「祝典のためのファンファーレ」は5分ほどの曲だが、舞台いっぱいに広がるフル編成のオーケストラによる演奏は迫力があった。
「さすらう若人の歌」。黒田祐貴のバリトンはホール全体に朗々と響いた。曲はすべてマーラーの初期の交響曲に使われている。一曲一曲に親しみを感じた。
「交響曲第5番 嬰ハ短調」。第一楽章のトランペットによるファンファーレとそれに続く4本のトロンボーンの響きはきらびやかで、これから始まる音楽に対する期待感を高めた。マーラー特有のスラブ風のうら淋しいようなメロディは、胸の内側を羽でくすぐるような感覚におちいらせる。 第三楽章では6本のホルンの響きは第一楽章のトランペットをしのぐほどのきらびやかな迫力があった。
第四楽章の美しく繊細なアダージェットはハープによる妙なるメロディから始まる。この楽章はオーディオ装置のスピーカーではほとんど聞き取ることができない。コンサートホールではそれぞれの弦楽器の音がはっきり聞こえてくる。10台のコントラバスと11台のチェロの地の底からせり上がってくるような低音の響きがお腹の皮を震わせるようであった。ところで、男性のハープ奏者っているのだろうか。
第五楽章は静かな第四楽章から一転して激しい曲になる。ティンパニ、大太鼓、ヴァイブラフォン、トランアングルが鳴り響く。金管楽器、木管楽器も総動員して大団円へとなだれ込んでゆく。
指揮者の坂入健司郎は指揮棒を持たない方の左手を有効に使っていた。これほど左手の動きのある指揮者は今まで見たことがなかった。
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