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マシュー・シップ / ルー・ドナルドソン / カリン・バーマン / コンラッド・ハーウィグ / スウェーデンの街角のジャズ



--- マシュー・シップ ---


nu bop

nu bop(CD)

nu bop

同裏面


ニューヨークのThirsty Ear Recording Inc.という会社から発売されたCDである。あとは各曲の表題しか書かれていない。日本のCDに比べて極めてデータが少ない。だが、中身は興味深い演奏が記録されている。じっくり聴いていると時間の経つのを忘れてしまうほどである。

「Space Shipp」。マシュー・シップ(Matthew Shipp)の名前をもじった曲であろう。題して「宇宙船」。マシュー・シップ(pf)が印象的なメロディを弾き、その後にギレルモ・E・ブラウンの強力なドラムスが続く。シンセサイザーとベースが盛り上げ、全体としてワクワクするような演奏になる。本アルバムにはもう一曲「Rocket Shipp」というのがある。

「Nu Bop」。表題は従来の「be-bop」に対して、新しいという意味を追加して「new bop」としたものか。ウィリアム・パーカーのベース・ソロから始まり、ドラムスが続く。ダニエル・カーターのアルトサックスが絡んできて、不思議だがノリの良いリズムの演奏を繰り広げる。

「ZX-1」。マシュー・シップのピアノ・ソロ。内省的な曲。ピアノの音がリアルに録音されている。

「D's Choice」。日本の民謡のようなメロデイをマシュー・シップ(pf)が演奏し、それにFLAMのシンセサイザーが絡んでいく。最後もピアノ独奏で締める。日本人の心をくすぐるような曲である。

「X-Ray」。ダニエル・カーターのフルート・ソロで始まる。ウィリアム・パーカーのベースが絡んで不思議なメロディを奏でる。

「Rocket Shipp」。ベースとドラムスのリズムラインにマシュー・シップのピアノが絡み、リズミックな演奏を繰り広げる。繰り返しのリズムが脳に染みる感じで心地良い。

「Select Mode 1」。マシュー・シップのリズミカルなフリー・フォームのピアノ・ソロから始まる。ドラムスとベースが絡んでフリー・フォームのジャズが展開する。

「Nu Abstract」。シンセサイザーとピアノが不思議なメロディを奏でる。表題は「新しい抽象」か。

「Select Mode 2」。「Select Mode 1」同様ピアノ、ベース、ドラムスによるフリー・フォーム・ジャズ。ギレルモ・E・ブラウンのドラムスが効いている。

  1. Space Shipp
  2. Nu Bop
  3. ZX-1
  4. D's Choice
  5. X-Ray
  6. Rocket Shipp
  7. Select Mode 1
  8. Nu Abstract
  9. Select Mode 2

録音 Sorcerer Sound, New York。

   (2024.5.2)


--- ルー・ドナルドソン ---


LUSH LIFE

LUSH LIFE(CD)

LUSH LIFE

同裏面


LUSH LIFE(オリジナル・カバー)

磯原で購入した中古CDの中の1枚である。裏面に「Printed in USA」と書いてあるからアメリカで作られたCDだろう。ただし、オリジナルのカバーは使われていないので、別の会社から再発売のものだろう。オリジナルはブルーノートから発売された。本来のカバー・デザインを右に載せておく。

アメリカで作られたオリジナル以外のCDがどういう経路で当時北茨城市に一軒しかなかった中古CD屋にたどり着いたのか、興味深い。

ジャズのスタンダード・ナンバーをビッグ・バンドをバックに従えたルー・ドナルドソンがアルト・サキソフォンをまるで歌い上げるように堂々と吹きまくっている。

本アルバムはバックのメンバーがすごい。トランペットのフレディ・ハバード、テナー・サックスのウェイン・ショーター、ピアノのマッコイ・タイナー、ベースのロン・カーターなどなど。それぞれがリーダーとして何枚もアムバムを出している名人たちがビッグ・バンドの一員として参加している。そして出過ぎないように少しずつソロをとっている。

   ー ー ー ー ー

「Sweet Slumber」。アルト・サックスのルー・ドナルドソンがテーマを吹いた後、ウェイン・ショーターのテナー・サックス、マッコイ・タイナーのピアノが続く。

