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カウント・ベイシー / フリージャズ大祭 インスピレーション&パワー14 / 秋吉敏子 / クリフォード・ブラウン / アート・ペッパー / アール・クルー / マイルス・デイヴィス / ジョン・コルトレーン / 山下洋輔 / アート・ブレイキー / チャーリー・ヘイデン / ダニー・リッチモンド



---カウント・ベイシー---


APRIL IN PARIS

APRIL IN PARIS


SIDE-1、1曲目の「APRIL IN PARIS」が始まると、部屋はゴージャスなビッグバンドの音に包まれる。曲が終わると、ベイシーの掛け声で「One more time.」、ラストのフレーズがもう一度繰り返される。これで終わるかと思うや、一拍おいて再び「 One more one.」の掛け声、もう一度ラストのフレーズ。録音時52才のベイシーの声は若々しい。

2曲目の「CORNER POCKET」も親しみやすい曲。サド・ジョーンズのきらびやかなトランペットの音で始まる。ソニー・ペインのドラムがいい調子を刻む。

「DID'N YOU」はビッグバンドのアンサンブルの華麗さが際立っている。

「SWEETY CAKES」ではベイシーのピアノソロがフィーチャーされる。ホーンセクションとピアノの掛け合いが続く。

「MAGIC」はラグタイム風のピアノソロから始まる。曲はホーンセクションに移り、ソロ合戦が始まると体が動いてしまう。

SIDE-2の1曲目は「SHINY STOCKINGS」。この曲はカウント・ベイシーのテーマソングになっている。日本公演の時もこの曲が始まるといよいよ始まるんだな、と感激したのを思い出す。粋な曲である。

2曲目は「WHAT AM I HERE FOR」。トランペットのミュートプレイとピアノの掛け合いが洒落ている。ミディアムテンポのくつろげる曲。

3曲目の「MIDGETS」。ミュート・トランペットとフルートの掛け合いから始まる。ピアノが続き、ベースに引き渡される。アップテンポのユーモラスな曲である。

4曲目の「MAMBO INN」。曲名通り、マンボ・ミュージックである。マンボのリズムで踊り出したくなる。

5曲目の「DINNER WITH FRIENDS」。友人たちとディナーを、という気楽な曲。これぞビッグバンドの醍醐味。分厚いアンサンブル。火の吹くようなソロ。雪崩れ込むようなラスト。

ベイシー・ミュージックはその中に身を浸しているだけで心地よい音楽である。できれば裏表をひっくり返さねばならないLPレコードではなく、CDでリピートしたい。

SIDE-1
  1. APRIL IN PARIS
  2. CORNER POCKET
  3. DID'N YOU
  4. SWEETY CAKES
  5. MAGIC
SIDE-2
  1. SHINY STOCKINGS
  2. WHAT AM I HERE FOR
  3. MIDGETS
  4. MAMBO INN
  5. DINNER WITH FRIENDS

1955年7月26日〜1956年1月5日、ニューヨークにて録音。

(2021.12.13)


---フリージャズ大祭 インスピレーション&パワー14---


フリージャズ大祭  インスピレーション&パワー14

フリージャズ大祭 インスピレーション&パワー14

フリージャズ大祭  インスピレーション&パワー14

同裏面

フリージャズ大祭  インスピレーション&パワー14

同中面

フリージャズ大祭  インスピレーション&パワー14

同中面全部


フリー・ジャズ全盛期の1973年夏、アートシアター新宿文化劇場で14日間にわたってフリー・ジャズのコンサートが開催された。

生霊(いきすだま)》 ----- 宮間利之とニュー・ハード・オーケストラ。ジャズ・オーケストラがまるで日本の雅楽のように鳴る。ブラス・セクションがまるで笙(しょう)や篳篥(ひちりき)のような音をだす。最後は音たちは竹藪の中に消えてゆくかのようである。

《インランド・フィッシュ》 ----- 吉沢元治ベース・ソロ。吉沢元治による弓弾きによるベース・ソロである。弓弾きでは不協和音が可能である。観客を不安な気持ちにさせておいて、深い音色の指弾き奏法で終わる。

