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筆者は年をとって人間が丸くなったとか、昔はトゲトゲしていたとかひとに言われることがある。年月や経験によって人間が変わることがあるのだろうか。
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会社に勤めていた頃、仲間の兄貴分的な面倒見の良い先輩がいた。彼が〇〇営業所の所長として赴任することになった。すでにある営業所ではなく、新規に立ち上げる営業所であった。
所員が未定ならば是非自分を選んでください、とお願いした。君はまだ若いから、もう少し本社で勉強してから来いよと、体よく断られた。何人かの社員が選ばれ、営業所は動き始めた。選ばれた社員の中には筆者よりも社歴の短いものもいた。筆者は向かないと思われたんだろう。
しばらくすると、〇〇営業所に関して、ある噂が聞こえてくるようになった。所長の部下に対するパワハラだ。夜通し、お説教されるという。あの面倒見の良い先輩が・・・、と信じられなかった。
〇〇営業所へ出張する機会があった。退勤時、若い社員が所長からお説教されていた。朝、出勤するとそのままの状態でお説教されている。噂は本当だったんだ。
その後、その所長と食事をしたり、お酒を飲んだりする機会があったが、筆者に対しては昔通りの面倒見の良い先輩であった。
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年月や経験によって人の性格が変わるのではなく、もともと持っていた性格がその時の状態によって現れる、というのが実態なのではなかろうか。
学校を出ると、会社に入り、結婚する。さらに会社で昇進したり、子供が生まれたりして人生に変化が生まれる。子供時代や学生時代には親が請け負ってくれていたいろいろなことを、ある年齢から上になると自分がやらなければならなくなる。
どうすればいいんだろう。自分がやるとなると、何事もなかなか大変なものだ。でもやらなければならない。自分の中にあるものを総動員してかかる。
仲間同士で交流するとき、上司と部下として対応するとき、それぞれの場合で自分の中にあるものを使って対処しなければならない。必死で考えて、出した結論がパワハラということもあるだろう。たとえパワハラであっても、その人にとってはひとつの結論なのだ。「無い袖は振れない」ということは、持ち合わせの無いものはどうすることもできないという意味だが、お金だけでなく色々なものを指している。
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年をとって人間が丸くなったのではなく、その状態では角を出すこともないだろう、と思っているだけなのかもしれない。場合によっては、昔のようにトゲトゲした対応を取ることもあるだろう。年月や経験によって人間が変わることはなく、TPO (Time、Place、Occasion)に応じて自分の中にあるものを出したり入れたりするだけなのである。
グレゴール・ザムザは虫に変身したが、彼はもともと虫の要素を持っていたのだ。
(2020.11.16)
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