ネイティブ・サン / クリフォード・ブラウン / アール・クルー / チャールズ・ミンガス / ハンプトン・ホーズ / チック・コリア / ジョン・コルトレーン / リー・コニッツ / シェリー・マン / ジャッキー・テラソン / キース・ジャレット / ラムゼイ・ルイス |
--- クリフォード・ブラウン --- | |||
JAZZ IMMORTAL / 同裏面 |
1面の「タイニー・ケイパーズ」。クリフォード・ブラウンのトランペット・ソロから始まる。全員が交互に主題のメロディを繰り返す。 「ゴーン・ウィズ・ザ・ウインド」。ズート・シムズのテナーサックス・ソロから始まる。それにクリフォードのきらびやかなトランペットがからんでいく。 「ファインダーズ・キーパーズ」。ホーンセクションの合奏から始まる。クリフォードのトランペット・ソロに移ると曲に艶が増したように聞こえてくる。 「ブルーベリー・ヒル」。突き刺さるようなトランペット・ソロが印象に残る演奏である。 2面の「ジョイ・スプリング」。全員によるテーマの合奏から始まり、クリフォード(tp)、ボブ・ゴードン(bs)の順でソロを取り、再び全員による合奏へ戻っていく。 「ボーンズ・フォー・ジョーンズ」。クリフォードの自由自在なトランペットサウンドが楽しめる。 「ボーンズ・フオー・ズート」。ズート・シムズに捧げられた曲。作曲はピアノのラス・フリーマン。ピアノ、ドラムス、ベースにズート・シムズのテナーサックスを加えたカルテットによる演奏である。この編成だと落ち着いたフォービートのジャズになる。 「ダホー」。フル編成による演奏。クリフォードが加わるとモダンジャズから一歩踏み出た音楽になる。
1954年 録音。 (2022.11.4) |
--- アール・クルー --- | |||
TWO OF A KIND TWO OF A KIND(裏面) TWO OF A KIND(中面) |
エレクトリック・ピアノのボブ・ジェームズとアコースティック・ギターのアール・クルーが組んだアルバムである。 「THE FALCON」。ボブ・ジェームズのキー・ボードがアコースティック・ピアノのように響く。跳ねるようなアール・クルーのギターが絡んでくる。ハーヴィー・メイソンのバス・ドラムが効果的にバッキングをする。 1982年、アール・クルー29才、絶好調の時のフュージョン音楽である。80年代のフュージョン界の代表的なミュージシャンがアール・クルーとボブ・ジェームズである。 「WHIPLASH」。キー・ボードとアコースティック・ギターの間にサミー・フィケガロアのパーカッションが絡んでくる。体が踊り出すようなリズミカルな音楽である。 「SANDSTORM」。腹に響くバス・ドラムとアコースティック・ギターの強靭な弦の音が心地よい。時にはギターのメロディが演歌を奏でているように聞こえる。 「WHERE I WANDER」。アコースティック・ギターの音色が素晴らしい。カラッと晴れた青空のようだ。音楽を楽しむために一点の曇りもない演奏である。 「INGENUE」。キーボードとアコースティックなベースとギターが対話をしているような内省的な曲である。フュージョンとはいってもダンス音楽のような曲ばかりでもない。 「WES」。タイトルはギターの名手「WES・MONTGOMERY」のファースト・ネームからとっている。アール・クルーのアコースティック・ギターがフューチュアされている。大先輩に捧げた曲である。
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--- チャールズ・ミンガス --- | |||||
CHARLES MINGUS AND FRIENDS IN CONCERT 同裏面 |
