像(PROFILE OF JACKIE)」はジャッキー・マクリーンのアルトサックスをフィーチュアした演奏でピアノ、ベース、ドラムスはバックでサポートに徹している。

ラヴ・チャント(LOVE CHANT)は14分の大作である。録音されたのは1956年であるが、現代に持ってきたとしても2管+ピアノトリオという編成のモダンなジャズである。

《 演奏 》
チャールズ・ミンガス, b ; ジャッキー・マクリーン, as ; J.R.モントローズ, ts ; マル・ウォルドロン, pf ; ウィリー・ジョーンズ, ds

SIDE ONE
  1. 直立猿人
    (PITHECANTHROPUS ERECTUS)
  2. 霧深き日
    (A FOGGY DAYS)
SIDE TWO
  1. ジャッキーの肖像
    (PROFILE OF JACKIE)
  2. ラヴ・チャント
    (LOVE CHANT)

1956年1月30日、録音。

   (2024.12.4)


--- 宮沢 昭 ---


MUSICAL PLAY IN JAZZ

MUSICAL PLAY IN JAZZ(CD)

MUSICAL PLAY IN JAZZ

同裏面


冨樫雅彦のドラムスの合図で始まる。宮沢昭の野太いテナーサックス、前田憲男のリリカルなピアノ、原田政長の力強いベース、1969年当時の日本の代表的なカルテットである。

1970年に下半身の自由を奪われることになる冨樫雅彦がここでは軽快でリズミカルなドラムスを叩いている。最後のバスドラだ。

このアルバムはミュージカルナンバーで統一されている。全てどこかで聞いたことがある曲だ。コルトレーンの「マイ・フェイバリット・シングズ」、ロリンズの「モリタート」等、一流のジャズミュージシャンはミュージカルナンバーをアレンジして自分の代表作としている。ミュージカルナンバーは耳に心地よく、誰でも知っている。どんな難しいアドリブに入り込んでも戻ってくるところがお馴染みのメロディだと安心して聞いていられる。「キャバレー」や「ハロー・ドーリー」、「トゥナイト」などはその代表的な曲だろう。

「誰かが私を見つめてる」は元のミュージカル「オー・ケイ」は知らなくても、ジャズのスタンダードナンバーとしてジャズ・ファンならば誰でも知っている曲である。

すべての曲で宮沢昭がリーダーとなっており、彼の野太く、メロディアスなテナーサックスの音を堪能することができる。もちろんバックのピアノ・トリオも要所で効果的にからんでくる。「踊り明かそう」では冨樫雅彦のドラム・ソロをたっぷり聴くことができる。

  1. BY BY BIRDIE
  2. MAME
  3. CABARET
  4. HELLO, DOLLY
  5. SOMEONE TO WATCH OVER ME
  6. BIG SPENDER
  7. I COULD HAVE DANCED ALL NIGHT
  8. GOLDEN BOY
  9. TONIGHT
  10. THOROUGHLY MODERN MILLIE

1969年 録音。

   (2024.11.2)


--- シェリー・マン ---


2.3.4.

2.3.4.

2.3.4.(裏面)

2.3.4.(裏面)


アルバム名の「2.3.4.」は「DUO, TRIO, QUARTET」のことである。シェリー・マンはこのアルバムでコールマン・ホーキンスとのデュオ、エディ・コスタ、ジョージ・デュビビエとのトリオ、コールマン・ホーキンス、ジョージ・デュビビエ、ハンク・ジョーンズとのカルテットの演奏をしている。それぞれが各楽器における名人揃いなので、各曲が聴きごたえのある演奏である。

なかでも「A列車で行こう」は聴きごたえがあった。カルテットの演奏である。イントロのハンク・ジョーンズの超高速ピアノが印象的である。通常のペースに戻し、ハンクのソロ演奏が続く。続いてコールマン・ホーキンスのテナーサックスが軽快にアドリブ演奏をする。バッキングをするシェリー・マンのドラムスとジョージ・デュビビエのベースが微妙に心地よい。

「シックス・オブ・アス」はトリオの演奏である。エディ・コスタのヴァイブラフォンがメロディを弾き、ベース、ドラムスがそれを追う。シェリー・マンのドラムスが自由自在にアドリブを弾く。彼独特の軽く弾けるようなドラムスの音が快感である。

