カウント・ベイシー / フリージャズ大祭 インスピレーション&パワー14 / 秋吉敏子 / クリフォード・ブラウン / アート・ペッパー / アール・クルー / マイルス・デイヴィス / ジョン・コルトレーン / 山下洋輔 / アート・ブレイキー / チャーリー・ヘイデン / ダニー・リッチモンド |
---フリージャズ大祭 インスピレーション&パワー14--- | |||||
フリージャズ大祭 インスピレーション&パワー14 同裏面 同中面 同中面全部 |
フリー・ジャズ全盛期の1973年夏、アートシアター新宿文化劇場で14日間にわたってフリー・ジャズのコンサートが開催された。 《 《インランド・フィッシュ》 ----- 吉沢元治ベース・ソロ。吉沢元治による弓弾きによるベース・ソロである。弓弾きでは不協和音が可能である。観客を不安な気持ちにさせておいて、深い音色の指弾き奏法で終わる。 《オクトーバー・リヴオリューション》 ----- 沖至クインテット。沖至の咆哮のようなトランペットの音にかぶさるようにして高木元輝のソプラノ・サックが吠える。乱れ打ちのようなパーカッションがそれらを包み込む。フリー・ジャズの醍醐味だ。こういう演奏はライブで直に聴かなければならない。 《イントロダクション〜C de F》 ----- ナウ・ミュージック・アンサンブル。詩の朗読というより、詩の絶叫から始まり、ピアノ、アルト・サックス、トランペットがドレミファソラシドを繰り返す。繰り返すうちに音程が乱れていく。次第に音がメチャクチャになって終わる。これはレコードで聴いても面白くない。実地で聴かなければ。 《レミレス》 ----- 冨樫雅彦+佐藤允彦デュオ。冨樫雅彦と佐藤允彦のデュエットは二人が10代のころから一緒にやっているのと、もともと息があうのだろう、二人が一人でやっているように感じる。冨樫のパーカッションの音色と佐藤のピアノの音色は澄んでいて的確だ。対話のような、またはつぶやきのような音楽である。 《集団投射》 ----- ニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ。高柳昌行のギターと井野信義のチェロの音は山崎弘とジョー・水木のパーカッションの音にかき消されてほとんど聞き取れない。まるで騒音だ。こういうのを聞かされた観客は今後フリー・ジャズに近寄らなくなるのでは。 《フェイズ 13》 《クレイ》
1973年6月30日〜7月11日、アートシアター新宿文化劇場にて録音。 (2021.11.2) |
---秋吉敏子--- | |||
TOSHIKO AT TOP OF 同裏面 |
秋吉敏子が当時のホーム・グランドであるニューヨークのジャズ・クラブ「トップ・オヴ・ザ・ゲイト」で録音したアルバムである。 渡米22年目のライブ・アルバムである。 SIDE-A、1曲目の「OPUS NO.ZERO」は秋吉さんがこのステージのために作曲した曲。その後ビッグ・バンドのためにアレンジして演奏している。印象的なメロディのテーマをワン・コーラス演奏すると、各演奏者のアドリブに入り、元メロディは聴こえなくなる。秋吉さんのピアノ・ソロ、ケニー・ドーハム のトランペット・ソロが素晴らしい。 2曲目の「THE FIRSTNIGHT」も秋吉さんによる作曲。ルー・タバキンのフルート・ソロがこの「出会い」というやさしげな曲にふさわしく響いている。 「PHRYGIAN WATERFALL」は秋吉さんのアーシーなピアノ・ソロから始まる。ピアノの低音部が土俗的な民族音楽風に聴こえる。 「LET'S ROLL IN SAKE」は「酒のめ、のめ」と訳されている。日本の祭りのメロディのように聴こえる。アップ・テンポの調子の良い曲。ケニー・ドーハム のトランペット、ルー・タバキンのテナーサックスが素晴らしい。 SIDE-Bの1曲目は「HOW INSENSITIVE」。アントニオ・カルロス・ジョビンの曲である。ルー・タバキンのフルートが効いている。 2曲目は「MORNING OF THE CARNIVAL」。映画音楽「黒いオルフェ」である。名曲中の名曲である。ルー・タバキンのダーティなテナーサックスの後、ケニー・ドーハム の透明なトランペットの音が素晴らしい。 3曲目の「THE NIGHT SONG」は1964年のミュージカル「ゴールデン・ボーイ」の主題歌。ルー・タバキンのテナーサックスと秋吉さんのピアノのからみが聴きどころ。ルー・タバキンは原曲のメロディを崩しまくる。 4曲目の「WILLOW WEEP FOR ME」。