2025年
| クリフォード・ブラウン / ウイントン・マルサリス / デビッド・マシューズ / フィル・ウッズ / 秋吉敏子 / 宮間利之とニュー・ハード / ジョン・コーツ,Jr. / ケニー・ドリュー / ウラジミール・シャフラノフ / 山下洋輔 / デューク・エリントン |
--- クリフォード・ブラウン --- | |||
![]() Study In Brown ![]() 同裏面 |
本アルバムがクリフォード・ブラウンのレコードの中で一番録音状態が良いだろう。彼の温かいトランペットの音が忠実に記録されているのはありがたい。鋭くも温かいのが彼のトランペットの特徴である。マイルスともマルサリスとも違う。誰が聞いても一聴してわかると思う。 クリフォード・ブラウンのトランペットとハロルド・ランドのテナー・サックスが歌いあげる「チェロキー」は本アルバムの中で一番ドラマティックだ。二人のアドリブ合戦も聞きごたえがある。その他、ピアノがリッチー・パウエル、ベースがジョージ・モロウ、ドラムスがマックス・ローチという豪華メンバーである。 「ジャッキー」。 ハロルド・ランドのテナー・サックスが良い。安定感がある。 「スウィンギン」。 短い曲だが、マックス・ローチのドラムスが見せ場を作っている。 「ジョージズ・ジレンマ」。 冒頭でソロをとるクリフォード・ブラウンのトランペットが最高に良い。包み込むような音。音楽は最終的には楽器の音に行き着くのではないだろうか。同じ楽器を鳴らしても演奏者によって音がまるで違う。このことについては、ある音楽祭で同じピアノを別のピアニストが弾いた時に気づいた。
1955年2月23,24,25日 ニューヨークで録音。 |
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| (2025.11.2) | |||
--- ウイントン・マルサリス --- | |||
![]() LIVE AT BLUES ALLEY ![]() LIVE AT BLUES ALLEY |
ウイントン・マルサリスがピアノ・トリオをバックにワン・ホーンで吹きまくる。ピアノ・トリオはマーカス・ロバーツ(piano)、ロバート・ハースト(bass)、ジェフ・ワッツ(drums)というメンバーである。マルサリスのトランペットをじっくり聞くためには最高の編成といえる。 マルサリスのトランペットはどれも良いが、なかでもディスク2のオータム・リーブズ(枯葉)の演奏が素晴らしい。メロディも良いが、アドリブがさらに良い。スタジオ録音とライブ録音の違いがまざまざと出ている。一言で言えば音が生きている。スタジオ録音の音は記念写真の音だ。ライブ録音は実物がそこで動いている、という音だ。 ディスク1 「ノーズ・モウ・キング」のトランペット・ソロはすごい。火を吹くようなというのはこういう演奏のことを言うんだ、と思った。それにからんでいくピアノも良い。「ノーズ・モウ・キング」は別テイクを含めると計4通りの演奏が録音されている。一番衝撃的なのはディスク1の1曲めである。 ディスク1 「チェンバース・オブ・テイン」ではトランペット、ピアノ、ドラムスがそれぞれ長いソロをとっている。聞かせどころ満載の演奏になっている。特にドラムスがすごい。 同じくディスク1の「チェロキー」では犬の遠吠えのようなトランペット・ソロから始まる。そのバックでピアノのマーカス・ロバーツがチェロキーのメロディを小さい音で弾いている。クリフォード・ブラウンやマイルス・デイヴィスの演奏で有名なスタンダード曲である。はじめのピアノの演奏のほかは、どこがチェロキー? と思えるほどアドリブでくずしているのが面白い。 メンバー : Wynton Marsalis(trumpet),Marcus Roberts(piano),
1986年12月19日,20日 ワシントンD.C.にある「Blues Alley」におけるライブ録音 |
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| (2025.10.2) | |||
--- デビッド・マシューズ --- | ||
![]() JAZZ BALLADS ![]() 同裏面 |
まるで小唄のような粋な演奏である。スローなバラードを集めた選曲だが、全てデビッド・マシューズのピアノを中心にスウィングしまくっている。 ウィズ・ストリングスという題名がついているが、デビッド・マシューズ(p)、Avery Sharpe(b)、Danny Gottlieb(ds)によるピアノトリオの演奏が基本になっている。 「虹の彼方へ」はピアノ、ドラムス、ベースの掛け合いが絶妙で素晴らしい演奏である。ストリングスはよく聞かないとわからないくらい地味に参加している。 「ダコタ・ムーン」はスタンダード・ナンバーのように聞こえるがデビッド・マシューズのオリジナルである。ピアノのスロー・バラードの名曲ではないか。 「ディープ・シー・ダンシング」もマシューズのオリジナル曲。アコースティック・ピアノの音とそれに絡む弾けるようなベースの音が実に良い。 「煙が目にしみる」はプラターズで有名な曲。絶妙のアレンジでピアノ・トリオの曲になっている。ベースの応答がなんともいえず良い。 「ザ・ナイト・スカイ・スイート」もマシューズのオリジナル曲。アコースティック・ピアノの良さが滲み出るような良い曲である。 本アルバムには3曲のスタンダードと、4曲のオリジナルが入っている。全てスタンダードといっても良いくらい名曲揃いのアルバムである。ストリングスは引いた録音で、ほとんどピアノ・トリオといってよい演奏になっている。