「スローリー」。カルテットの演奏である。コールマン・ホーキンスの図太いテナーサックスの音が響き渡る。包み込まれるような包容力を感じる。後に続くハンク・ジョーンズのピアノがザ・モダン・ジャズといったソロ演奏をする。これは最高だ。

「リーン・オン・ミー」。トリオの演奏である。エディ・コスタがピアノを弾きまくる。マンとデュビビエはバッキングに徹し、典型的なピアノ・トリオの演奏を繰り広げている。

「チェロキー」。カルテットの演奏である。マンのドラム・ソロから始まる。ホーキンスのゆったりしたテナーサックスが続く。モダン・ジャズの名曲である。

「ミー・アンド・サム・ドラムス」。マンとホーキンスのデュオの演奏である。他のメンバーが引き上げた後、深夜ふたりだけでアドリブの演奏をしたのがこの曲である。ホーキンスのピアノ・ソロから始まる。独特のメロディである。マンがそれに続く。ホーキンスがピアノからテナーサックスに持ち替えてそれに続く。ふたりだけの会話をしているようだ。実際にしていたのだろう。

Side One
  1. TAKE THE "A" TRAIN
  2. THE SICKS OF US
  3. SLOWLY
Side Two
  1. LEAN ON ME
  2. CHEROKEE
  3. ME AND SOME DRUMS

1962年2月5日、8日 ニューヨークにて録音。

   (2024.10.2)


--- 松本英彦 ---


Sleepy

Sleepy

Sleepy

同裏面


松本英彦(ts, fl)、市川秀男(pf)、井野信義(b)、日野元彦(ds)という当時国内最高のメンバーによる演奏である。スリー・ブラインド・マイス・レコードによるスタジオ録音盤ということで、これまた当時国内最高の音質で録音されたレコードである。

「デュークス・デイズ」。市川秀男のリリカルなピアノ・ソロに続いて、松本英彦のテナーサックスのバラード演奏が始まる。テナーサックスの音が耳に心地よい。バックのベースとドラムスが控えめにテナーサックスを支える。

「あなたは恋を知らない」。スタンダード・ナンバーを松本英彦がフルートで演奏している。バックのピアノ・トリオが自己主張することなく、フルートを支えている。

「チェイシン・ザ・ブルース」。カルテットの演奏も良いが、ピアノ・トリオ単独のパートも素晴らしい。当時の日本のピアノ・トリオの最高のレベルでの演奏ではないだろうか。1970年代はこのような優れた日本のジャズ・グループによるコンサート・ホールでの演奏がたくさんあった。今はコンサート・ホールでの演奏は皆無に等しい。残念なことである。

「ライトダウン・ステップ」。アップ・テンポの曲。アドリブパートにおける各楽器のやり取りが迫力がある。

「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」。有名なスタンダード曲。スロー・バラード演奏の松本のテナーが素晴らしい。市川のピアノのからみが絶妙である。

「タイフーン」。松本のオリジナル曲。アップ・テンポで軽快な演奏である。

Side A
  1. デュークス・デイズ
  2. あなたは恋を知らない
  3. チェイシン・ザ・ブルース
Side B
  1. ライトダウン・ステップ
  2. マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ
  3. タイフーン

1976年9月13日、24日 東京渋谷エピキュラス・スタジオにて録音。

   (2024.9.2)


--- ジョン・コルトレーン ---


JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN

JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN

JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN

JOHN COLTRANE AND JOHNNY HARTMAN(裏面)


コルトレーンはシーツ・オブ・サウンズのように呪術的な演奏をする時と本アルバムのようにバラードをしっとり演奏する時のふたつの顔を持っている。荒ぶる心を解放するために激しい演奏をした後はすっかり優しい心となって心に染み入るような優しい演奏をする。そのように解釈できるのではないか。

本アルバムの曲は全てアメリカのスタンダードナンバーである。黒人男性歌手のジョニー・ハートマンがヴォーカルを担当し、コルトレーンはその伴奏としてではなく、デュエットのようにしてテナーサックスを演奏している。はじめの数小節をハートマンが歌い、次の数小節をコルトレーンが吹く、といったように。ハートマンの声はソフトで滑らかで伸びがあり、聴いていてうっとりする。それに続くコルトレーンの音もまるでテナーサックスで歌っているように聴こえる。