「柳よ泣いておくれ」は、1932年にアン・ロネルが作詞・作曲したポピュラー音楽である。聴けば誰でも知っている曲をロン・カーターがベース・ソロで演奏する。 5曲目の「MY ELEGY」は秋吉さんが最初に渡米した1956年に作った曲。最後にふさわしい華やかな曲。メンバーのそれぞれが個性的なアドリブ・ソロを聴かせる。 曲の合間にパラパラと拍手が聞こえる。いっとき、ニューヨークの夜のジャズ・クラブに居る気分が味わえる。 メンバーは秋吉敏子(ピアノ, アレンジ)、 ケニー・ドーハム (トランペット)、 ルー・タバキン (テナーサックス、 フルート)、 ロン・カーター (ベース)、 ミッキー・ローカー (ドラムス)。
1968年7月30日、ニューヨークの「トップ・オヴ・ザ・ゲイト」にて録音。 (2021.10.8) |
---クリフォード・ブラウン--- | |||
Clifford Brown with Strings 同裏面 |
クリフォード・ブラウンがニール・へフティ率いるストリングス楽団と共演したアルバムである。 ホーン楽器とストリングスは相性がいいんだろうか、チャーリー・パーカーにもストリングスと共演したアルバムがある。柔らかいストリングスの中でホーンの鋭い音が映えるのは確かである。 Side 1、1曲目の「Yesterdays」はジャズのスタンダードナンバーである。原曲は1933年のミュージカル「ロバータ」のためにジェローム・カーンが作曲した。「ロバータ」というミュージカルは知らなくてもこの曲を知らない人はいないだろう。流麗なストリングスのメロディのイントロに乗って現れるブラウンのトランペットは鮮烈である。 2曲目の「Laura」も今ではスタンダードナンバーになっている。原曲は1944年の映画「ローラ殺人事件」(オットー・プレミンジャー監督)のテーマ曲「ローラ」である。作曲はデイヴィッド・ラクシン。 以下「What's New」」「Blue Moon」「Can't Help Lovin' Dat Man」「Embraceable You」とジャズのスタンダードナンバーが続く。流麗、優雅なストリングスをバックにブラウンが気持ちよく吹いている。 Side 2の1曲目は「Willow Weep for Me」。「柳よ泣いておくれ」は、1932年にアン・ロネルが作詞・作曲したポピュラー音楽である。聴けば誰でも知っている曲である。 2曲目は「Memories of You」。「メモリーズ・オブ・ユー」ユービー・ブレイク作曲による、1930年にブロードウェイのショー「Lew Leslie's Blackbirds of 1930」の中でミント・カトーが歌った。ポピュラー音楽の名曲である。 3曲目の「Smoke Gets in Your Eyes」はお馴染みの「煙が目にしみる」。泣きたくなるような名曲である。ブラウンのトランペットは聴いている全ての人を涙ぐませるだろう。 4曲目の「Portrait of Jenny」(ジェニイの肖像)は1939年に発行されたロバート・ネイサンの小説を原作とする1948年のアメリカ映画。や。 5曲目の「Where or When」(いつかどこかで)もジャズのスタンダードナンバー。君といると,初めてって気がしないんだ。 いつか,こんな風に見つめ合ってたよね。 いつだったかなぁ? 、という歌詞。 最後の「Stardust」はホーギー・カーマイケルが1927年に発表したジャズのスタンダード・ナンバーである。最後にふさわしい永遠の名曲である。 ウィズ・ストリングスという形式はメインとなるホーンを際立たせるのに適している。部屋全体にトランペットが響き渡り、まるでブラウニーが聴き手に向けて直に演奏しているような錯覚にとらわれる。 メンバーはクリフォード・ブラウン(tp) リッチー・パウエル(p) バリー・ガルブレイス(g) ジョージ・モロウ(b) マックス・ローチ(ds)
1955年1月18〜20日、ニューヨークにて録音。 (2021.9.10) |
---アート・ペッパー--- | |||||
EARLY ART 同裏面 同中面 |