「CHARLES MINGUS AND FRIENDS IN CONCERT」(チャールズ・ミンガスと仲間たち)という題名のコンサートである。ジャズの歴史の中で独自の道をいくチャールズ・ミンガスによるビッグバンドのコンサートの実況録音盤である。ミンガスの音楽は時にはジャズになり、時には現代音楽風になる。ひとつの枠には納まらない。 Side I 。「Honeysuckle Rose」。全員による演奏。ジャムセッション風というか、思い思いに音を出している感じ。 「Jump Monk」。ビル・コスビーのMCによるチャールズ・ミンガスの紹介のあと、演奏に入る。イキの良いブラス・セクションによる咆哮。全体を支えるベースとドラムスのリズムセクション。ビッグバンドらしい演奏である。ロニー・ヒリヤーのトランペットがきらびやかに響く。 「Mingus Blues」。ミンガスの唸るようなウッドベース・ソロに続いてジーン・アモンズのブルージーなテナーサックスが絡んでいく。 Side II 。「Us Is Two」。典型的なビッグバンドの演奏である。全員によるテーマに続いて、リー・コニッツ(as)、ロニー・ヒリヤー(tp)、ジーン・アモンズ(ts)、ジェリー・マリガン(bs)がソロを取る。 「E's Flat, Ah's Flat Too」。ミンガスの強力なベース・ソロから始まる。ジーン・アモンズ(ts)、ジェイムズ・ムーディ(fl)、ボビー・ジョーンズ(ts)と続いてソロを取る。続いてランディ・ウエストンのピアノがノリに乗った演奏を繰り広げる。ジョー・チェンバースのドラムスが良いアクセントになっている。現代的なビッグバンド・ジャズである。 「Eclipse」。この題名は辞書を引いても出てこない。チャールズ・ミンガスによる造語か。ハニー・ゴードンによる前衛的なヴォーカル。 Side III 。「Little Royal Suite」。ビッグバンド・ジャズというより集団音楽という感じの曲である。フォー・ビートの流麗な曲というよりもゴツゴツした感じ、管楽器のそれぞれが主張し合い、ディベートするかのように進んでいく。ジョン・ファディスのトランペット、ジーン・アモンズのテナーサックス、リー・コニッツのアルトサックスがソロを取り合うが、それを取り囲むボビー・ジョーンズのテナーサックス、ジェリー・マリガンのバリトンサックス、チャールズ・マクファーソンのアルトサックスも負けてはいない。まさに集団音楽である。 「Ool-Ya-Koo」。デイジー・ガレスピーのスキャットによる演奏である。デイジー・ガレスピーは本業のトランペットではなく、スキャットのみの参加である。「ウーー、ヤッ」「ウーー、ヤッ」と繰り返すスキャットが印象的である。 Side IV 。「E.S.P.」。テーマに続いてリー・コニッツのアルトサックスがソロを取る。強力なリズムセクションに乗ってロニー・ヒリヤー(tp)とジーン・アモンズ(ts)とジェリー・マリガン(bs)が交互にソロを取る。原曲はウェイン・ショーター作曲か。Sy・ジョンソンがビッグバンド向けにアレンジしている。 「Ecclusiastics」。この題名は辞書を引いても出てこない。チャールズ・ミンガスによる造語か。MCがスペルを一語ずつ発音しているところをみるときっと観客にも理解できない言葉なんだろう。ジーン・アモンズのテナーサックスがソロを取る。大声援で終演となる。 レコードのSide I の裏がSide IV、Side II の裏がSide IIIになっている。2台のレコードプレイヤーを使うと切れ目なく再生できるという仕組みか。
1972年2月4日、ニューヨーク・フィルハーモニックホールにて録音。 (2023.9.4) |
--- ハンプトン・ホーズ --- | |||
HAMPTON HAWES TRIO |
ガーシュイン作曲の「アイ・ガット・リズム」、コール・ポーター作曲の「恋とはどんなものかしら」「ソー・イン・ラヴ」は有名なスタンダード曲。ハンプトン・ホーズ(ピアノ)、レッド・ミッチェル(ベース)、チャック・トンプソン(ドラムス)のトリオで軽快に演奏する。 なかでも「ソー・イン・ラヴ」は1967年から1999年まで放送された「日曜洋画劇場のエンディングテーマ」として有名である。筆者は数々の名画をこの番組で見た。淀川長治の解説でも有名。淀川氏は89才で死去するまで約32年間にわたり解説をつとめた。原曲は1948年のミュージカル「キス・ミー・ケイト」の劇中歌として作曲された。 「ブルース・ザ・モスト」と「フィーリン・ファイン」はハンプトン・ホーズ作曲の曲。ホーズは典型的なフォー・ビートの曲をメリハリを効かせて演奏する。 「ハンプス・ブルース」もハンプトン・ホーズ作曲の曲。一度聞いたら耳について離れなくなるメロディである。 「イージー・リヴィング」と「オール・ザ・シングズ・ユー・アー」はエラもダイナもハートマンもノラもマイルスもクリフォードもコニッツもウッズもデクスターもキャノンボールも演奏している名曲。そしてホーズも。心地よいフォー・ビートのリズムを楽しむにはもってこいの演奏。 「ジーズ・フーリッシュ・シングズ」はレッド・ミッチェルの濃いベース・ソロから始まる。ピアノを伴奏にしてベースが歌いまくる。 「キャリオカ」。ジェローム・カーン作曲の軽快な曲をピアノ・トリオは陽気に歌う。 じっくり聞けばそれだけのものを与えてくれるし、何かのついでに聞き流しても良い。ハンプトン・ホーズ・トリオは重くも軽くも聴ける懐の深さを持っている。