「You've Changed」。マッコイ・タイナーのピアノが印象的。

「The Good Life」。「麗しき人生」は人生を感じさせるスロー・バラード。アルト・サックスまたはテナー・サックスで朗々と吹かれるとジーンとしてくる。ルー・ドナルドソンは最初から最後まで堂々と吹いている。

「Stardust」。ホーギー・カーマイケル作曲の名曲である。前曲と本曲はルー・ドナルドソンの聴かせどころとなっている。

「What Will I Tell My Heart」。「偽れぬ心」はエラ・フィッツジェラルドやトニー・ベネットが歌っている。いかにも西洋小唄という感じの曲。 ルー・ドナルドソンがまるで歌うように気持ちよさそうにアルト・サックスを吹いている。

「It Might As Well Be Spring」。「春の如く」はいろいろな歌手がカバーしている。軽やかで良い曲である。

「Sweet And Lovely」。アルト・サックスがテーマを吹いた後に、フレディ・ハバードが見事なトランペット・ソロを決めている。

   ー ー ー ー ー

メンバー : Freddie Hubbard (tp), Garnett Brown (tb), Lou Donaldson (as), Jerry Dodgion (as, fl), Wayne Shorter (ts), Pepper Adams (bs), McCoy Tyner (p), Ron Carter (b), Al Harewood (ds), Duke Pearson (arr)。

1967年1月20日 Rudy Van Gelder Studio, Englewood Cliffs, NJ, で録音。

   ー ー ー ー ー

何年も前に購入したCDだが、あらためて聴くとなかなか良い。こんなに良いアルバムだったかと思った。風呂上がりに部屋に流しておくと、ゆったりした気分になる。何回も聴いているとなんて良い選曲なんだと思えてくる。

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

  1. Sweet Slumber
  2. You've Changed
  3. The Good Life
  4. Stardust
  5. What Will I Tell My Heart
  6. It Might As Well Be Spring
  7. Sweet And Lovely
   (2024.4.1)


--- カリン・バーマン ---


Growing Green

Growing Green(CD)

Growing Green裏面

Growing Green裏面


Growing Green(Karin & Peter Burman)

Karin & Peter Burman

Growing Greenメンバー

メンバー


磯原で購入した中古CDの中の1枚である。本アルバムはスウェーデンで制作された。

曲名はすべて活字体で書いたものや、頭文字だけ活字体のもの、ウムラウトがついたものなどがあり、そのまま下に載せた。英語と思われる単語とそうでない単語が混在している。

「NATTVIOL」。ピアノ、ドラムス、ベースという典型的なピアノ・トリオ+ソプラノ・サックスというカルテットをバックにソプラノのカリン・バーマンが歌う。独特な雰囲気の曲。スペルからするとスウェーデン語であろう。意味はわからない。

「Nothing Serious」。軽快なアップテンポの曲。カリン・バーマンのスキャットも軽やかだ。

「NOSTALGI」。題名はスペルからすると「ノスタルジー」か。スローテンポの内省的な曲。ピアノはキーボードに変わる。

「HOST」。題名の「O」の頭にウムラウトがつく。「ホスト」じゃないんだろうな。スロー・バラード。歌っている言葉はまるでわからないのでスウェーデン語だろう。ベースが効果的に響いている。

「Time」。ベース・ソロから始まる。題名は英語だがスウェーデン語で歌っている。力強く歌うカリンにソプラノ・サックスが寄り添うように伴奏する。

「MAGIC GEM」。この曲と次の曲だけ英語で歌っている。ドラムスとソプラノ・サックスのバックの演奏が良い。

「My ONE AND ONLY LOVE」。ジャズのスタンダード・ナンバー「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ」。ジョン・コルトレーン初めいろいろな人が演奏している。カリンはスローにシャウトするように歌う。バックのキーボードが神秘的に響く。

「SIMONS SAGA」。「サイモンの伝説」か。英語でないから違っているかもしれない。スロー・ナンバー。キーボード、ソプラノ・サックス、ドラムスが神秘的なメロディを奏でる。

メンバーはPETER BURMAN : ピアノ、キーボード、KARIN BURMAN : ヴォーカル、THOMAS GUSTAFSON : ソプラノ・サキソフォン、CHRISTIAN JORMIN : ドラムス、ANDERS JORMIN : ベースという面々である。