アート・ペッパーの代表作「COLLECTIONS」「THE RETURN OF ART PEPPER」「MODERN ART」の3作品を編集して2枚組にしたお得用アルバムである 全盛期の演奏を集めたものとあってどの演奏も素晴らしい。何よりも勢いがあり、アドリブに迷いがない。特にSide Oneはじめの曲「STRAIGHT LIFE」はアルト・サックスの切れ味が鋭い。アドリブの曲想、スピードはチャーリー・パーカーを彷彿とさせる。 3曲目の「YARDBIRD SUITE」はチャーリー・パーカーの曲だが音色の柔らかさはアート・ペッパー独自のものである。 5曲目の「TENOR BLOOZ」はアルト・サックスをテナーに持ち替えての演奏である。レッド・ノーヴオのヴィブラフォンが効いている。 Side One最後の曲「PEPPER RETURNS」はアート・ペッパーのアルト・サックスとジャック・シェルダンのトランペットのアドリブの掛け合いが凄い。合いの手に入るシェリー・マンのドラムスがスピーディで軽く、独特のユーモアを出している。 Side Twoの2曲目はスタンダード・ナンバーの「YOU GO TO MY HEAD」。ペッパーは歌うようにしっとりとアルト・サックスを鳴らす。ラス・フリーマンのピアノが寄り添うように伴奏する。 4曲目の「FUNNY BLUES」はジャズならではのおかしな(FUNNY)ブルース。 Side Two最後の「MINORITY」、ラス・フリーマンのピアノが微妙に心をくすぐる。マイノリティ、少数派。 Side Three 1曲目の「PATRICIA」、アルト・サックスで静かに歌い上げるブルース・ナンバー。 2曲目は「MAMBO DE LA PINTA」、にぎやかな曲。シェリー・マンの軽くて素早いドラムスはマンボに向いている。 3曲目は「WALKIN' OUT BLUES」、アルト・サックス、トランペット、ピアノ、それぞれの楽器が呟きながら歩いていく。こういう曲を聴くのがモダンジャズの醍醐味である。4曲目「BLUES IN」はそのアンサー曲か。 「WHAT IS THIS THING CALLED LOVE?」(恋とはなんでしょう)は、コール・ポーターが1929年、ミュージカル「ウェイク・アップ・アンド・ドリーム」のために作曲した歌。ジャズの有名なスタンダード・ナンバーである。アート・ペッパーは軽快に吹きまくる。 Side Fourの2曲目「BEWITCHED」はスローでささやくような曲。邦訳も「瞳のささやき」 「WHEN YOU'RE SMILING」「STOMPIN' AT THE SAVOY」はいずれもスタンダード・ナンバー。こういう曲のアドリブはアート・ペッパーの得意中の得意。 1979年7月に芝郵便貯金ホールで演奏した時もノリに乗っていた。 メンバーはジャック・シェルダン(tp) レッド・ノーヴオ(vib.) ラス・フリーマン(pf)、リロイ・ヴィネガー(b) シェリー・マン(ds) ジョー・モレロ(ds) 他
1956年〜1957年、ロスアンジェルスにて録音。 (2021.8.5) |
---アール・クルー--- | |||
Finger Paintings 同裏面 |
アール・クルーといえば、1面1曲目の「DR. MACUMBA」であろう。アコースティック・ギターの力強いタッチで弾く独特のメロディは一度聴いたら耳の奥にこびりついてしまい、演奏が終わってもいつまでも頭の中で鳴り響いている。 2面の「CATHERINE」はギターの音が聴き手を包み込むように優しい曲である。 メンバーはアール・クルー(g) デイヴ・グルーシン(el-p, synth) アンソニー・ジャクソン、ルイス・ジョンソン(el-b) スティーヴ・ガッド(ds) ハーヴィー・メイソン(ds) ラルフ・マクドナルド(per) リー・リトナー(g) 他
1977年2月15日、17日、カリフォルニア州バーバンクにて録音。 (2021.7.4) |
---マイルス・デイヴィス--- | |||||||||||||
WORKIN'(CD) STEAMIN'(CD) RELAXIN'(CD) COOKIN'(CD) |
ジャズのレコードは数々あるが、最終的にはこの4枚を繰り返し聴いていればいいのではないか。1950年代のマイルス・デイヴィスである。 この4枚とは「ワーキン」「スティーミン」「リラクシン」「クッキン」のことで、マイルスがプレスティッジとの間に残された契約を済ませるために、たった2日間で行ったレコーディングのことである。24曲、すべてワンテイクであったといわれる。俗に「マラソン・セッション」と呼ばれている。 マイルスはこの後、1957年にはパリに招かれ、ルイ・マル監督の映画「死刑台のエレベーター」の音楽を制作した。映画のラッシュ・フィルムを見ながら即興演奏で録音したというのが伝説になっている。 1950年代のマイルスはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いであった。