1955年6月28日、録音。 (2023.8.3) |
--- チック・コリア --- | |||
THE MAD HATTER 同裏面 TWEEDLE DEE TWEEDLE DUM TWEEDLE DUM & ALICE HUMPTY DUMPTY |
ジャズのアルバムとしては珍しいテーマ・ミュージックの作りになっている。テーマは「不思議の国のアリス」である。 「THE WOODS」。チック・コリアのシンセサイザーで森の中の幻想的な情景が描かれる。 「TWEEDLE DEE」。トゥイードルディーとトゥイードルダムはマザー・グースに出てくる兄弟。兄弟らしき二人の人物がおもちゃのがらがらをめぐって争うという滑稽な内容の短い歌で、今日でも「トゥイードルダムとトゥイードルディー」は互いに相争いながらも実際にはよく似ている二人の人物を指す言葉として用いられている。 ストリングスが入り、さらに幻想的な雰囲気になる。 「THE TRIAL」。ストリングスと女性ヴォーカルが入り、不思議な雰囲気の音楽になる。 「HUMPTY DUMPTY」。ハンプティ・ダンプティもマザー・グースに出てくる兄弟。たまごの形をしている。 ここではピアノ・トリオにジョー・ファレルのテナーサックスが加わり、モダンジャズの演奏となる。チック・コリアのピアノとエディ・ゴメスのベースのやりとりが軽快である。 「PRELUDE TO FALLING ALICE」「FALLING ALICE」。ストリングスと女性ヴォーカルが入り、チック・コリアのエレクトリック・ピアノとともに幻想的な音楽を形作っている。ジョー・ファレルのテナーサックスが入るとジャズ風になる。 「TWEEDLE DUM」。ストリングスと女性ヴォーカルが入ると幻想的な音楽になる。ジャミー・ファウンドのベース・ソロがトゥイードルダムが歩いていく様子を表現しているように聴こえる。 「DEAR ALICE」。チック・コリア(pf)、スティーブ・ガッド(ds)、エディ・ゴメス(b)の心地よいジャズが続く。ストリングスとブラス・セクションも入って快調に進んでいく。 「THE MAD HATTER RHAPSODY」。上記のピアノ・トリオにハービー・ハンコックのエレクトリック・ピアノ、ジョー・ファレルのフルート、さらにストリングスと女性ヴォーカルが入り、エイト・ビートの音楽が快調に進んでいく。
1977年11月、ロサンジェルスにて録音。 (2023.7.5) |
--- ジョン・コルトレーン --- | |||
至上の愛 至上の愛(中扉) |
ジョン・コルトレーンの名作「至上の愛 (A Love Supreme)」である。 本作に限っては「ラブ・サプリーム」というより「至上の愛」と言わなければならない。そのくらいコルトレーンの代名詞になっている作品である。 「PART I 承認」の最後にコルトレーンのテナーサックスが「A Love Supreme」と繰り返す。続いて男性コーラスが「A Love Supreme」と繰り返しながらフェードアウトする。 「PART II 決意」はイントロの印象的なテーマをコルトレーンのテナーサックスが繰り返しながら変容していく。途中マッコイ・タイナー(pf)の長いソロ演奏が入るほかはコルトレーンの独壇場である。ジミー・ギャリソン(b)、エルヴィンジョーンズ(ds)のリズムセクションは目立つことなくバッキングに徹している。 何十年ぶりに「至上の愛」を聴いてみようかな、と思ったのは、流しっぱなしにしていたラジオからこの曲が流れているのを聞いたからである。これは何度聴いても良い曲だ。 「PART III 追求」と「PART IV 賛美」は続いて演奏されている。どこが曲の分かれ目かよくわからない。 本パートはドラム・ソロから始まる。続いてテナーサックスが短めに「PART II 決意」のテーマが変容したような印象的なテーマを吹く。ピアノ、テナーサックス、ベースがそれぞれソロパートを演奏し、最後にコルトレーンが祈るようなメロディを吹く。バックのリズムセクションはテナーの後を忠実にバッキングする。スティックではなく、マレットで叩くドラムスが呪術的な印象を高めている。