1991年8月25日、27日 M&I Recording Studio, N.Y. |
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| (2025.9.3) | ||
--- フィル・ウッズ --- | ||
![]() cool woods(CD) ![]() cool woods(裏面) |
「ララバイ・オブ・ザ・リーブズ」はフィル・ウッズのたくましいアルト・サックスソロから始まる。その後リズムセクションに参加している大西順子にうつり、大西とロン・カーターのベースのやり取りが始まる。最後にフィル・ウッズに戻って曲を終了する。典型的なジャズのカルテットの演奏である。 「オールズ・シングス・ユー・アー」。ジェローム・カーンとオスカー・ハマースタイン2世によって作詞作曲されたジャズ・スタンダード。フィル・ウッズがテーマを演奏し、軽快な大西順子のアドリブ演奏が始まる。 「ラウンド・ミッドナイト」。セロニアス・モンク作曲によるスタンダード・ナンバー。大西のピアノから始まり、アルト・サックスへつなぐ。マイルスのトランペットもいいが、フィル・ウッズのアルト・サックスも良い雰囲気を出している。ジャズのスタンダードをアドリブをまじえてガンガン弾く大西順子が楽しい。 「ユー・ドント・ノー・ホワット・ラブ・イズ」。「あなたは恋を知らない」もまた、さまざまなジャズ・ミュージシャンが演奏している。途中から出てくる大西とロン・カーターのやりとりが洒落ている。 「エンブレイサブル・ユー」。ジョージ・ガーシュウィンが作曲したポピュラー・ソング。大西のピアノソロから始まる。スローテンポのバラード。 「サンバ・デュボイス」。アップテンポのサンバ。フィル・ウッズ自身が作曲した。大西のソロ・パートは聴き応えがある。 「ホワット・アー・ユー・ドーイング・ザ・レスト・オブ・ユア・ライフ」。「残りの人生をあなたはどうやって生きていくの?」ミシェル・ルグランが作曲し、映画の劇中歌として歌われ、ジャズのスタンダードにもなっている。アルト・サックスとベースのデュオから始まる。そこへドラムスが入り、カルテットの演奏へ流れてゆく。ゆったりしたバラード。映画は見ていないが、どこかで聞いたことがある曲である。
1999年1月4,5日、ニューヨークで録音。 |
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| (2025.8.3) | ||
--- 秋吉敏子 --- | |||
![]() TALES OF COURTESAN ![]() 同裏面 |
秋吉敏子=ルー・タバキンビッグバンド演奏によるアルバムは全部で13枚ある。本アルバムはその中の3枚目のアルバムである。 アルバムタイトルの「TALES OF COURTESAN(花魁譚)」とは吉原の花魁(おいらん)のことである。ここではルー・タバキンがフルートで花魁たちの華やかさと哀しさを表現している。タバキンのフルートはまるで日本の横笛のような音色だ。コンサートでは本曲や「孤軍」などでの彼のフルート独奏がひとつの見せ場になっている。 「ロード・タイム・シャッフル」と「ストライブ・フォー・ジャイブ」はビッグバンドの特色を発揮した曲である。「ストライブ・フォー・ジャイブ」では、ディック・スペンサーのアルトサックスとバックのホーン奏者たちとの掛け合いは絶妙である。 「アイ・エイント・ゴナ・アスク・ノー・モア」はフィル・ティールによるバス・トロンボーン独奏から始まる。「もう仕事欲しさの電話はしない!」という敏子の決意に満ちた曲である。それにしてはバス・トロンボーンの音がユーモラスに響く。 「インタールード」は間奏または休憩の意味。ゲイリー・フォスターのアルトサックスが快調である。バックでフルートを効果的に使うのはこのビッグバンドの特徴である。この曲はのんびりしているというか、力が抜けている感じがして好みである。 「ヴィレッジ」。敏子の力強いピアノ・ソロから始まる。日本民謡風のピアノ・ソロとパーカッションのコラボは新鮮である。そこにホーンセクションが入り込んでアップテンポの曲が広がってゆく。ホーンセクションのアンサンブルが快感を呼ぶこ。