1956年5月11日と同年10月26日 録音。 (2021.6.3) |
---ジョン・コルトレーン--- | |||
EXPRESSION 同中扉面 |
ジョン・コルトレーンが亡くなったのは1967年7月17日で本アルバムが録音されたのは同年3月17日だから、本アルバムは最後のアルバムかな、と思ったら、4月に録音された「The Olatunji Concert」というのがあってこれが最後のアルバムであった。 1面の「OGUNDE」という短い曲はアフリカの民族音楽風の曲である。ゆっくりした曲を吹く時のコルトレーンのテナー・サックスの音は実にクリアで透明である。思わず聴き入ってしまうが3分ほどと短いのが残念である。2曲目の「TO BE」という長い曲ではピッコロのファラオ・サンダースをフィーチャーし、自身はフルートを吹いている。ピッコロとフルートの掛け合いがアフリカの民族音楽風に聴こえる。 2面の「OFFERING」のコルトレーンはすごい。アリス・コルトレーン(pf)、ジミー・ギャリソン(b)、ラシッド・アリ(ds) のリズム・セクションをバックにテナー・サックスを吹きまくる。 タイトル曲「EXPRESSION」も同様である。独特のうねるようなテナー・サックスの響きは我々に何者かを訴えかけているようである。止まることを知らない、シーツ・オブ・サウンズである。
1967年2月15日-3月17日 録音。 (2021.5.2) |
---山下洋輔--- | |||
BANSLIKANA 同裏面 |
本アルバムが録音されたルートヴィヒスベルクという所はニュルンベルクとミュンヘンの間にあるドイツの地方都市である。チェコとの国境にも近い。 1面に針を下ろした瞬間、流れ出た音はこれがピアノの音なんだろうか? という疑問でアルバムの裏面を見直してしまった。本アルバムはENJAレコードの直輸入版で解説書などは入っていない。ライナーノートもない。曲の題名とアーティストの名前が書いてあるだけである。「YOSUKE YAMASHITA」と。 山下洋輔がピアノ以外の楽器を演奏するのを観たことがないので、これはピアノを演奏しているのであろう。そう感じるくらい、このアルバムのピアノの音は透明で濁りがない。おなじみの「チュニジアの夜」が別の曲に思われたほどだ。特にサビのところでは「これチェンバロ?」と思った。中部ヨーロッパの乾燥した空気とスタジオのピアノが素晴らしい音を出したのか、演奏した山下のテクニックが凄かったのか。あるいはその両方が作用してこの素晴らしい音が録音されたんだろう。 「バンスリカーナ」と「キアズマ」は山下トリオではお馴染みの曲だ。ソロでも何度か録音している。ベストなコンディションで録音されたこのアルバムでの演奏は特別の価値がある。 2面は「AUTUMN LEAVES」(枯葉) から始まる。サビに入るまで長い間なんの曲だかわからない状態が続く。まるで山下独特の調子でピアノを調律しているかのようだ。山下の過去の曲「グガン」だの「木喰」だの「バンスリカーナ」などのメロディがかすかに聴こえる。そのうちにお馴染みの「枯葉」のメロディが聴こえたかと思ったら演奏は終わった。 「KO'S DAYDREAM」「LULLABY」「BIRD」ははいずれも山下の曲。いつもの暴力的なタッチは影を潜め、ピアノの音色を楽しんでいるような演奏である。 同時期にドイツ(当時は西ドイツ)で山下トリオがマンフレッド・ショーフ(tp)と共演したライブをENJAレコードが録音した「DISTANT THUNDER」も是非聴いてみたいアルバムである。
1976年7月5日 Ludwigsbergでの録音。 (2021.4.1) |
---アート・ブレイキー--- | |||
ART BLAKEY'S JAZZ MESSENGERS WITH THELONIOUS MONK |
アート・ブレイキーとジャズメッセンジャーズとセロニアス・モンクという組み合わせのアルバムである。有りそうで無さそうな組み合わせではないか。 最後の一曲を除いてすべてモンクの曲を演奏している。また、すべての曲のアレンジをモンクが担当している。1面の「ブルー・モンク」はこれぞモンクという曲。ブレイキーがどのように合わせるかが聴きどころである。ドラムスのブレイキーはほとんど後ろに控え、トランペットのビル・ハードマンとベースのスパンキー・デブレストを前面に出すことによって成功している。 2面の「アイ・ミーン・ユー」はモンクのお馴染みの曲。ジョニー・グリフィンのテナー・サックスがモンクのピアノといい調子でアドリブ・プレイを繰り広げている。ブレイキーも得意のナイアガラ・ロールを繰り出す。 「PURPLE SHADES」のみグリフィンの曲。アレンジがモンクのせいか、まるでモンクの曲のように聴こえる。独特のピアノ演奏がいかにもモダン・ジャズである。ニューヨークのナイト・クラブを連想させる。 名手たちが繰り広げる古典的なモダン・ジャズの演奏である。
