向じま墨亭は東向島一丁目にある。鳩の街通りの一番端である。鳩の街といえば滝田ゆうの「寺島町奇譚」の舞台になった街である。さらに言えば、吉行淳之介の小説「原色の街」、永井荷風の戯曲「渡り鳥いつかへる」「春情鳩の街」の舞台となった街である。
全長200メートルほどの狭い道を当時の様子を想像しながら歩いた。ほとんどの建物が新しくなっていて、1958年に売春防止法が施行される以前の面影は残っていなかった。
今残されているのは狭い道とそこから毛細血管のようにつながる路地のみである。一本一本の路地をくまなく歩けばもしかしたら何か発見できるかもしれないが。
今日の会場「向じま墨亭」は化粧品店の看板がうっすらと残っている古い建物である。2階の会場は6畳ふた間をつなげて使っていた。定員は15、6名程度。演者との距離は極めて近い。筆者が経験した中で一番近かった。
「焼餅坂の間違い」は虚無僧と魚屋が武士に対抗する話である。落語でも「たがや」など、武士に反抗する話があるが、この話はその講談版である。
「替玉計画」は結城昌治原作の短篇を愛山が講談にした。
本会の題は「神田愛山 真夏の6DAYS 〜後席に結城昌治を読むお盆!〜」という。今日はその初日である。
仲入り後のトーク「神田愛山取扱説明書」では演芸評論家であり、向じま墨亭の席亭でもある瀧口雅仁氏が愛山先生に質問をする。そこで愛山先生は好きな小説家として結城昌治と吉村昭をあげていた。小説はこの二人だけ読んでいれば十分と言う。
瀧口氏は今まで知られていなかった愛山先生のことを遠慮なく質問し、愛山先生はそれに対して率直に答えていた。約40分間の質疑応答は実に興味深かった。この質疑応答は6日間おこなわれ、瀧口氏によって本になるという。
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