「道灌」は前座噺である。大家さんと八五郎の噛み合わない話が延々と続く。いくらでも長くできるし、途中で切ってもかまわない。
入船亭扇辰師匠の元には三人の弟子がいる。先日、真打に昇進して十代目入船亭扇橋になった小辰、二つ目の入舟辰乃助、前座の入船亭辰ぢろである。奥さんは作詞家の覚和歌子さんであり、扇辰師匠本人も
三代目橘家文蔵、五代目柳家小せんとユニット「三K辰文舎」を組み、キーボード・ギターを担当して活動している。
扇辰師匠の最初の噺は「田能久」。阿波国田能村の百姓の久兵衛、人呼んで「田能久」は大の芝居好きで、一座を組んであちこちに興行まで行っている。あるとき伊予国宇和島で興行中に、母親が急病との知らせが届く。親孝行の田能久は夜を徹して田能村へ戻る。戻る途中、山の中でうわばみに出会い、飲み込まれそうになるが、なんとかごまかして村にたどりつく。
久兵衛はうわばみの嫌いなもの聞き出し、久兵衛も自分の嫌いなものをうわばみに教える。お互いの嫌いなものとは・・・。
扇辰師匠のうわばみの表情がすばらしい。ひと目ですごい化け物であることがわかる。
「天狗裁き」は有名な夢オチの噺である。同じ夢オチでも「芝浜」や「ねずみ穴」のように重くない。しゃれたオチになっている。
八五郎の見た夢を聞き出しにかかる女房、熊さん、大家さん、奉行、天狗の五人の演じ分けが見事だった。特に女房と天狗が素晴らしかった。今まで見た天狗の中で一番大きく、一番恐ろしかった。オチの時の女房の表情がなんともいえず知性的であった。奥さんのイメージを拝借しているのではないかと想像した。
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