きわめつけは1面3曲目の「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」である。初めにコルトレーンが演奏し、次にハートマンが歌うが、どちらもこの曲の最高の演奏をしている。

2面1曲目の「ラッシュ・ライフ」も印象的な演奏である。ビリー・ストレイホーン作曲のエキゾティックなメロディを、初めにハートマンが歌い、次にコルトレーンのテナーサックスが歌い、マッコイ・タイナーのピアノがからんでくる。エルヴィン・ジョーンズのブラシによる伴奏も印象に残る。

Side 1
  1. THEY SAY IT'S WONDERFUL
  2. DEDICATED TO YOU
  3. MY ONE AND ONLY LOVE
Side 2
  1. LUSH LIFE
  2. YOU ARE TOO BEAUTIFUL
  3. AUTUMN SERENADE

1963年3月7日、録音。

   (2024.8.4)


--- ハービー・マン ---


HERBIE MANN

HERBIE MANN

ライナー・ノーツ

ライナー・ノーツ



ジャズ・フルート奏者 ハービー・マンの10枚のアルバムから抜粋したオムニバス盤である。選ばれた演奏はいずれも名曲、名演奏ばかりである。

「カミン・ホーム・ベイビー」から「トゥディ」まではモダン・ジャズの名曲である。いずれの曲も独特の編曲で構成されている。
「カミン・ホーム・ベイビー」はベーシスト ベン・タッカー作曲によるものだが、ベース・ラインを強調した編曲になっている。「ウォーキン」はマイルス・ディヴィスの演奏が有名だが、まるで違った編曲で構成されている。ビッグバンドをバックにハービー・マンがフルートを吹きまくっている。

「メディティション」「イパネマの娘」「デサフィナード」の3曲はいずれもアントニオ・カルロス・ジョビン作曲によるものでボサノバの名曲である。聴けば誰でも知っている曲である。
ボサノバといえばスタン・ゲッツのテナーサックスによる演奏が定番だが、フルートによる演奏もなかなかのものである。「イパネマの娘」のアドリブ・プレイを聴いていると体が浮き上がるようである。

「メンフィス・アンダーグランド」と「霧のマウンテン」はフォークロック風の演奏。軽やかな曲である。ロイ・エアーズのヴァイブラフォンが効いている。「ウインドウズ・オープンド」はアップテンポでモダンな演奏スタイル。ロイ・エアーズのオリジナル曲である。ハービー・マンのフルートによるアドリブ演奏が快調である。

「マンディ・マンディ」はママス・アンド・パパスの曲。原曲はポピュラー・ソングである。「サマータイム」と「アイ・ガット・ア・ウーマン」はスタンダードナンバー。「ロンリー・アヴェニュー」はバック・コーラス入りのポップな曲。ハービー・マンはどんな曲でも軽やかに吹きこなす。

SIDE-1
  1. COMIN' HOME BABY
  2. WALKIN'
  3. ST. THOMAS
  4. RIGHT NOW
SIDE-2
  1. THE NIGHT IN TUNISIA
  2. TODAY
  3. MEDITATION
  4. THE GIRL FROM IPANEMA
  5. DESAFINADE
SIDE-3
  1. MEMPHIS UNDERGROUND
  2. THERE IS A MOUNTAIN
  3. WINDOWS OPENED

SIDE-4
  1. MONDAY MONDAY
  2. SUMMERTIME
  3. I GOT A WOMAN
  4. LONELY AVENUE

   (2024.7.1)


--- ホレス・パーラン ---


【CDに採り上げられた
       アルバム】

MOVIN' & GROOVIN'

MOVIN' & GROOVIN'

US THREE

US THREE

SPEAKIN' MY PIECE

SPEAKIN' MY PIECE

HEADIN' SOUTH

HEADIN' SOUTH

ON THE SPUR OF THE MOMENT

ON THE SPUR OF
THE MOMENT

UP & DOWN

UP & DOWN

DOIN' ALRIGHT

DOIN' ALRIGHT


HORACE PARLAN SEVEN CLASSIC ALBUMS

HORACE PARLAN
SEVEN CLASSIC ALBUMS(CD)