《オクトーバー・リヴオリューション》 ----- 沖至クインテット。沖至の咆哮のようなトランペットの音にかぶさるようにして高木元輝のソプラノ・サックが吠える。乱れ打ちのようなパーカッションがそれらを包み込む。フリー・ジャズの醍醐味だ。こういう演奏はライブで直に聴かなければならない。

《イントロダクション〜C de F》 ----- ナウ・ミュージック・アンサンブル。詩の朗読というより、詩の絶叫から始まり、ピアノ、アルト・サックス、トランペットがドレミファソラシドを繰り返す。繰り返すうちに音程が乱れていく。次第に音がメチャクチャになって終わる。これはレコードで聴いても面白くない。実地で聴かなければ。

《レミレス》 ----- 冨樫雅彦+佐藤允彦デュオ。冨樫雅彦と佐藤允彦のデュエットは二人が10代のころから一緒にやっているのと、もともと息があうのだろう、二人が一人でやっているように感じる。冨樫のパーカッションの音色と佐藤のピアノの音色は澄んでいて的確だ。対話のような、またはつぶやきのような音楽である。

《集団投射》 ----- ニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ。高柳昌行のギターと井野信義のチェロの音は山崎弘とジョー・水木のパーカッションの音にかき消されてほとんど聞き取れない。まるで騒音だ。こういうのを聞かされた観客は今後フリー・ジャズに近寄らなくなるのでは。

《フェイズ 13》
 ----- がらん堂。佐藤允彦のピアノの音は聞こえない。シンセサイザーの不協和音が鳴り響くだけだ。翠川敬基のベースも不協和音。田中保積のパーカッションの音のみ聴く者を安心させる。特にトライアングルの音は天上からの響きだ。

《クレイ》
 ----- 山下洋輔トリオ。48年前の山下洋輔トリオは現在のトリオとは全然違う。全ての音が荒々しく暴力的だ。山下のピアノの音は怖いほど暴力的だ。坂田明のアルト・サックスはこの人は普通の音程でメロディが鳴らせるのかと思うほど、鋭い叫びのような音を繰り返す。森山威男のドラムスはそれら全てを包み込むように優しい。

PA3157-A
  1. 《生霊》 ----- 宮間利之とニュー・ハード・オーケストラ
  2. 《インランド・フィッシュ》  吉沢元治ベース・ソロ
PA3157-B
  1. 《オクトーバー・リヴオリューション》 --- 沖至クインテット
  2. 《イントロダクション〜C de F》 ----- ナウ・ミュージック・アンサンブル
PA3158-A
  1. 《レミレス》 ----- 冨樫雅彦+佐藤允彦デュオ
  2. 《集団投射》 ----- ニュー・ディレクション・フォー・ジ・アーツ
PA3158-B
  1. 《フェイズ 13》
     ----- がらん堂
  2. 《クレイ》
     ----- 山下洋輔トリオ

1973年6月30日〜7月11日、アートシアター新宿文化劇場にて録音。

(2021.11.2)


---秋吉敏子---


TOSHIKO AT TOP OF THE GATE

TOSHIKO AT TOP OF
THE GATE

TOSHIKO AT TOP OF THE GATE

同裏面


秋吉敏子が当時のホーム・グランドであるニューヨークのジャズ・クラブ「トップ・オヴ・ザ・ゲイト」で録音したアルバムである。

渡米22年目のライブ・アルバムである。

SIDE-A、1曲目の「OPUS NO.ZERO」は秋吉さんがこのステージのために作曲した曲。その後ビッグ・バンドのためにアレンジして演奏している。印象的なメロディのテーマをワン・コーラス演奏すると、各演奏者のアドリブに入り、元メロディは聴こえなくなる。秋吉さんのピアノ・ソロ、ケニー・ドーハム のトランペット・ソロが素晴らしい。

