講談と浪曲で聴く「天保水滸伝」  一覧へ


チラシ

講談、浪曲で有名な天保水滸伝を現地で聴こうという贅沢な会である。少し早めに到着し、街を探索した。特に観るべきものもなく閑散とした街と稲刈りが終わったばかりの田んぼがあるばかりだった。旅の巻を参照してください。

歩き回った後公民館へ行ったら席は三分の一くらい埋まっていた。いつもの舞台とは違い独特の雰囲気なのはほとんど街の人だからだろう。会場全体がわーんと聞こえるほどおしゃべりしている。最終的に満席の350人入ったうち東京方面から来た人は1割くらいであったろう。10人くらいが電車で帰り、10人くらいが旅館に泊まったようだ。

まずは神田松之丞の「鹿島の棒祭り」からスタートだ。松之丞のジョークがまるで通じない。この人は何をやるんだろうという感じで観察されている。ヤケ気味に話を語り始めた。語り始めたらそれなりに面白いので笑いも来ていたし、拍手もきていた。それでも松之丞は納得できないという感じで下がっていった。

今日の観客は義理で集められた人達かなと思った。間違いだった。玉川太福が登場した途端数人の掛け声とともに大拍手だ。まだ始まっていないのに大盛り上がりだ。気を良くした太福は朗々と「笹川の花会」を唸った。曲師玉川みね子の三味線も気持ちが良いほど決まる。うなり声の合間合間に拍手と掛け声が入る。ベテランの観客だったのだ。

休憩後は東庄町の観光大使を務める玉川奈々福。スカイブルーの着物姿で華やかに登場する。女性の浪曲師は登場するだけで華やかだ。掛け声と拍手は太福に負けず劣らず鳴り響く。今日の演目は自作の「亡霊剣法」だ。自作とはいっても天保水滸伝の中の話だ。どうやら天保水滸伝というのは物語の宝庫のようだ。
女性の唸りはどうかな、と思っていたのだが実に良かった。朗々としていて無理なく声を出している。もちろん修練の賜物だろう。

トリは神田愛山の「三浦屋孫次郎の義侠」。ここで笹川繁蔵は殺されてしまう。愛山師匠は淡々と読んでいく。ハリセンも初めにバシッと叩いたほかはほとんど使わない。松之丞はリズムを刻むように小刻みに叩きっぱなしだ。人によってずいぶん違うようだ。さっきまで掛け声やら拍手やらで賑やかだった会場はしんとして愛山師匠の話に聴き入っている。東庄町の人々は講談と浪曲を聴き慣れているようだ。さすがは天保水滸伝の故郷である。観客の中には笹川重蔵の子孫の方々もいたらしい。

笹川駅 メインストリート

熱気に満ちた会は終わった。これから東京まで帰らなくてはならない。電車は1時間に1本である。次の電車に乗り遅れると2時間後にならないと来ない。暗くなった笹川駅のフォームには数人の浪曲または講談好きの人が立たずんでいる。


(演目)    
   ・鹿島の棒祭り-----神田松之丞
   ・笹川の花会-----玉川太福
   ・休憩 
   ・亡霊剣法-----玉川奈々福
   ・三浦屋孫次郎の義侠-----神田愛山

(時・場所)                    
   ・2016年10月22日(土)
   ・14:00〜16:40
   ・東庄町公民館・大ホール

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