HORACE PARLAN

HORACE PARLAN

◇   ◆   ◇   ◆   ◇

ホレス・パーランは1931年ピッツバーグ出身のジャズ・ピアニスト。ハードバップやポスト・バップの分野で活躍した。彼は少年時代にポリオを患い、そのために部分的に右手が変形し、指がほとんど動かない。その障碍の代償として独自の演奏技巧を開発して演奏した。YouTubeの動画で見ると右手の親指と中指を交互にピアノに叩きつけているようだ。

4枚組のCDに7枚のアルバムの曲が入っている。1枚目のCDに「MOVIN' & GROOVIN'」の全曲と「US THREE」の5曲目までが収録され、2枚目のCDに「US THREE」の残りの曲と「SPEAKIN' MY PIECE」の全曲および「HEADIN' SOUTH」の5曲目までが収録されている。かなり変則的な収録方法だが、CD1枚より安い価格で7枚のアルバムの演奏を聴くことができる。

CDの値段はバカにならないのでこれは生活防衛のためにありがたい。このシリーズのCDを発売しているREAL GONE MUSICという会社の概要を見るとカリフォルニア州のオレンジ郡にある会社である。1993年にふたりのオハイオ・ボーイズが始めたとしてある。ジャズばかりでなく、ロックや映画音楽なども出している。

ー  ー  ー  ー  ー

「MOVIN' & GROOVIN'」。 ピアノ・トリオによる演奏。ただし、ベースがオリジナル・メンバーのジョージ・タッカーからサム・ジョーンズに代わっている。ホレス・パーランの特徴、右手を打楽器のようにピアノに打ち付ける、がよく出ている。どの曲もベース・ラインが力強く鳴っている。

「US THREE」。本アルバムはオリジナル・メンバーのホレス・パーラン(pf)、ジョージ・タッカー(b)、アル・ハーウッド(ds)による演奏である。ジョー・タッカーの力強いベースラインとモールス信号のようなホレス・パーランのピアノの音が印象的である。なかでも聞き慣れたマイルスの「WALKIN'」における斬新なアレンジと歯切れの良いピアノ・プレイはパーランならではのものである。

「SPEAKIN' MY PIECE」。オリジナル・メンバーにスタンレー・タレンタイン(ts)と彼の兄・トミー・タレンタイン(tp)が加わる。「WADIN'」ではパーランのピアノ・ソロの後にスタンレー・タレンタインの雰囲気のあるテナー・サックス・ソロ。次に出たトミー・タレンタインのトランペット・ソロが素晴らしい。溌剌とした生きのいいトランペットの音に驚いた。弟に比べて兄はイマイチと言われているトミーだが、筆者の耳には素晴らしいプレイヤーに聴こえる。流麗なタッチとは言えないが、スイングしまくるパーランのピアノも良い。

「HEADIN' SOUTH」。収録の「JIM LOVES SUE」が良い。フォービートで軽いノリの曲。出始めのところ「I'm Old Fashioned」かと思ったがそのあとが違った。地味だがレイ・バレットのコンガが微妙に効いている。

「ON THE SPUR OF THE MOMENT」。「SPEAKIN' MY PIECE」の翌年同じメンバーで演奏されたアルバム。ノリに乗ったタレンタイン兄弟の演奏が良い。

「UP & DOWN」。オリジナルのトリオにブッカー・アービン(ts)、グラント・グリーン(g)が加わっている。タイトル曲の「UP & DOWN」ではグラント・グリーンのアコースティック・ギターが軽やかにテーマを弾き、ブッカー・アービンのテナー・サックスがそれを追いかける。アップテンポのノリの良い曲である。「THE OTHER PART OF TOWN」におけるグラント・グリーンのエレキ・ギターの長いソロ演奏も良い。

「DOIN' ALRIGHT」。オリジナルのトリオにデクスター・ゴードン(ts)、フレディ・ハバード(tp)が加わっている。「YOU'VE DHANGED」はデクスター・ゴードンが得意とするゆったりしたブルースである。それにフレディ・ハバードのトランペットが鋭く絡んでいく。「FOR REGULARS ONLY」は逆にアップテンポの曲。きらびやかなトランペットの音が耳に鋭く響く。