2曲目の「THE FIRSTNIGHT」も秋吉さんによる作曲。ルー・タバキンのフルート・ソロがこの「出会い」というやさしげな曲にふさわしく響いている。

「PHRYGIAN WATERFALL」は秋吉さんのアーシーなピアノ・ソロから始まる。ピアノの低音部が土俗的な民族音楽風に聴こえる。

「LET'S ROLL IN SAKE」は「酒のめ、のめ」と訳されている。日本の祭りのメロディのように聴こえる。アップ・テンポの調子の良い曲。ケニー・ドーハム のトランペット、ルー・タバキンのテナーサックスが素晴らしい。

SIDE-Bの1曲目は「HOW INSENSITIVE」。アントニオ・カルロス・ジョビンの曲である。ルー・タバキンのフルートが効いている。

2曲目は「MORNING OF THE CARNIVAL」。映画音楽「黒いオルフェ」である。名曲中の名曲である。ルー・タバキンのダーティなテナーサックスの後、ケニー・ドーハム の透明なトランペットの音が素晴らしい。

3曲目の「THE NIGHT SONG」は1964年のミュージカル「ゴールデン・ボーイ」の主題歌。ルー・タバキンのテナーサックスと秋吉さんのピアノのからみが聴きどころ。ルー・タバキンは原曲のメロディを崩しまくる。

4曲目の「WILLOW WEEP FOR ME」。「柳よ泣いておくれ」は、1932年にアン・ロネルが作詞・作曲したポピュラー音楽である。聴けば誰でも知っている曲をロン・カーターがベース・ソロで演奏する。

5曲目の「MY ELEGY」は秋吉さんが最初に渡米した1956年に作った曲。最後にふさわしい華やかな曲。メンバーのそれぞれが個性的なアドリブ・ソロを聴かせる。

曲の合間にパラパラと拍手が聞こえる。いっとき、ニューヨークの夜のジャズ・クラブに居る気分が味わえる。

メンバーは秋吉敏子(ピアノ, アレンジ)、 ケニー・ドーハム (トランペット)、 ルー・タバキン (テナーサックス、 フルート)、 ロン・カーター (ベース)、 ミッキー・ローカー (ドラムス)。

SIDE-A
  1. INTRODUCTION
  2. OPUS NO.ZERO
  3. THE FIRSTNIGHT
  4. PHRYGIAN WATERFALL
  5. LET'S ROLL IN SAKE
SIDE-B
  1. HOW INSENSITIVE
  2. MORNING OF THE CARNIVAL
  3. THE NIGHT SONG
  4. WILLOW WEEP FOR ME
  5. MY ELEGY

1968年7月30日、ニューヨークの「トップ・オヴ・ザ・ゲイト」にて録音。

(2021.10.8)


---クリフォード・ブラウン---


Clifford Brown with Strings

Clifford Brown with Strings

Clifford Brown with Strings

同裏面


クリフォード・ブラウンがニール・へフティ率いるストリングス楽団と共演したアルバムである。

ホーン楽器とストリングスは相性がいいんだろうか、チャーリー・パーカーにもストリングスと共演したアルバムがある。柔らかいストリングスの中でホーンの鋭い音が映えるのは確かである。

Side 1、1曲目の「Yesterdays」はジャズのスタンダードナンバーである。原曲は1933年のミュージカル「ロバータ」のためにジェローム・カーンが作曲した。「ロバータ」というミュージカルは知らなくてもこの曲を知らない人はいないだろう。流麗なストリングスのメロディのイントロに乗って現れるブラウンのトランペットは鮮烈である。

2曲目の「Laura」も今ではスタンダードナンバーになっている。原曲は1944年の映画「ローラ殺人事件」(オットー・プレミンジャー監督)のテーマ曲「ローラ」である。作曲はデイヴィッド・ラクシン。

以下「What's New」」「Blue Moon」「Can't Help Lovin' Dat Man」「Embraceable You」とジャズのスタンダードナンバーが続く。流麗、優雅なストリングスをバックにブラウンが気持ちよく吹いている。

Side 2の1曲目は「Willow Weep for Me」。「柳よ泣いておくれ」は、1932年にアン・ロネルが作詞・作曲したポピュラー音楽である。聴けば誰でも知っている曲である。