1964年12月9日 ニューヨークで録音。 (2023.6.3) |
--- リー・コニッツ --- | |||
HIGH JINGO 同裏面 |
針を落とすとたちまちディープなジャズの世界に引き込まれる。本作はアート・ペッパー、リー・コニッツによるダブル-アルト・サックスである。 左からアート・ペッパー独特の癖のあるサキソフォンの音、中央近くからリー・コニッツの素直なサキソフォンの音が聞こえる。低音部を支えるのはボブ・マグナッスンの迫力のあるウッド・ベース。ピアノとドラムスは軽めにサポートする感じ。 A面はガーシュウィンのスタンダード・ナンバー「スワンダフル」、ポール・チェンバースのオリジナル「ウィムズ・オブ・チェンバース」、リー・コニッツのオリジナル「ア・マイナー・ブルース・イン・F」と続く。分厚いベースの音が夜の雰囲気を醸し出す。 B面はすべてスタンダード・ナンバーである。 軽快なピアノから始まる「ディス・キャント・ビー・ラブ」。ピアノとリー・コニッツのアルト・サックスのデュオで始まる「シャドー・オブ・ユア・スマイル」。アート・ペッパーとリー・コニッツのアルト・サックスのデュオで始まる「アニヴァーサリー・ソング」。そしてアップ・テンポの「チェロキー」。 それぞれ聴きどころ満載であるが、B面ではピアノとドラムスが活躍する。マイク・ラングのピアノは軽く跳ねるようで、あらためてピアノはリズム楽器だったんだ、と認識させられた。 アルバム最後の曲「チェロキー」ではアート・ペッパーとリー・コニッツのアドリブ合戦が繰り広げられる。変幻自在なアートとオーソドックスなリーの演奏はその息遣いが伝わってくるほど生々しい。
1982年1月18日〜19日 SAGE & SOUND, HOLLYWOOD CALIFORNIAにて録音。 (2022.5.4) |
--- シェリー・マン --- | |||
HOLLYWOOD JAM 同裏面 |
軽快な「JUST FRIENDS」から始まる。最も軽快なドラマー、シェリー・マンのリーダーアルバムにふさわしい曲である。軽快なドラムスのバックアップに乗ってメンバーそれぞれが軽快に演奏していく。トロンボーン、テナー・サックス、アルト・サックス、ピアノ、ベースと続き、ドラムスで締めくくる。力まないドラムスは心地よい。 2曲目は「THESE FOOLISH THINGS」。1930年代のミュージカルの主題歌である。これもジャズのスタンダード・ナンバーになっている。アート・ペッパーのアルト・サックスが艶やかに、しっとりと歌い上げる。 3曲目の「HOLLYWOOD JAM BLUES」はこのセッションのために作られた曲。アルバムのタイトルにふさわしく、乾いた空気の中で自由に演奏していく。ボブ・クーパーのテナー・サックスがブルース・コードを歌いあげる。いかにもモダン・ジャズという曲だ。アート・ペッパーのアルト・サックス、ビル・ワトラスのトロンボーンと続いていく。バッキングのピアノとドラムスの音が心地よい。 B面1曲目の「LOVER COME BACK TO ME」も有名なスタンダード・ナンバーである。1928年のミュージカルの主題歌である。全体的にアップテンポで演奏している。アート・ペッパーが快調である。 「LIMEHOUS BLUES」と「I'M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU」はいずれも1930年代のポピュラー・ソングである。アルト、テナーのサキソフォンの音色が心地よい。 前面には出ないが、よく聴いてみるとバックで着実かつ軽快にサポートしているのがシェリー・マンである。すがすがしいドラマーである。 1981年5月4 日 カリフォルニア州ハリウッド、Sage & Soundで録音。
1977年6月 トーンスタジオ、Ludwigsbergでの録音。 (2023.4.1) |