録音データなし。 (2021.3.1) |
---チャーリー・ヘイデン--- | |||
THE GOLDEN NUMBER メンバー サイン | 本アルバムはベーシストのチャーリー・ヘイデンがそれぞれの楽器の名手たちとのデュエットを繰り広げる。ヘイデンは白人ベーシストで力強いベース・プレイで知られている。 「OUT OF FOCUS」での相手はドン・チェリー(tp&fl)。フリー・ジャズ奏者のチェリーとフリーもモダン・ジャズもこなすヘイデンのアドリブ合戦は迫力満点である。 「SHEPP'S WAY」はヘイデン(b)とアーチー・シェップ(ts)のデュオ。シェップのうねるようなテナー・サックスのアドリブ・プレイに対抗するヘイデンも時には弓弾きのベース・プレイを披露する。 「TURNAROUND」はヘイデン(b)とハンプトン・ホーズ(pf)のデュオ。フォー・ビートのピアノ演奏を聴くとホッとする。特にモダン・ジャズ奏者の名手ハンプトン・ホーズのピアノとベースの名手チャーリー・ヘイデンである。思わず体が動いてしまうような、気持ちの良いリズムである。 「THE GOLDEN NUMBER」はヘイデン(b)とオーネット・コールマン(tp)のデュオ。アルト・サックス奏者のコールマンが本アルバムではトランペットを演奏する。コールマンはヘイデン作曲の哀愁のメロディをトランペットで演奏する。ヘイデンのベースは下からしっかり支えている。 チャーリー・ヘイデンのベースは安定感が並でない。どのような相手と共演しても崩れることがない。
1976年8月21日 L.A.で録音、12月19,20日 ニューヨークで録音。 (2021.2.3) |
---ダニー・リッチモンド--- | |||
CHAIR IN THE SKY MINGUS DYNASTY 同裏面 |
ダニー・リッチモンドはチャールズ・ミンガスお気に入りのドラマーであった。ミンガス亡き後、ミンガスゆかりのミュージシャンたちを集めて、ミンガス・ダイナスティ(ミンガス王朝)を作り、演奏活動を行なった。もちろん選曲はチャールズ・の曲に限られる。 チャールズ・ミンガスというベーシストはどういうベーシストだったのだろうか。作曲家としてのミンガスは「直立猿人」「フォーバス知事の寓話」「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」など個性的な曲で知られているが、ベーシストとしてはどうだったのか。ビル・エヴァンス・トリオのスコット・ラファロやウェザー・リポートのジャコ・パストリアス、オスカー・ピーターソン・トリオのレイ・ブラウンのような圧倒的なベース・プレイとは違うような気がする。これがミンガスだ、というものを持っていたのかどうか、筆者にはわからない。 とはいえ、チャールズ・ミンガスという名前はデューク・エリントン、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズというビッグ・ネームと並んで、ジャズ界で燦然と輝いていることは間違いない。大きな要因を占めているのが、黒人差別に対する彼の戦闘的な姿勢と独特の作曲手法なのであろう。 アルバムの最初の曲「ブギ・ストップ・シャッフル」は独特のリズム感とグループ音楽の傑作だと思う。誰が聴いてもひとりでに体が動いてしまう。 2面の2曲目「デ・モインのおしゃれ賭博師」は題名が示すとおり洒落た曲である。しっかりしたベースラインの上でホーン・セクションが喋りまくる。アルト・サックス2本とトランペット2本が際限のない井戸端会議を繰り広げる。名手チャーリー・ヘイデンのベースは堅固でどんな状況でも崩れることがない。 最後の曲「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」はモダン・ジャズの名曲である。ドン・ピューレンのアコースティックなピアノとジミー・オーエンスのフリューゲルフォーンがこのアルバムをしっとりと締めくくる。
1979年7月9日、10日 ニューヨークで録音。 (2021.1.2) |