1996年夏に録音された。

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

  1. NATTVIOL
  2. Nothing Serious
  3. NOSTALGI
  4. HOST
  5. Time
  6. MAGIC GEM
  7. My ONE AND ONLY LOVE
  8. SIMONS SAGA
   (2024.3.1)


--- コンラッド・ハーウィグ ---


AO VIVO DE JAZZ

AO VIVO DE JAZZ (CD)

AO VIVO DE JAZZ

同裏面


磯原で購入した中古CDの中の1枚である。本アルバムはポルトガルで制作されたため、ポルトガル語表記である。

リーダーはコンラッド・ハーウィグ、トロンボーン奏者である。アルバムの副題はCONRAD HERWIGプラスTRIO DE BERNARDO SASSETTIとなっている。メンバーはコンラッド・ハーウィグの他にBERNARDO SASSETTIのピアノ、BERNARDO MOREIRAのベース、ANDRE' SOUSA MACHADOのドラムスという構成になっている。Fetival de Jazz de Guimaraesでの実況録音盤である。曲の終わりごとに観客の拍手の音が聴こえる。

1.から5.まではハーウィグによる曲で占められている。6.の「MUSICA CALLADA No1」はFrederico Monpoの曲で、7.の「I Mean You」はセロニアス・モンクのお馴染みの曲である。

「24 FOR FRANK」はハーウィグのトロンボーン・ソロから始まる。続いてベルナルド・サセッティのピアノ、アンドレ・ソーサ・マチャドのドラムスとのやり取りから、トロンボーンに受け渡した後、全員で終わる。軽快な曲。

「DIVA'S DILEMA」もまたハーウィグのトロンボーン・ソロから始まる。続いてベルナルド・サセッティのピアノ・ソロに渡す。ベルナルド・モレイラのベースがそれを下から支え、ドラムスもバックアップする。この辺は息のあったピアノ・トリオの演奏となる。しばらくするとトロンボーンが加わり、激しいアドリブを繰り広げる。13分近い長い曲だけに各パートの特徴がよく出た演奏である。

「REFRACTION」はハーウィグのつぶやくような、ささやくようなトロンボーン・ソロから始まる。長いトロンボーン・ソロにつずいてドラムスが絡んでくる。対話するような、口論するようなやり取りの後、ピアノが加わる。この辺の各楽器の絡み合いが面白い。ピアノの音が俄然良い。ヨーロッパの乾いた空気が関係しているのか。

「AMULET」と「RED ON BLACK」もまたハーウィグのトロンボーン・ソロから始まる。そしてそのまま彼のトロンボーンを中心にして演奏は進んでいく。ピアノ・トリオは目立つことなくバックで音楽を支えるのに徹している。彼のトロンボーンの音はトランペットの冷たさとかサキソフォンのねばりつくような熱情とは違い、カラッとした暖かさを持っている。常に適度な距離感で接してくれる友人のような感じである。

「MUSICA CALLADA No1」はフェデリコ・モンポウの「ひそやかな音楽」という曲の第1集である。モンポウはスペインのカタルーニャ地方に生まれた作曲家である。ハーウィグのトロンボーンがメロディを演奏し、ピアノ・トリオがバックを固めている。カタルーニャ地方の民謡のような哀愁のあるメロディをハーウィグのトロンボーンは時にはせつせつと、時には軽快に響かせている。

「I MEAN YOU」。ハーウィグのトロンボーンが軽やかに、そしてユーモラスにテーマを吹き、ベースが後に続く。力強いベース・ソロにトロンボーンが絡んできて、長いアドリブ合戦が始まる。最後にテーマに戻った後、全員で終わる。全員の紹介のMCに続いて長い拍手。

1993年11月 Fetival de Jazz de Guimaraesでの実況録音。

   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

  1. 24 FOR FRANK
  2. DIVA'S DILEMA
  3. REFRACTION
  4. AMULET
  5. RED ON BLACK
  6. MUSICA CALLADA No1
  7. I MEAN YOU
   (2024.2.2)


--- スウェーデンの街角のジャズ ---


JAZZ on the corner

JAZZ on the corner (CD)