--- ジャッキー・テラソン --- | ||
SMILE(CD) SMILE裏面 |
以前なんとなく購入したCDである。どうしてこれを購入したか、覚えていない。そのころ澤野工房のCDにはまっていて、よくピアノ・トリオを聴いていたせいかもしれない。 ジャッキー・テラソンというピアニストは当時も今も馴染みがない。澤野工房のCDは全て馴染みがないので、そういうCDを買うのにためらいはなかったのだろう。いわゆるジャケ買いである。 ジャズの場合、ジャケ買いが成功する確率が高い。評論家はじめ、ジャズ・ファンのなかにはそう思っている人は多い。 このCDは澤野工房ではなく、ブルー・ノートから出ている。それだけでこのピアニストはすでにメジャーな存在であることがわかる。 購入後一聴して、これは口当たりは良いが平凡なピアニストだな、と思った。選曲もチャップリンの「スマイル」とか、スティービー・ワンダーの「イズント・シー・ラヴリー」とか、スタンダード・ナンバーの定番「枯葉」とか、口当たりが良く平凡な曲が並んでいる。 このCDを見直したのはごく最近、澤野工房のCDをまとめて聴き直していた時、ついでのように聴いた時である。かけ流していて、「ISN'T SHE LOVELY? (イズント・シー・ラヴリー?)」が流れた時、おやっと思った。よく知っている曲だがしゃれた編曲だな、と思った。 それから一曲ずつ集中して聴いてみるとどれも良い。「スマイル」とか「枯葉」とかも新しい曲を聴いたような気がした。編曲がしゃれているのだ。 ネットの書き込みを見ていたら、筆者以外にもこのCDのファンがいた。このひとは「LE JARDIN D'HIVER (こもれびの庭に)」を聴いて「一聴で久々恋に落ちた。かなりのスローテンポで弾き語るトリオ演奏は、元々の原曲の美しいメロディーをより一層輝かせて珠玉の一品に仕上げている」と書いている。 さらに「これ一曲で買いだ。他に「パリの空の下」、「枯葉」等々シャンソンの名曲が並ぶが、「Jardin D'hiver」には及ばない」と書いてある。相当なものだ。本曲はいろいろな歌手が歌っているが、日本では石丸幹二が訳詩して自分で歌っている。 No.12はフローベールの小説「感情教育」と同じタイトルの曲、「L'EDUCATION SENTIMENTALE」。ドラムスとピアノの偶然の出会いのような出だしからスタートする。インド音楽のような編曲だが、元はフランスのシンガーソングライター・マキシム (Maxime le Forestier)の曲でシャンソン風、本人の歌もなかなか良い。 ネットで見るとジャッキー・テラソンというピアニストは、「ドイツ・ベルリン出身でフランス人の母、アメリカ人の父を持つ」となっている。「パリの空の下」「枯葉」「こもれびの庭に」「感情教育」のように、フランスの歌曲が多く採り上げられているのはそのためだろう。 ジャッキー・テラソンが作った曲は「59」と「何もなかったかのように」である。いずれもスロー・バラードもしくはシャンソン風の曲である。 このトリオのメンバーはジャッキー・テラソン : ピアノ、ショーン・スミス : ベース、エリック・ハーランド : ドラムスという面々である。ショーン・スミスのベースが要所要所で効いている。
録音データ なし。 (2023.3.3) |
--- キース・ジャレット --- | |||
SOLO,DUO,TRIO AND QUINTET ON IMPULS 同裏面 | インパルスの数枚のアルバム(宝島、生と死の幻想、大いなる幻影、青の漂泊等)から抜粋したオムニバス・アルバムである。 Side 1の「BOP-BE」はBe-Bopの語呂合わせか。典型的なフォー・ビートの曲をピアノ・トリオで軽快に演奏する。キース・ジャレットにはピアノ・トリオが一番似合う。 「RAINBOW」もピアノ・トリオの作品。ドラムスが奥に引っ込んで、ピアノとベースのデュオのように聴こえる。 「BLACKBERRY WINTER」、ピアノ・トリオ作品であるが、ほとんどキースのピアノ・ソロのようになっている。透明で力強いキースのピアノの良さが滲み出ている。 「BYABLUE」、キースのピアノ・ソロ作品。BYABLUEは英和辞書には載っていないが青の漂泊と訳すらしい。 「PRAYER」はベースのチャーリー・ヘイデンとのデュオである。スラブ系の民謡のような曲想で、キース・ジャレットの繊細なピアノとヘイデンの力強いベースの対話が延々と続く。 「ROADS TRAVELED, ROADS VEILED」はクインテットの演奏。キース・ジャレットーピアノ、チャーリー・ヘイデンーベース、ポール・モチアンードラムス、デューイ・レッドマンーテナーサックスの4人にキース・ジャレットのソプラノサックスが入っている。ここではポール・モチアンのドラムスとキース・ジャレットのソプラノサックスのやり取りがフィーチュアされる。キースのソプラノサックスは初めて聴くが達者なものである。