2曲目は「Memories of You」。「メモリーズ・オブ・ユー」ユービー・ブレイク作曲による、1930年にブロードウェイのショー「Lew Leslie's Blackbirds of 1930」の中でミント・カトーが歌った。ポピュラー音楽の名曲である。

3曲目の「Smoke Gets in Your Eyes」はお馴染みの「煙が目にしみる」。泣きたくなるような名曲である。ブラウンのトランペットは聴いている全ての人を涙ぐませるだろう。

4曲目の「Portrait of Jenny」(ジェニイの肖像)は1939年に発行されたロバート・ネイサンの小説を原作とする1948年のアメリカ映画。や。

5曲目の「Where or When」(いつかどこかで)もジャズのスタンダードナンバー。君といると,初めてって気がしないんだ。 いつか,こんな風に見つめ合ってたよね。 いつだったかなぁ? 、という歌詞。

最後の「Stardust」はホーギー・カーマイケルが1927年に発表したジャズのスタンダード・ナンバーである。最後にふさわしい永遠の名曲である。

ウィズ・ストリングスという形式はメインとなるホーンを際立たせるのに適している。部屋全体にトランペットが響き渡り、まるでブラウニーが聴き手に向けて直に演奏しているような錯覚にとらわれる。

メンバーはクリフォード・ブラウン(tp) リッチー・パウエル(p) バリー・ガルブレイス(g) ジョージ・モロウ(b) マックス・ローチ(ds)
ニール・ヘフティ(arr, cond) & ストリングス

Side 1
  1. Yesterdays
  2. Laura
  3. What's New
  4. Blue Moon
  5. Can't Help Lovin' Dat Man
  6. Embraceable You
Side 2
  1. Willow Weep for Me
  2. Memories of You
  3. Smoke Gets in Your Eyes
  4. Portrait of Jenny
  5. Where or When
  6. Stardust

1955年1月18〜20日、ニューヨークにて録音。

(2021.9.10)


---アート・ペッパー---


EARLY ART

EARLY ART

EARLY ART

同裏面

EARLY ART

同中面


アート・ペッパーの代表作「COLLECTIONS」「THE RETURN OF ART PEPPER」「MODERN ART」の3作品を編集して2枚組にしたお得用アルバムである

全盛期の演奏を集めたものとあってどの演奏も素晴らしい。何よりも勢いがあり、アドリブに迷いがない。特にSide Oneはじめの曲「STRAIGHT LIFE」はアルト・サックスの切れ味が鋭い。アドリブの曲想、スピードはチャーリー・パーカーを彷彿とさせる。

3曲目の「YARDBIRD SUITE」はチャーリー・パーカーの曲だが音色の柔らかさはアート・ペッパー独自のものである。

5曲目の「TENOR BLOOZ」はアルト・サックスをテナーに持ち替えての演奏である。レッド・ノーヴオのヴィブラフォンが効いている。

Side One最後の曲「PEPPER RETURNS」はアート・ペッパーのアルト・サックスとジャック・シェルダンのトランペットのアドリブの掛け合いが凄い。合いの手に入るシェリー・マンのドラムスがスピーディで軽く、独特のユーモアを出している。

Side Twoの2曲目はスタンダード・ナンバーの「YOU GO TO MY HEAD」。ペッパーは歌うようにしっとりとアルト・サックスを鳴らす。ラス・フリーマンのピアノが寄り添うように伴奏する。

4曲目の「FUNNY BLUES」はジャズならではのおかしな(FUNNY)ブルース。

Side Two最後の「MINORITY」、ラス・フリーマンのピアノが微妙に心をくすぐる。マイノリティ、少数派。

Side Three 1曲目の「PATRICIA」、アルト・サックスで静かに歌い上げるブルース・ナンバー。

2曲目は「MAMBO DE LA PINTA」、にぎやかな曲。シェリー・マンの軽くて素早いドラムスはマンボに向いている。

3曲目は「WALKIN' OUT BLUES」、アルト・サックス、トランペット、ピアノ、それぞれの楽器が呟きながら歩いていく。こういう曲を聴くのがモダンジャズの醍醐味である。4曲目「BLUES IN」はそのアンサー曲か。