ー  ー  ー  ー  ー

1960年代のモダンジャズの一番輝いていた時期に録音された演奏である。ホレス・パーラン、スタンレー・タレンタイン、デクスター・ゴードンというその時代を代表するミュージシャンたちのエッセンスが詰まったこのCDはどこから聴いてもモダンジャズの気軽で温かい雰囲気が伝わってくる。

ーーー 曲名とメンバー ーーー

曲名

曲名

メンバー

メンバー

   (2024.6.7)


--- マシュー・シップ ---


nu bop

nu bop(CD)

nu bop

同裏面


ニューヨークのThirsty Ear Recording Inc.という会社から発売されたCDである。あとは各曲の表題しか書かれていない。日本のCDに比べて極めてデータが少ない。だが、中身は興味深い演奏が記録されている。じっくり聴いていると時間の経つのを忘れてしまうほどである。

「Space Shipp」。マシュー・シップ(Matthew Shipp)の名前をもじった曲であろう。題して「宇宙船」。マシュー・シップ(pf)が印象的なメロディを弾き、その後にギレルモ・E・ブラウンの強力なドラムスが続く。シンセサイザーとベースが盛り上げ、全体としてワクワクするような演奏になる。本アルバムにはもう一曲「Rocket Shipp」というのがある。

「Nu Bop」。表題は従来の「be-bop」に対して、新しいという意味を追加して「new bop」としたものか。ウィリアム・パーカーのベース・ソロから始まり、ドラムスが続く。ダニエル・カーターのアルトサックスが絡んできて、不思議だがノリの良いリズムの演奏を繰り広げる。

「ZX-1」。マシュー・シップのピアノ・ソロ。内省的な曲。ピアノの音がリアルに録音されている。

「D's Choice」。日本の民謡のようなメロデイをマシュー・シップ(pf)が演奏し、それにFLAMのシンセサイザーが絡んでいく。最後もピアノ独奏で締める。日本人の心をくすぐるような曲である。

「X-Ray」。ダニエル・カーターのフルート・ソロで始まる。ウィリアム・パーカーのベースが絡んで不思議なメロディを奏でる。

「Rocket Shipp」。ベースとドラムスのリズムラインにマシュー・シップのピアノが絡み、リズミックな演奏を繰り広げる。繰り返しのリズムが脳に染みる感じで心地良い。

「Select Mode 1」。マシュー・シップのリズミカルなフリー・フォームのピアノ・ソロから始まる。ドラムスとベースが絡んでフリー・フォームのジャズが展開する。

「Nu Abstract」。シンセサイザーとピアノが不思議なメロディを奏でる。表題は「新しい抽象」か。

「Select Mode 2」。「Select Mode 1」同様ピアノ、ベース、ドラムスによるフリー・フォーム・ジャズ。ギレルモ・E・ブラウンのドラムスが効いている。

  1. Space Shipp
  2. Nu Bop
  3. ZX-1
  4. D's Choice
  5. X-Ray
  6. Rocket Shipp
  7. Select Mode 1
  8. Nu Abstract
  9. Select Mode 2

録音 Sorcerer Sound, New York。

   (2024.5.2)


--- ルー・ドナルドソン ---


LUSH LIFE

LUSH LIFE(CD)

LUSH LIFE

同裏面


LUSH LIFE(オリジナル・カバー)

磯原で購入した中古CDの中の1枚である。裏面に「Printed in USA」と書いてあるからアメリカで作られたCDだろう。ただし、オリジナルのカバーは使われていないので、別の会社から再発売のものだろう。オリジナルはブルーノートから発売された。本来のカバー・デザインを右に載せておく。

アメリカで作られたオリジナル以外のCDがどういう経路で当時北茨城市に一軒しかなかった中古CD屋にたどり着いたのか、興味深い。

ジャズのスタンダード・ナンバーをビッグ・バンドをバックに従えたルー・ドナルドソンがアルト・サキソフォンをまるで歌い上げるように堂々と吹きまくっている。

本アルバムはバックのメンバーがすごい。トランペットのフレディ・ハバード、テナー・サックスのウェイン・ショーター、ピアノのマッコイ・タイナー、ベースのロン・カーターなどなど。それぞれがリーダーとして何枚もアムバムを出している名人たちがビッグ・バンドの一員として参加している。そして出過ぎないように少しずつソロをとっている。