1973年, 74年 録音。 (2023.2.2) |
--- ラムゼイ・ルイス --- | |||||||
【CDに採り上げられた LEM WINCHESTER and DOWN TO EARTH STRETCHING OUT RAMSEY LEWIS TRIO NEVER ON SUNDAY COUNTRY MEETS RAMSEY LEWIS AND HIS RAMSEY LEWIS AND HIS THE COLORFUL STRINGS AN HOUR WITH THE EARLY IN THE MORNING SOUND OF CHRISTMAS BOSSA NOVA (画像不明 :" The Sound of Spring " " more music from the soil " " MAX " ) |
突然ラムゼイ・ルイスに目覚めてしまった。 行きつけのブックオフのCDコーナーの棚に「RAMSEY LEWIS」「RAMSEY LEWIS VOL.2」というやけに分厚いCDジャケットが置いてあった。2枚組にしては厚すぎる、と確認したらなんと4枚組であった。1枚のCDにLPアルバム2枚分の曲が入っている。合計8枚のLPアルバム相当のCDが900円、LP1枚で100円ちょっとという計算になる。 ラムゼイ・ルイスは「DOWN TO EARTH」というLPを持っていて、スイング感に満ちた軽めのジャズという印象があった。LP8枚900円ならいいかな、とひとまず「RAMSEY LEWIS」を購入した。 持ち帰って聴いてみたらこれが良い。デジタル・リマスターと書いてあるからマスターテープからCDに録音し直したものだろう。音がすごく良い。音が良いと音楽の細部が明確に聴こえる。あれよあれよと4枚のCDを聴いてしまい、翌日「RAMSEY LEWIS VOL.2」を買いに行った。 ー ー ー ー ー 40年ほど前、長野県松本市である商社の課長さんと夜居酒屋に飲みに行った。どういうきっかけだったか忘れたがジャズの話になった。課長さんは「マイルスとかコルトレーンも良いけど、疲れて帰宅した後、お酒を飲みながらゆっくり聴くにはラムゼイ・ルイスがいいなあ」と言った。筆者はジャズ奏者の名前はオスカー・ピーターソンとかマイルス・デイヴィスくらいしか知らなかったから、ただ聞いているばかりであった。そのうちにラムゼイ・ルイスも聞いてみようと思った。 何年かのちにラムゼイ・ルイスの「DOWN TO EARTH」を聴いて、マイルスとかコルトレーンに比べるとずいぶん肩の力の抜けたゆるいジャズだなあ、と思った。 曲の中に独特のスイング感と洒落っ気とユーモアがあることに気がついたのが古希になってからというのだから、こちらもいいかげんなものである。 ラムゼイ・ルイスは生涯で83種類のアルパムを出した。マイルス・デイヴィスの全アルバムの種類が80余であるから、彼がいかに世界中のファンに支持されていたかがわかる。当時30代後半くらいと思われた商社の課長さんはかなりジャズがわかるひとだったのだ。 ー ー ー ー ー エル=ディー・ヤング(El Dee Young) のベースとアイザック・"レッド"・ホルト(Issac "Red" Holt) のドラムスとラムゼイ・ルイスのピアノで1956年に結成し、1966年にヤングとホルトが脱退するまで約10年間、トリオで活動した。このトリオによるライブ・アルバム「ジ・イン・クラウド (The In Crowd)」は、第8回グラミー賞(1966年)で最優秀インストゥルメンタル・ジャズ・パフォーマンス賞を受賞した。シングル「ジ・イン・クラウド」もビルボード・Hot 100で5位、R&Bチャートで2位を記録した。 