「WHAT IS THIS THING CALLED LOVE?」(恋とはなんでしょう)は、コール・ポーターが1929年、ミュージカル「ウェイク・アップ・アンド・ドリーム」のために作曲した歌。ジャズの有名なスタンダード・ナンバーである。アート・ペッパーは軽快に吹きまくる。

Side Fourの2曲目「BEWITCHED」はスローでささやくような曲。邦訳も「瞳のささやき」

「WHEN YOU'RE SMILING」「STOMPIN' AT THE SAVOY」はいずれもスタンダード・ナンバー。こういう曲のアドリブはアート・ペッパーの得意中の得意。 1979年7月に芝郵便貯金ホールで演奏した時もノリに乗っていた。

メンバーはジャック・シェルダン(tp) レッド・ノーヴオ(vib.) ラス・フリーマン(pf)、リロイ・ヴィネガー(b) シェリー・マン(ds) ジョー・モレロ(ds) 他

Side One
  1. STRAIGHT LIFE
  2. YOU'RE DRIVING ME CRAZY
  3. YARDBIRD SUITE
  4. PEPPER STEAK
  5. TENOR BLOOZ
  6. PEPPER RETURNS
Side Two
  1. BROADWAY
  2. YOU GO TO MY HEAD
  3. ANGEL WINGS
  4. FUNNY BLUES
  5. FIVE MORE
  6. MINORITY
Side Three
  1. PATRICIA
  2. MAMBO DE LA PINTA
  3. WALKIN' OUT BLUES
  4. BLUES IN
  5. WHAT IS THIS THING
    CALLED LOVE?
Side Four
  1. COOL BUNNY
  2. BEWITCHED
  3. DIANE'S DILEMMA
  4. WHEN YOU'RE SMILING
  5. STOMPIN' AT THE SAVOY
  6. BLUES OUT

1956年〜1957年、ロスアンジェルスにて録音。

(2021.8.5)


---アール・クルー---


Finger Paintings

Finger Paintings

Finger Paintings

同裏面


アール・クルーといえば、1面1曲目の「DR. MACUMBA」であろう。アコースティック・ギターの力強いタッチで弾く独特のメロディは一度聴いたら耳の奥にこびりついてしまい、演奏が終わってもいつまでも頭の中で鳴り響いている。
2曲目の「LONG AGO AND FAR AWAY」は前曲の強烈なリズムを洗い流すように優しい。この昔を懐かしむような優しいメロディが同じ楽器から出ているとは思えない。
「CABO FRIO」は踊り出したくなるようなリズミカルな曲。スティーヴ・ガッドのドラムスとアール・クルーのギターの掛け合いが最高。
「KEEP YOUR EYE ON THE SPARROW」のギターの音は電気など使わなくてもこれほどビートのある力強い音を出せるという見本である。

2面の「CATHERINE」はギターの音が聴き手を包み込むように優しい曲である。
「DANCE WITH ME」もカリフォルニアの青空のようにどこまでも透明な清々しい曲である。
「JOLANTA」、スペインの民謡のような曲想、ギターの音色が素晴らしい。ギターはアコースティックに限る。
「SUMMER SONG」、フランシスコ・センティノのエレクトリック・ベースとアール・クルーのギターの掛け合いは何やら楽しそうに世間話をしているように聴こえる。
「THIS TIME」、ゆったりした優しい曲。こういうアルバムはLPでひっくり返しながら聴くものではなく、CDでリピートして一日中流しておくべきである。

メンバーはアール・クルー(g) デイヴ・グルーシン(el-p, synth) アンソニー・ジャクソン、ルイス・ジョンソン(el-b) スティーヴ・ガッド(ds) ハーヴィー・メイソン(ds) ラルフ・マクドナルド(per) リー・リトナー(g) 他