JAZZ on the corner

JAZZ on the corner(裏面)


以前北茨城市の磯原に2、3ヶ月滞在した。街の中心部近くにCDレコード屋があり、中古のCDを安価で(50〜150円)で売っていた。レンタルCD屋から流れて来たものだろう。

滞在中ときどきその店を訪れ、安価のCDを物色した。新品は2,500円から3,000円はするのでとても手が出ない。安いから手当たり次第に買った。

あとでゆっくり聴いてみるとその中に思わぬ掘り出し物があった。ノルウェイの女性ヴォーカリスト Sisselの現地制作盤のアルバム、スウェーデンの女性ヴォーカリスト Karin Burmanとその夫 Peter Burmanカルテットの現地制作盤のアルバム、アメリカのピアニスト Matthew Shippカルテットのニューヨーク盤のアルバムなどに混じって本アルバムがあった。

本アルバムはスウェーデン盤を日本で再編集したものらしい。スウェーデンのミュージシャンの演奏を集めたオムニバス盤である。

   ー ー ー ー ー

リサ・エクダールは日本で一番知られたスウェーデンのジャズ・ヴォーカリストだろう。本アルバムには彼女の演奏が2曲収められている。「The boy next door」と「When did you leave heaven」である。 彼女独特のハイトーンの歌声が楽しめる。

スウィート・ジャズ・トリオも日本では数多くのアルバムが発売されている。コルネット、ギターそしてベースという独特の編成で室内学的なジャズを目指している。本アルバムでは「That old feeling」と「Nearness of you」の2曲が収められている。内「That old feeling」はモニカ・ボーフォスとの共演である。この共演の相乗効果によってすごくスウィンギーな演奏になっている。

「Don't it make my brown eyes blue」は日本語の題名は「瞳のささやき」。クリスタル・ゲイルのヒットナンバーである。クラエス・ヤンソンは男性ヴォーカリストである。軽くてノリの良い歌声である。

「Corcovade」と「Nature boy」はボサノヴァとジャズのスタンダード・ナンバーである。演奏はトロンボーン奏者のニルス・ラングレン。「Nature boy」ではトロンボーンに加えてヴォーカルもやっている。

マリー・バーグマンとボブ・マニングはそれぞれ女性と男性のヴォーカリスト。それぞれ味のある演奏。「Born to be blue」のバックのテナーサックスはスウィングしまくっている。

バリトンサックス奏者グンナール・ベリィステーンの「Somewhere」もいい。バリトンサックスというと野太い音を連想するが、本曲で聴くその音色はどこまでもソフトだ。聴くものを包み込むような包容力を感じる。

最後の曲「Sa skimrande var aldrig havet 」は英語では「The Sea Was Never So Shimmering」というらしいが、この曲を聴くと何か懐かしいものを感じる。さらにベーント・ローゼングレンのテナーサックスが伸びやかに鳴り響き、心がゆったりとほぐれていく。この曲はスウェーデンの国民的な作曲家Evert Taube (エバート・トゥーべ)が作曲した。日本語訳ではなんという名前なのか検索したがどこにも出ていなかった。

   ー ー ー ー ー

ジャズの本場はアメリカというが、今では本場とか本場でないとかは関係ない。ヨーロッパでも日本でもジャズは存在する。音楽に国境はなく、良い演奏と悪い演奏しかないのではないか。

本アルバムはオムニバス盤ということで様々な演奏家の演奏が収められていて、1曲ごとに聴きどころが違っていて面白かった。


   ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

  1. The boy next door / Lisa Ekdahl & Peter Nordahr Trio
  2. That old feeling / Monica Borrfors & Sweet Jazz Trio
  3. Don't it make my brown eyes blue / Claes Jansson
  4. Corcovade / Niles Landgren
  5. You don't know what love is / Marie Bergman
  6. Born to be blue / Bobb Manning
  7. Nearness of you / Sweet Jazz Trio
  8. When did you leave heaven / Lisa Ekdahl & Peter Nordahr Trio
  9. Whitchcraft / Rune Carlson
  10. Somewhere / Gunnar Bergsten
  11. Nature boy / Niles Landgren
  12. Sa skimrande var aldrig havet / Bernt Rosengren Octet
   (2024.1.2)

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