本CDの曲の大部分はこのトリオによる演奏である。モダンジャズばかりでなく、スイングジャズやクラシック音楽も収録されているが、トリオのアンサンブルはどれも素晴らしい。ピアノばかりでなく、ベースやドラムスの音もはっきり録音されているので、演奏者それぞれの演奏の意図がよくわかって楽しい。 エル=ディー・ヤングというベーシストはメインストリームにはでてこないが、素晴らしいベーシストである。力強くアーシーなベースがトリオをしっかり支えているのがわかる。ソロも素晴らしい。 LP16枚中ラムゼイ・ルイスがリーダーになっていないアルバムが3枚ある。「LEM WINCHESTER and the RAMSEY LEWIS TRIO」と「THE COLORFUL STRINGS OF JIMMY WOODE」と「MAX(With Max Roach)」である。 「LEM WINCHESTER and the RAMSEY LEWIS TRIO」は32才で早逝したヴィブラフォン奏者・レム・ウィンチェスターとの共演盤である。重厚なミルト・ジャクソン、スウィンギーなライオネル・ハンプトンに比べ、レム・ウィンチェスターは軽快そのものである。軽妙洒脱なラムゼイ・ルイスとは相性が良い。 「MAX(With Max Roach)」は完全にマックス・ローチがリーダーになっている。ドラムスにマックス・ローチ、トランペットにケニー・ドーハム、テナーサックスにハンク・モブレイというメンバーではラムゼイ・ルイスも肩に力が入るだろう。他のアルバムと比べておりめ正しく演奏している。 「EARLY IN THE MORNING」では女性ヴォーカルのロレツ・アレキサンドリア(Lorez Alexandria) をゲストに迎えている。彼女は1957年にデビューし、36年間の活動期間中に20枚のアルバムを残した。「20世紀において、才能があるのに過小評価されている歌手の1人」と言われている。 奇を衒わないオーソドックスな歌い方で、耳にすんなり入ってくる。「DON'T EXPLAIN」は「ニューヨークのため息」といわれたヘレン・メリルの歌唱が有名だが、それとは一味違う歌い方で、どちらかといえばこちらの方が正統派のジャズヴォーカルであろう。このアルバムではラムゼイ・ルイスは脇役に徹している。ラムゼイ・ルイス・トリオのほかフレディ・グリーンがギターで、フランク・フォスターがテナーサックスで、アル・グレイがトロンボーンで参加している。聴いているとニューヨークのジャズクラブにいるような気分になる。 「BOSSA NOVA」ではギターとパーカッションにジョゼフ・パウロ、ヴォーカルにカーメン・コスタを招いて共演している。カーメン・コスタはブラジル出身の歌手。1920年にリオ・デ・ジャネイロのTrajano de Moraesで生まれ、18才から歌手として活動を始めた。2007年、86才で リオ・デ・ジャネイロのLourenco Jorge Hospitalで亡くなっている。ジョゼフ・パウロのデータはどこにもない。本アルバムではパーカッションとギターを担当している。歌手としては「CARA DE PALHACO」を1曲だけ歌っている。軽くて伸びのある聴きやすい歌声である。 ー ー ー ー ー ラムゼイ・ルイスは1974年にかつてのメンバー(ドラムス担当) にして弟子でもあるモーリス・ホワイトをプロデューサーに迎え、「太陽の女神」を発表。グラミー賞を受賞した。その後モーリス・ホワイトはファンクミュージック・バンド・アース・ウィンド・アンド・ファイアー(Earth, Wind & Fire)を立ち上げ、グラミー賞を6回受賞し、世界でのCD・レコード総売上は9000万枚以上を記録し、2000年にロックの殿堂入りを果たした。 ラムゼイ・ルイスは1950年代から活躍していたピアニストなので昔のジャズ奏者という印象を持っていたが、アース・ウィンド・アンド・ファイアーの母体を生み出し、マイルスとは別の方向から現代の音楽環境に影響を与えている。彼は2006年頃まで現役で活動していて、昨年(2022年) 9月12日シカゴの自宅で亡くなった。87才だった。 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ーーー アルバム名と曲目 ーーー
(2023.1.2) |