Side 1
  1. DR. MACUMBA
  2. LONG AGO AND FAR AWAY
  3. CABO FRIO
  4. KEEP YOUR EYE ON THE
    SPARROW
Side 2
  1. CATHERINE
  2. DANCE WITH ME
  3. JOLANTA
  4. SUMMER SONG
  5. THIS TIME

1977年2月15日、17日、カリフォルニア州バーバンクにて録音。

(2021.7.4)


---マイルス・デイヴィス---


WORKIN'

WORKIN'(CD)

STEAMIN'

STEAMIN'(CD)

RELAXIN'

RELAXIN'(CD)

COOKIN'

COOKIN'(CD)


ジャズのレコードは数々あるが、最終的にはこの4枚を繰り返し聴いていればいいのではないか。1950年代のマイルス・デイヴィスである。

この4枚とは「ワーキン」「スティーミン」「リラクシン」「クッキン」のことで、マイルスがプレスティッジとの間に残された契約を済ませるために、たった2日間で行ったレコーディングのことである。24曲、すべてワンテイクであったといわれる。俗に「マラソン・セッション」と呼ばれている。

マイルスはこの後、1957年にはパリに招かれ、ルイ・マル監督の映画「死刑台のエレベーター」の音楽を制作した。映画のラッシュ・フィルムを見ながら即興演奏で録音したというのが伝説になっている。
1958年にはキャノンボール・アダレイの名盤「サムシン・エルス」の録音に参加。
1959年には代表作となる「カインド・オブ・ブルー」を制作している。

1950年代のマイルスはまさに飛ぶ鳥を落とす勢いであった。

*WORKIN'*
1) If Never Enterd My MInd 2)Four 3)In Your Own Sweet Way 4)The Theme(take 1) 5)Tran's Blues 6)Ahmad's Blues 7)Half Nelson 8)The Theme(take 2)
「If Never Enterd My MInd」でマイルスのミュート・トランペットで奏でるメロディは最高。マラソン・セッションの開始にふさわしい曲である。
「Ahmad's Blues」ではレッド・ガーランドのピアノ演奏とポール・チェンバースのベース・ソロ、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラム・ソロがたっぷり味わえる。
「Half Nelson」ではマイルスとコルトレーンの火の出るような掛け合いを聴くことができる。

*STEAMIN'*
1)Surry With The Fringe On Top 2)Salt Peanuts 3)Something I Dreamed Last Night 4)Diane 5)Well, You Needn't 6)When I Fall In Love
「Surry With The Fringe On Top」のコルトレーンはゆったりとした、堂々たる演奏。
アップテンポの「Salt Peanuts」でもコルトレーンのテナーサックスがすごい。フィリー・ジョー・ジョーンズのドラム・ソロの見せ場、聴かせどころもこの曲。
最後はマイルスの染み渡るようなミュート・トランペットのバラードで「When I Fall In Love」。

*RELAXIN'*
1)If I Were a Bell 2)You're My Everything 3)I Could Write a Book 4)Oleo 5)It Could Happen To You 6)Woody'n You
「If I Were a Bell 」の出だしでマイルスが何か言っているのが聞こえるが、何を言っているのかはわからない。1950年のミュージカル「野郎どもと女たち」の主題歌。
「You're My Everything」の出だしでマイルスがピューッと口笛を吹く。ピアノのレッド・ガーランドが曲を間違えたらしい。やり直した後は順調に進む。マイルスのミュート・トランペットとピアノの絡みは絶好調。
「I Could Write a Book」は1940年のロジャースとハートのミュージカル「夜の豹」のなかで、ジーン・ケリーとレイラ・アーンストに歌われたスタンダードナンバー。親しみやすく、楽しい曲。
「Oleo」はソニー・ロリンズが作曲した曲。マイルスとコルトレーンのアップテンポの掛け合いが見事。
「It Could Happen to You」(あなたに降る夢)は、1994年にアメリカで製作されたロマンティック・コメディ映画の主題歌。