   ー ー ー ー ー

「Sweet Slumber」。アルト・サックスのルー・ドナルドソンがテーマを吹いた後、ウェイン・ショーターのテナー・サックス、マッコイ・タイナーのピアノが続く。

「You've Changed」。マッコイ・タイナーのピアノが印象的。

「The Good Life」。「麗しき人生」は人生を感じさせるスロー・バラード。アルト・サックスまたはテナー・サックスで朗々と吹かれるとジーンとしてくる。ルー・ドナルドソンは最初から最後まで堂々と吹いている。

「Stardust」。ホーギー・カーマイケル作曲の名曲である。前曲と本曲はルー・ドナルドソンの聴かせどころとなっている。

「What Will I Tell My Heart」。「偽れぬ心」はエラ・フィッツジェラルドやトニー・ベネットが歌っている。いかにも西洋小唄という感じの曲。 ルー・ドナルドソンがまるで歌うように気持ちよさそうにアルト・サックスを吹いている。

「It Might As Well Be Spring」。「春の如く」はいろいろな歌手がカバーしている。軽やかで良い曲である。

「Sweet And Lovely」。アルト・サックスがテーマを吹いた後に、フレディ・ハバードが見事なトランペット・ソロを決めている。

   ー ー ー ー ー

メンバー : Freddie Hubbard (tp), Garnett Brown (tb), Lou Donaldson (as), Jerry Dodgion (as, fl), Wayne Shorter (ts), Pepper Adams (bs), McCoy Tyner (p), Ron Carter (b), Al Harewood (ds), Duke Pearson (arr)。

1967年1月20日 Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, で録音。

   ー ー ー ー ー

何年も前に購入したCDだが、あらためて聴くとなかなか良い。こんなに良いアルバムだったかと思った。風呂上がりに部屋に流しておくと、ゆったりした気分になる。何回も聴いているとなんて良い選曲なんだと思えてくる。

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

  1. Sweet Slumber
  2. You've Changed
  3. The Good Life
  4. Stardust
  5. What Will I Tell My Heart
  6. It Might As Well Be Spring
  7. Sweet And Lovely
   (2024.4.1)


--- カリン・バーマン ---


Growing Green

Growing Green(CD)

Growing Green裏面

Growing Green裏面


Growing Green(Karin & Peter Burman)

Karin & Peter Burman

Growing Greenメンバー

メンバー


磯原で購入した中古CDの中の1枚である。本アルバムはスウェーデンで制作された。

曲名はすべて活字体で書いたものや、頭文字だけ活字体のもの、ウムラウトがついたものなどがあり、そのまま下に載せた。英語と思われる単語とそうでない単語が混在している。

「NATTVIOL」。ピアノ、ドラムス、ベースという典型的なピアノ・トリオ+ソプラノ・サックスというカルテットをバックにソプラノのカリン・バーマンが歌う。独特な雰囲気の曲。スペルからするとスウェーデン語であろう。意味はわからない。

「Nothing Serious」。軽快なアップテンポの曲。カリン・バーマンのスキャットも軽やかだ。

「NOSTALGI」。題名はスペルからすると「ノスタルジー」か。スローテンポの内省的な曲。ピアノはキーボードに変わる。

「HOST」。題名の「O」の頭にウムラウトがつく。「ホスト」じゃないんだろうな。スロー・バラード。歌っている言葉はまるでわからないのでスウェーデン語だろう。ベースが効果的に響いている。

「Time」。ベース・ソロから始まる。題名は英語だがスウェーデン語で歌っている。力強く歌うカリンにソプラノ・サックスが寄り添うように伴奏する。

「MAGIC GEM」。この曲と次の曲だけ英語で歌っている。ドラムスとソプラノ・サックスのバックの演奏が良い。

「My ONE AND ONLY LOVE」。ジャズのスタンダード・ナンバー「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」。ジョン・コルトレーン初めいろいろな人が演奏している。カリンはスローにシャウトするように歌う。バックのキーボードが神秘的に響く。

「SIMONS SAGA」。「サイモンの伝説」か。英語でないから違っているかもしれない。スロー・ナンバー。キーボード、ソプラノ・サックス、ドラムスが神秘的なメロディを奏でる。

