前座の宝井優星は2022年宝井琴星に入門。今年3年目である。どことなくフラがあり、観客を話に引き込む力を持っている。もちろんこれから面白くなるところで終わるのだが、石川虎次郎のその後が知りたくなった。
「円山応挙の幽霊画」。応挙の幽霊画はそれまでに描かれた、血みどろの恐ろしげな幽霊ではなく、寂しげな顔をした女が所在なげに立っている、という幽霊である。初めて描かれた普通の女の姿をした幽霊である。応挙がなぜそういう幽霊を描いたのかというのが今回の話である。日本の幽霊の哀しさは、その風土や環境から来ているのだと納得した。
仲入り後は立川談吉作「お伊勢太郎」。落語家の談吉が作った新作落語を講談に直して演目にした。講談ではあまり使わない所作が出てくるところは元ネタが落語のせいである。
トリネタは太宰治作「葉桜と魔笛」。あまり講談的な演出はつけずに淡々と読んでゆく。
登場人物は姉と妹の二人だけである。姉のセリフを読む時は姉の顔、妹のセリフを読む時は妹の顔になっている。物語はセリフとセリフのやり取りだけで進んでゆくが、淡々と読んでいるだけなのに、筆者の胸の中に、姉妹と登場しない父親の気持ちが盛り上がってきてたまらなくなってくる。
田辺いちかさんは2014年に田辺一邑先生に入門し、2019年に二つ目に昇進した。今年6年目に入った中堅の二つ目だが、来年の秋真打に昇進する。異例のスピード昇進である。7年目で真打昇進は、8年目で昇進した神田伯山よりはやい。講談界で彼女がいかに期待されているかがわかる。
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