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| (2025.7.3) | |||
--- 宮間利之とニュー・ハード --- | |||
![]() So Long Charles ![]() So Long Charles |
前田憲男の編曲とニュー・ハードの演奏はチャールズ・ミンガスの土俗的な音楽を洗練された音楽に変質させた。本アルバムはミンガス・サウンドでありながら、まるで別物の音楽となっている。 「直立猿人」は猿人の群れが咆哮するような原曲に対して、ビッグ・バンドの音楽になっている。ベースとドラムスの低域での支持力が効いている。ベースは立花泰彦、ドラムスは中村吉夫。 「負け犬の下で」は前田憲男のオリジナル。 不気味なベース・ソロで始ま理、全体的にベースの音が音楽を支配している。いかにもミンガス的な音楽である。題名はミンガスの自伝「Beneath the Underdog」から来ている。 「フォーバス知事の寓話」。 フォーバス知事を茶化したような曲が原曲通りに進行する。ピッグ・バンドとしての厚みは原曲よりも増している。途中挟まれる神村英男のトランペット・ソロが秀逸・ 「ソー・ロング・エリック」。 ミンガスがエリック・ドルフィーに捧げた曲。小黒和命のバス・クラリネット・ソロから始まる。そしてバス・クラリネットが全体の曲想を支配している。 「フェアウェル C.M.」。 ギター奏者の山木幸三郎がチャールズ・ミンガスに捧げた曲である。途中挟まれるベース・ソロはミンガスの粘るようなベースとは対照的に軽快に響く。印象的なトロンボーン・ソロは片岡輝彦である。 「オレンジは彼女の色」。 ミンガスが作曲したブルース。うねるような小田切一己のテナー・サックス、透明な高野潔のピアノが印象に残る。
1979年録音。 | ||
| (2025.6.3) | |||
--- ジョン・コーツ,Jr. --- | |||
![]() The Jazz Piano of ![]() 同裏面 |
ジョン・コーツ,Jr.は50年以上にわたって、ペンシルベニア州デラウエアの「ディア・ヘッド・イン」というジャズクラブで演奏していた。本アルバムは同地のノーサンプトン・コミュニティ・カレッジで録音されたライブ盤である。 彼はアルバムの少ないピアニストで、1979年に録音された「Alone and Live at The Deer Head」というアルバムがある。本アルバムはそれより5年ほど前に録音されたものである。 本ライブはトリオでの演奏だったようだ。ベースにDeWitt Kay、ドラムスにGlen Davisを配している。トリオの演奏ではあるがベースとドラムスの音は極力押さえて録音されていて、よく聴かないとピアノ・ソロの演奏と勘違いする恐れがある。 ピアノの音はどこまでも透明でメリハリがある。キース・ジャレットを連想するが、キースは若い頃ジョン・コーツ,Jr.に師事していたという。 SIDE-1とSIDE-2の1曲目は彼自身が作曲した曲である。SIDE-2の2曲目はポール・マッカートニーの曲、3曲目はジョー・サリバンの曲である。 SIDE-2の1曲目「DEEP STRINGS」はドラマティックなピアノ・ソロで始まり、そこにドラムスとベースがゆっくり絡んでいく展開にはワクワクするような迫力を感じた。この演奏を生で聴いた観客は幸せである。 SIDE-2の2曲目「YESTERDAY」はピアノ・ソロで演奏される。途中までは何の曲だかわからない。お馴染みのメロディが聞こえはじめると、そこからはピアニストの独壇場である。
録音 1974年2月3日 Northampton Community College, ペンシルベニア州。 |
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| (2025.5.2) | |||
--- ケニー・ドリュー --- | |||
![]() All the things you are, ![]() 同裏面 |
ピアノ・トリオ + テナーサックスというオーソドックスな編成のアルバムである。モダンジャズの基本的な形といっても良い。この編成のジャズの演奏が、演奏者も聴き手も一番馴染み深く、やりやすいのではないだろうか。 残された数少ないジャズ愛好家はミュージシャンたちが残していったレコードやCDを聴くしかないのである。 「All the things you are(君こそすべて)」 ジェローム・カーンとオスカー・ハマースタイン2世によって作詞作曲されたジャズのスタンダード・ナンバー。この曲は1939年にブロードウェイミュージカル「Very Warm for May」のために書かれたが、ミュージカルは不評でわずか2ヶ月で終了してしまったという。ジャズのスタンダードになっている曲にはこうした例が数多くある。 「Moonlight in Vermont(ヴァーモントの月)」 テナーサックスによるスローバラード。