2017年  一覧へ
脳力 / テーズの小技 / 子供について / 上昇志向


---脳力---

木は先端から成長する。 成長点は先端にしかない。 木の先端は葉っぱである。 葉っぱの先が世に出て太陽の光や根っこから吸い上げた栄養分や水分を原料にして大きな葉っぱになる。 葉っぱは作り上げた新しい組織の一部を根っこに戻し、根っこはそれをつかって成長する。
そして木はどんどん大きくなっていく。

人間も同じである。 0才から20才まで親からもらった栄養分をつかって大きくなる。 体は20才で止まっても頭の中はまだまだ成長する。 頭の中の成長点は前頭葉である。おでこの裏側にあるやつだ。
頭も体と同じように成長する。体の成長は20才で止まるが頭の中にある脳はまだまだ成長する。 死ぬ時にどんなに頭を使った人でも全能力の5%も使えばいい方だという。 人生80年では脳は使い切れないほど容量が大きい。 人間の文明の可能性が無限である所以である。

残念なことがある。 80年使ってもまだまだ能力がある脳を20数年しか使わないひとがいる。 毎日のルーティーンの仕事と余暇のテレビ、酒、タバコ。 体も脳も使わなければ衰える。体が衰えると杖をついたり車椅子に乗らなければ移動できなくなる。脳が衰えると昔のことばかり繰り返し話すようになる。
子供の頃近所にいた老人をいつのまにか自分がやっているのでは…。

運動しないと体の可動域はどんどん小さくなる。しまいには動かなくなってしまう。 脳を使わないと先端部の前頭葉が衰えてくる。老人が新しいことをすぐ忘れてしまい、昔のことをよく覚えているのは前頭葉を活発に使っていた若い頃覚えたことだからだ。 老人が簡単に詐欺に引っかかってしまうのも脳力が衰えたからである。

体も脳も我々の意識がこの世で活動するために必要なものだ。意識が死ぬ直前まで、活発に動く体となんでも理解できる脳を持っていたい。 そのためには体と脳の日常的なトレーニングが必要である。

(2017.5.5)


---テーズの小技---

ルー・テーズというレスラーがいた。936連勝し、世界最強といわれた。

決め技は代名詞ともなったバックドロップをはじめ、エアプレン・スピン、フライング・ボディシザーズ・ドロップと見栄えのする技が多かった。

最近ユーチューブでテーズの試合を見て感心したことがある。
ロープ際での行動である。きれいに別れるときもあるがそうでないときもある。

わかれぎわすばやく肘で相手の腹を突いたりする。顔に肘を当てそれをもう片方の手でパチンと叩く。平手で顔を叩く。体重を相手にかけてのしかかるようにする。相手は油断ができない。それが決定的なダメージを与えるわけではない。ただ気勢がそがれる。

ロープ際で別れた後、中央で「キャッチ・アズ・キャッチ・キャン」の体勢で組み合ったとき明らかにテーズが優勢になっている。

これがプロのやり方だ、と思った。少しずつ自分の有利になるように持って行き、最終的には余裕を持ってしとめる。
きれいに別れるだけの善玉でもなければ反則で相手を痛めつけるだけの悪玉でもない。目的に向かってひとつひとつの工程を淡々とこなしていく靴職人のようである。

村松友視はアントニオ猪木を「善玉」でも「悪玉」でもなく「凄玉」という造語で称した。
猪木は「凄玉」というには感情的すぎる。

ロープ際で無表情にパチーンと相手の顔を叩いたテーズは逆にやられたときも無表情である。
延々30分間ヘッドロックで頭を締め付けられた後、一瞬の隙をついてバックドロップで相手を仕留めた直後も無表情である。
喜んで「ダー」などと勝どきの声をあげたりしない。

「凄玉」というのは16歳でデビューし74歳で引退するまで58年間たんたんと現役生活を通した、ハンガリーからアメリカに移住した靴職人の息子ルー・テーズを称するのにふさわしい言葉である。

(2017.3.26)


---子供について---

親は子供に対して扶養義務があるという。

生まれたばかりの子供は世話をしないと死んでしまう。おっぱいをあげたり、ウンチやおしっこの世話をしてあげなければ正常に育たない。 でも義務でするわけではない。それをした時に彼らの気持ち良さそうな顔。その顔を見たさにするのだ。

小学生になると自分なりの考えを持つようになる。経験が少ないだけに直感に頼った独特の考え方だ。 その話を聞いて自分のその時代のことを思い出しながら意見を交換するのは楽しい。
彼らを遊ばせたことはない。彼らを利用して自分が楽しいことをしただけだ。 公園に行くのも、プールに行くのも、旅行に行くのも。彼らがいなかったらできなかったことばかりだ。よく飽きずに付き合ってくれたものだ。

中学生になると考え方も大人になってくる。小学生時代のように一緒に遊ぶことはできない。身近にいる年長者という立場で見ているだけである。 行動範囲や友人関係が広がってくる。話を聞いて自分のその時代のことを思い出しながら意見を交換するのは楽しい。

高校大学ともなると大人である。ますます行動範囲や交際範囲が広がり考え方も深くなる。話を聞いて自分のその時代のことを思い出しながら意見を交換するのは楽しい。

会社に入ったりやめたりし始めたら対等の大人である。話を聞いて自分の状況と対比しながら意見を交換する。白熱する。

どこまで行っても義務感を見つけることはできない。そこにいる年下の者に対してしたいようにしただけだから。

彼らのいない人生を考えると恐ろしくなる。自分だけの狭い経験しか知らないまま人生を終わってしまうなんて。

わずかばかりの食べ物や教育機会を与えた引き換えにこんなにも私の人生の幅を広げてくれた彼らに感謝したい。

(2017.2.26)


---上昇志向---

飛行機は地球の重力に逆らって飛んでいる。飛行機が水平に飛ぶためには飛行機本体は上昇していなければならない。水平に飛んだとしたら重力に引っ張られて下降してしまう。

我々の心と体も同様である。いつも同じところにいたら心は腐敗する。体は堕落する。自分の経験では20歳過ぎたらその傾向はゆっくり現れるが顕著に現れるのは45才を過ぎたあたりからである。

私のヨガの先生はこう言う。「手が汚れたら洗うでしょう。歯が汚れたら磨くでしょう。心が曇ったら胸を太陽に向けて深呼吸しましょう」

20才の心を維持するために、本を読み、音楽を聴き、絵画を見、落語を聴く。20才の体を維持するために毎日ジムで筋トレ、週に一度ヨガクラスに通っている。

それでも心の下降、体の下降を食い止めることはできない。

ローマの貴族たちや中国の王様たちは不老不死の薬を追い求めて莫大な財産を使った。しかし成功したものはひとりもいなかった。

五代目古今亭志ん生はこう言った。「飛行機なんてあんな鉄の塊が空を飛ぶわけがねえ」

(2017.2.5)


Copyright(C) 2012 Umayakaji.com ALL rights reserved.