メンバーはPETER BURMAN : ピアノ、キーボード、KARIN BURMAN : ヴォーカル、THOMAS GUSTAFSON : ソプラノ・サキソフォン、CHRISTIAN JORMIN : ドラムス、ANDERS JORMIN : ベースという面々である。

1996年夏に録音された。

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

  1. NATTVIOL
  2. Nothing Serious
  3. NOSTALGI
  4. HOST
  5. Time
  6. MAGIC GEM
  7. My ONE AND ONLY LOVE
  8. SIMONS SAGA
   (2024.3.1)


--- コンラッド・ハーウィグ ---


AO VIVO DE JAZZ

AO VIVO DE JAZZ (CD)

AO VIVO DE JAZZ

同裏面


磯原で購入した中古CDの中の1枚である。本アルバムはポルトガルで制作されたため、ポルトガル語表記である。

リーダーはコンラッド・ハーウィグ、トロンボーン奏者である。アルバムの副題はCONRAD HERWIGプラスTRIO DE BERNARDO SASSETTIとなっている。メンバーはコンラッド・ハーウィグの他にBERNARDO SASSETTIのピアノ、BERNARDO MOREIRAのベース、ANDRE' SOUSA MACHADOのドラムスという構成になっている。Fetival de Jazz de Guimaraesでの実況録音盤である。曲の終わりごとに観客の拍手の音が聴こえる。

1.から5.まではハーウィグによる曲で占められている。6.の「MUSICA CALLADA No1」はFrederico Monpoの曲で、7.の「I Mean You」はセロニアス・モンクのお馴染みの曲である。

「24 FOR FRANK」はハーウィグのトロンボーン・ソロから始まる。続いてベルナルド・サセッティのピアノ、アンドレ・ソーサ・マチャドのドラムスとのやり取りから、トロンボーンに受け渡した後、全員で終わる。軽快な曲。

「DIVA'S DILEMA」もまたハーウィグのトロンボーン・ソロから始まる。続いてベルナルド・サセッティのピアノ・ソロに渡す。ベルナルド・モレイラのベースがそれを下から支え、ドラムスもバックアップする。この辺は息のあったピアノ・トリオの演奏となる。しばらくするとトロンボーンが加わり、激しいアドリブを繰り広げる。13分近い長い曲だけに各パートの特徴がよく出た演奏である。

「REFRACTION」はハーウィグのつぶやくような、ささやくようなトロンボーン・ソロから始まる。長いトロンボーン・ソロにつずいてドラムスが絡んでくる。対話するような、口論するようなやり取りの後、ピアノが加わる。この辺の各楽器の絡み合いが面白い。ピアノの音が俄然良い。ヨーロッパの乾いた空気が関係しているのか。

「AMULET」と「RED ON BLACK」もまたハーウィグのトロンボーン・ソロから始まる。そしてそのまま彼のトロンボーンを中心にして演奏は進んでいく。ピアノ・トリオは目立つことなくバックで音楽を支えるのに徹している。彼のトロンボーンの音はトランペットの冷たさとかサキソフォンのねばりつくような熱情とは違い、カラッとした暖かさを持っている。常に適度な距離感で接してくれる友人のような感じである。

「MUSICA CALLADA No1」はフェデリコ・モンポウの「ひそやかな音楽」という曲の第1集である。モンポウはスペインのカタルーニャ地方に生まれた作曲家である。ハーウィグのトロンボーンがメロディを演奏し、ピアノ・トリオがバックを固めている。カタルーニャ地方の民謡のような哀愁のあるメロディをハーウィグのトロンボーンは時にはせつせつと、時には軽快に響かせている。

「I MEAN YOU」。ハーウィグのトロンボーンが軽やかに、そしてユーモラスにテーマを吹き、ベースが後に続く。力強いベース・ソロにトロンボーンが絡んできて、長いアドリブ合戦が始まる。最後にテーマに戻った後、全員で終わる。全員の紹介のMCに続いて長い拍手。

1993年11月 Fetival de Jazz de Guimaraesでの実況録音。

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

  1. 24 FOR FRANK
  2. DIVA'S DILEMA
  3. REFRACTION
  4. AMULET
  5. RED ON BLACK
  6. MUSICA CALLADA No1
  7. I MEAN YOU
   (2024.2.2)