ピアノトリオのバッキングが心地よい。 「Alone Together(アローン・トゥゲザー)」 1932年のブロードウェイミュージカル「フライングカラー」で、アーサー・シュワルツが作曲した曲である。ミュージカルは忘れ去られているが、曲はスタンダード・ナンバーになっている。マイルス・デイヴィス、ソニー・ロリンズその他多数のミュージシャンに演奏されている。 「Yardbird Suit(ヤードバード組曲)」。チャーリー・パーカー作曲による。ジュニア・クックがアップテンポでテナーサックスを吹きまくる。ジミー・コブのドラムソロが大迫力。 「Sunset(サンセット)」。ケニー・ドリューのピアノソロ演奏。ケニーのオリジナル曲。デジタル・レコーディングだけに雑音のないいい音で録音されている。 「Yesterdays(イエスタデイズ)」。ケニー・ドリューのピアノソロ演奏。1933年にジェローム・カーンが作曲した曲。ケニーはスタンダード・ナンバーを思い入れたっぷりに、気持ちよさげに弾いている。。 「John, Paul Jones(ジョン, ポール・ジョーンズ)」。ジョン・コルトレーン作曲による。ジュニア・クック、ケニー・ドリュー、ジュニア・クックと続き、最後は全員でしめる。 「Theme(テーマ)」。いソノてルヲ氏によるミュージシャンの紹介の後、アンコール曲を演奏する。観客の盛大な拍手の音も録音されている。 ー ー ー ー ー メンバー : Kenny Drew (pf), Sam Jones (b), Jimmy Cobb (ds), Junior Cook (ts) 1981年1月23日 東京郵便貯金ホールでのライブ録音。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
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| (2025.4.2) | |||
--- ウラジミール・シャフラノフ --- | ||
![]() ロシアより愛をこめて(CD) |
初めてこのCDを聴いた時、シャフラノフ・トリオにロシア民謡をやらせるなんてずいぶん安易な企画だな、と思った。 全部聴き終えた時に、あれ、もう一度聴きたいな、と思った。何か心に残るのだ。シャフラノフのピアノだったり、ベント・スタルックのドラムスだったり、ハンス・バッケンルートのベースだったり、あるいは曲の一部のメロディが馬鹿に気持ちの隅に引っかかったりする。 「モスクワの夜はふけて」。テーマのメロディをピアノで弾いた後、アドリブに入っていくがこの時のピアノの音が実に心地よい。よく知っているはずの曲が違う曲のように聞こえる。 「舟歌」。チャイコフスキーの有名なピアノ曲を普通にピアノソロで弾いた後、他のメンバーが加わり、軽いサンバ風のアレンジで展開する。寂しげなメロディが一転して踊り出したくなるような曲に変化する。 「霧のカレリア〜トロイカ」。1960年代のヒットナンバーをフォービートのジャズ風に演奏する。ピアノによるアドリブ演奏が快調である。ロシア民謡の「トロイカ」を軽快に演奏して締める。 「哀しみのワルツ」。ショスタコーヴィッチ作曲のワルツをジャズ風に演奏する。ショスタコーヴィッチにこんな大正演歌風の曲があったんだ。解説を読む前は日本の大正時代の演歌をジャズにしたものと思った。日本人はロシア人の感性を理解しやすいのかもしれない。 「黒い瞳」。有名なロシア民謡である。多くのジャズ・ミュージシャンがこの曲をジャズにしている。シャフラノフはこの曲を急速調で演奏した。それはそれで不自然には感じない。ピアノ〜ドラムス〜ベースのやりとりが心地よい。 「ビーズの腕輪」。ボロディンの「弦楽四重奏曲」一部をアレンジ。ピアノソロでテーマをクラシック風に弾いた後、フォービートでトリオの演奏に入る。「弦楽四重奏曲」が「二人でお茶を」風になるのが面白い。 「ステンカ・ラージン」。有名なロシア民謡である。耳にお馴染みの原曲をスロー・バラードで演奏している。一聴これがあの曲?と思う。トリオのアンサンブルが素晴らしい。 「ベム・カン・セグラ」。シャフラノフは現在フィンランドのオーランド諸島の島に住んでいる。この曲はオーランド諸島に伝わる民謡である。日本のなんとか地方の民謡と紹介されても「そうか」と思うだろう。寂しげな曲をアドリブで大きく展開し、最後に元に戻って終わる。 「ロシアより愛をこめて」。007映画の主題歌である。アドリブでスウィンギーな曲に変化させている。曲名にロシアという言葉が入っているが、この曲だけロシアの曲ではない。 「フル・ムーン・アンド・エンプティ・アームズ」。ラフマニノフの「ピアノ協奏曲 第2番」のテーマをアップテンポで軽快に演奏する。バックで演奏するドラムスの軽快なリズムが心地よい。 「モスクワの夜はふけて」の別テイクである。この曲を聴くと一気にロシアの雰囲気になる。 改めて全部聴き終えて思うことは「良いピアノ・トリオの演奏は心地よい」ということであった。 2015年2月1&2日 ストックホルムにて録音。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