*COOKIN'*
1)My Funny Valentine 2)Blues By Five 3)Airegin 4)Tune Up/When Lights Are Law
「My Funny Valentine」のマイルスのミュート・トランペットで奏でるメロディは最高。それを受けるピアノのレッド・ガーランドが絶妙。ゾクゾクするほどの名曲、名演奏。
オープン・トランペットでバリバリ吹く「Airegin」や「Tune Up」のマイルスもいい。コルトレーンのテナーサックスも快調に飛ばしている。


1956年5月11日と同年10月26日 録音。

(2021.6.3)


---ジョン・コルトレーン---


EXPRESSION

EXPRESSION

EXPRESSION

同中扉面


ジョン・コルトレーンが亡くなったのは1967年7月17日で本アルバムが録音されたのは同年3月17日だから、本アルバムは最後のアルバムかな、と思ったら、4月に録音された「The Olatunji Concert」というのがあってこれが最後のアルバムであった。

1面の「OGUNDE」という短い曲はアフリカの民族音楽風の曲である。ゆっくりした曲を吹く時のコルトレーンのテナー・サックスの音は実にクリアで透明である。思わず聴き入ってしまうが3分ほどと短いのが残念である。2曲目の「TO BE」という長い曲ではピッコロのファラオ・サンダースをフィーチャーし、自身はフルートを吹いている。ピッコロとフルートの掛け合いがアフリカの民族音楽風に聴こえる。

2面の「OFFERING」のコルトレーンはすごい。アリス・コルトレーン(pf)、ジミー・ギャリソン(b)、ラシッド・アリ(ds) のリズム・セクションをバックにテナー・サックスを吹きまくる。

タイトル曲「EXPRESSION」も同様である。独特のうねるようなテナー・サックスの響きは我々に何者かを訴えかけているようである。止まることを知らない、シーツ・オブ・サウンズである。

Side 1
  1. OGUNDE
  2. TO BE
Side 2
  1. OFFERING
  2. EXPRESSION

1967年2月15日-3月17日 録音。

(2021.5.2)


---山下洋輔---


BANSLIKANA

BANSLIKANA

BANSLIKANA

同裏面


本アルバムが録音されたルートヴィヒスベルクという所はニュルンベルクとミュンヘンの間にあるドイツの地方都市である。チェコとの国境にも近い。

1面に針を下ろした瞬間、流れ出た音はこれがピアノの音なんだろうか? という疑問でアルバムの裏面を見直してしまった。本アルバムはENJA(エンヤ)レコードの直輸入版で解説書などは入っていない。ライナーノートもない。曲の題名とアーティストの名前が書いてあるだけである。「YOSUKE YAMASHITA」と。

山下洋輔がピアノ以外の楽器を演奏するのを観たことがないので、これはピアノを演奏しているのであろう。そう感じるくらい、このアルバムのピアノの音は透明で濁りがない。おなじみの「チュニジアの夜」が別の曲に思われたほどだ。特にサビのところでは「これチェンバロ?」と思った。中部ヨーロッパの乾燥した空気とスタジオのピアノが素晴らしい音を出したのか、演奏した山下のテクニックが凄かったのか。あるいはその両方が作用してこの素晴らしい音が録音されたんだろう。

「バンスリカーナ」と「キアズマ」は山下トリオではお馴染みの曲だ。ソロでも何度か録音している。ベストなコンディションで録音されたこのアルバムでの演奏は特別の価値がある。

2面は「AUTUMN LEAVES」(枯葉) から始まる。サビに入るまで長い間なんの曲だかわからない状態が続く。まるで山下独特の調子でピアノを調律しているかのようだ。山下の過去の曲「グガン」だの「木喰」だの「バンスリカーナ」などのメロディがかすかに聴こえる。そのうちにお馴染みの「枯葉」のメロディが聴こえたかと思ったら演奏は終わった。

「KO'S DAYDREAM」「LULLABY」「BIRD」ははいずれも山下の曲。いつもの暴力的なタッチは影を潜め、ピアノの音色を楽しんでいるような演奏である。

同時期にドイツ(当時は西ドイツ)で山下トリオがマンフレッド・ショーフ(tp)と共演したライブをENJAレコードが録音した「DISTANT THUNDER」も是非聴いてみたいアルバムである。