--- スウェーデンの街角のジャズ ---


JAZZ on the corner

JAZZ on the corner (CD)

JAZZ on the corner

JAZZ on the corner(裏面)


以前北茨城市の磯原に2、3ヶ月滞在した。街の中心部近くにCDレコード屋があり、中古のCDを安価で(50〜150円)で売っていた。レンタルCD屋から流れて来たものだろう。

滞在中ときどきその店を訪れ、安価のCDを物色した。新品は2,500円から3,000円はするのでとても手が出ない。安いから手当たり次第に買った。

あとでゆっくり聴いてみるとその中に思わぬ掘り出し物があった。ノルウェイの女性ヴォーカリスト Sisselの現地制作盤のアルバム、スウェーデンの女性ヴォーカリスト Karin Burmanとその夫 Peter Burmanカルテットの現地制作盤のアルバム、アメリカのピアニスト Matthew Shippカルテットのニューヨーク盤のアルバムなどに混じって本アルバムがあった。

本アルバムはスウェーデン盤を日本で再編集したものらしい。スウェーデンのミュージシャンの演奏を集めたオムニバス盤である。

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リサ・エクダールは日本で一番知られたスウェーデンのジャズ・ヴォーカリストだろう。本アルバムには彼女の演奏が2曲収められている。「The boy next door」と「When did you leave heaven」である。 彼女独特のハイトーンの歌声が楽しめる。

スウィート・ジャズ・トリオも日本では数多くのアルバムが発売されている。コルネット、ギターそしてベースという独特の編成で室内学的なジャズを目指している。本アルバムでは「That old feeling」と「Nearness of you」の2曲が収められている。内「That old feeling」はモニカ・ボーフォスとの共演である。この共演の相乗効果によってすごくスウィンギーな演奏になっている。

「Don't it make my brown eyes blue」は日本語の題名は「瞳のささやき」。クリスタル・ゲイルのヒットナンバーである。クラエス・ヤンソンは男性ヴォーカリストである。軽くてノリの良い歌声である。

「Corcovade」と「Nature boy」はボサノヴァとジャズのスタンダード・ナンバーである。演奏はトロンボーン奏者のニルス・ラングレン。「Nature boy」ではトロンボーンに加えてヴォーカルもやっている。

マリー・バーグマンとボブ・マニングはそれぞれ女性と男性のヴォーカリスト。それぞれ味のある演奏。「Born to be blue」のバックのテナーサックスはスウィングしまくっている。

バリトンサックス奏者グンナール・ベリィステーンの「Somewhere」もいい。バリトンサックスというと野太い音を連想するが、本曲で聴くその音色はどこまでもソフトだ。聴くものを包み込むような包容力を感じる。

最後の曲「Sa skimrande var aldrig havet 」は英語では「The Sea Was Never So Shimmering」というらしいが、この曲を聴くと何か懐かしいものを感じる。さらにベーント・ローゼングレンのテナーサックスが伸びやかに鳴り響き、心がゆったりとほぐれていく。この曲はスウェーデンの国民的な作曲家Evert Taube (エバート・トゥーべ)が作曲した。日本語訳ではなんという名前なのか検索したがどこにも出ていなかった。

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ジャズの本場はアメリカというが、今では本場とか本場でないとかは関係ない。ヨーロッパでも日本でもジャズは存在する。音楽に国境はなく、良い演奏と悪い演奏しかないのではないか。

本アルバムはオムニバス盤ということで様々な演奏家の演奏が収められていて、1曲ごとに聴きどころが違っていて面白かった。


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  1. The boy next door / Lisa Ekdahl & Peter Nordahr Trio
  2. That old feeling / Monica Borrfors & Sweet Jazz Trio
  3. Don't it make my brown eyes blue / Claes Jansson
  4. Corcovade / Niles Landgren
  5. You don't know what love is / Marie Bergman
  6. Born to be blue / Bobb Manning
  7. Nearness of you / Sweet Jazz Trio
  8. When did you leave heaven / Lisa Ekdahl & Peter Nordahr Trio
  9. Whitchcraft / Rune Carlson
  10. Somewhere / Gunnar Bergsten
  11. Nature boy / Niles Landgren
  12. Sa skimrande var aldrig havet / Bernt Rosengren Octet
   (2024.1.2)

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