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| (2025.3.3) | ||
--- 山下洋輔 --- | ||
![]() クレッシェンド(CD) | 山下洋輔のニューヨーク・トリオのファースト・アルバムで、ニューヨークのジャズ・クラブ「スイート・ベイジル」でのライブ盤である。 1983年にそれまでのトリオを解散した山下洋輔は、さまざまな形のジャズを模索したのち、1988年セシル・マクビー(b)とフェローン・アクラフ(ds)とニューヨーク・トリオを結成する。このトリオはそれまでのフリー・フォームによるジャズではなく、伝統的なフォー・ビートのジャズを自分なりにやろうという目論見で出発したものである。 「オータム・チェンジズ」は山下洋輔版「オータム・リーブス(枯葉)」である。「枯葉」のメロディが現れそうで現れない。セシル・マクビー(b)とフェローン・アクラフ(ds)のバッキングが強力である。 「A列車で行こう」はデューク・エリントン楽団の演奏で有名な曲。もちろん曲はオリジナルそのままの形になっていない。フェローン・アクラフのドスンドスンという重量級のドラムスの音が印象に残る。 「ソウル・アイズ」はマル・ウォルドロンの曲。山下のピアノ演奏がフューチュアされる。正統的なブルースの演奏である。 「C.P.ブルース」。これも正統的なブルースの演奏である。 「ファースト・ブリッジ」。山下洋輔作曲。フリー・フォームに近いが、その中にフォー・ビートの要素も見られる。転がるような激しいピアノの演奏が印象的である。ドラムスもそれに呼応して激しい演奏をしている。 「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」。スタンダード・ナンバー。たっぷり歌いながらも山下独特のフリーなピアノ演奏も忘れずない。ベースとドラムスのバッキングも強力だ。実況録音版なだけに観客の拍手の音も入っていて臨場感がある。 1988年7月11日、18日 ニューヨーク SWEET BASILでの実況録音。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
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| (2025.2.2) | ||
--- デューク・エリントン --- | |||
![]() HI-FI ELLINGTON UPTOWN ![]() HI-FI ELLINGTON UPTOWN(裏面) ![]() Louis Bellson |
1曲目の「Skin Deep」ではブラス・セクションに続いてルイ・ベルソンの雷のようなドラム・ソロが展開される。副題に「featuring Louis Bellson, drums」と書かれている。雷のようなという以外にない。圧倒的なドラム・ソロである。 「The Mooche」はエリントン作曲によるエキゾチックな曲である。ミュートを効かせたトランペットが独特の雰囲気を醸し出している。 「Take the "A" Train」はビリー・ストレイホーン作曲のお馴染みの曲。軽いタッチのピアノ・ソロからスタートする。たぶんストレイホーンのピアノであろう。本ヴァージョンでは楽団の演奏に続いて女性ヴォーカルが入る。ヴォーカリストと楽団員のスキャットのやり取りがユーモラスである。ライナー・ノーツにヴォーカリストの名前はBetty Rocheと書いてある。 ベティ・ローシェ(またはロシェ、1918年-1999年)はアメリカ合衆国デラウェア州生まれの女性ブルース歌手。エリントン楽団ではお馴染みの歌手である、と出ている。 「Perdido」(パーディド)は楽団のトロンボニスト、フアン・ティゾールによって作曲されたジャズ・スタンダード・ナンバー。ブラス・セクションのアンサンブルが最高の曲である。フアン・ティゾールのトロンボーンよりもトランペットの合奏およびソロ演奏が印象に残る。 「Controversial Suite」。エリントン作曲。「コントラヴァーシャル」とは「議論の的になる」または「物議を醸している」という意味である。往々にしてジャズの題名は内容とは関係のないことが多い。 録音 1951年12月11日、1952年6月30日 、7月1日 ニューヨーク コロムビア30番街スタジオ、1952年2月29日 フレズノ レインボー・ボールルーム。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
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| (2025.1.2) | |||