「ウガンバンタ」というのは沖縄ことばで「祈りの崖」という意味だそうだ。笑二の新作落語である。
登場人物の携帯電話にいきなり知り合いから電話がかかってくる。電話の中で、今彼がいるところを説明する。今いるところは沖縄の孤島。日本で一番海のきれいなところを見にきたという設定である。電話が終わるといきなり沖縄のおばあが登場し、噺に入ってゆく。沖縄言葉と標準語が互い違いに繰り返され、観客は笑二の怪奇な世界に入ってゆく。
「お直し」は古今亭志ん生の大ネタである。吉原の花魁がだんだん売れなくなり、下の階層の店に落ちてゆく。最後にはこれ以上落ちようがない、「地獄」とも「羅生門河岸」ともいわれる最下層の店に・・・。一緒に落ちてゆく妓夫太郎との道行。
土壇場からの復活劇を演じて志ん生は1956年の文部大臣賞を受賞した。最後の「直しておもらいよー」という掛け声は、地の底にひしめく亡者たちに降りてくる一条の蜘蛛の糸のように思えた。
笑二の「お直し」には、死ぬか生きるかの悲惨さはない。亭主の酒と博打によって生活の先が見えなくなった夫婦。立場が変われば「芝浜」の夫婦とそんなに変わりはない。まだ35才の笑二に、地獄の底まで落ちた男女を表現するだけの芸を求めるのは無理だろう。笑二は志ん生の「お直し」をもとに、一味違う別の「お直し」を作り上げてみせた。
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