Side I
  1. A NIGHT IN TUNESIA
  2. STELLA
  3. BANSLIKANA
  4. CHIASMA
Side II
  1. AUTUMN LEAVES
  2. KO'S DAYDREAM
  3. LULLABY
  4. BIRD

1976年7月5日 Ludwigsbergでの録音。

(2021.4.1)


---アート・ブレイキー---


WITH THELONIOUS MONK

ART BLAKEY'S JAZZ MESSENGERS WITH THELONIOUS MONK


アート・ブレイキーとジャズメッセンジャーズとセロニアス・モンクという組み合わせのアルバムである。有りそうで無さそうな組み合わせではないか。

最後の一曲を除いてすべてモンクの曲を演奏している。また、すべての曲のアレンジをモンクが担当している。1面の「ブルー・モンク」はこれぞモンクという曲。ブレイキーがどのように合わせるかが聴きどころである。ドラムスのブレイキーはほとんど後ろに控え、トランペットのビル・ハードマンとベースのスパンキー・デブレストを前面に出すことによって成功している。

2面の「アイ・ミーン・ユー」はモンクのお馴染みの曲。ジョニー・グリフィンのテナー・サックスがモンクのピアノといい調子でアドリブ・プレイを繰り広げている。ブレイキーも得意のナイアガラ・ロールを繰り出す。

「PURPLE SHADES」のみグリフィンの曲。アレンジがモンクのせいか、まるでモンクの曲のように聴こえる。独特のピアノ演奏がいかにもモダン・ジャズである。ニューヨークのナイト・クラブを連想させる。

名手たちが繰り広げる古典的なモダン・ジャズの演奏である。

Side ONE
  1. EVIDENCE
  2. IN WALKED BUD
  3. BLUE MONK
Side TWO
  1. I MEAN YOU
  2. RHYTHM-A-NING
  3. PURPLE SHADES

録音データなし。

(2021.3.1)


---チャーリー・ヘイデン---


THE GOLDEN NUMBER

THE GOLDEN NUMBER

THE GOLDEN NUMBER

メンバー

THE GOLDEN NUMBER

サイン


本アルバムはベーシストのチャーリー・ヘイデンがそれぞれの楽器の名手たちとのデュエットを繰り広げる。ヘイデンは白人ベーシストで力強いベース・プレイで知られている。

「OUT OF FOCUS」での相手はドン・チェリー(tp&fl)。フリー・ジャズ奏者のチェリーとフリーもモダン・ジャズもこなすヘイデンのアドリブ合戦は迫力満点である。

「SHEPP'S WAY」はヘイデン(b)とアーチー・シェップ(ts)のデュオ。シェップのうねるようなテナー・サックスのアドリブ・プレイに対抗するヘイデンも時には弓弾きのベース・プレイを披露する。

「TURNAROUND」はヘイデン(b)とハンプトン・ホーズ(pf)のデュオ。フォー・ビートのピアノ演奏を聴くとホッとする。特にモダン・ジャズ奏者の名手ハンプトン・ホーズのピアノとベースの名手チャーリー・ヘイデンである。思わず体が動いてしまうような、気持ちの良いリズムである。

「THE GOLDEN NUMBER」はヘイデン(b)とオーネット・コールマン(tp)のデュオ。アルト・サックス奏者のコールマンが本アルバムではトランペットを演奏する。コールマンはヘイデン作曲の哀愁のメロディをトランペットで演奏する。ヘイデンのベースは下からしっかり支えている。

チャーリー・ヘイデンのベースは安定感が並でない。どのような相手と共演しても崩れることがない。

Side ONE
  1. OUT OF FOCUS
  2. SHEPP'S WAY
Side TWO
  1. TURNAROUND
  2. THE GOLDEN NUMBER

1976年8月21日 L.A.で録音、12月19,20日 ニューヨークで録音。

(2021.2.3)


---ダニー・リッチモンド---


CHAIR IN THE SKY MINGUS DYNASTY

CHAIR IN THE SKY MINGUS DYNASTY

CHAIR IN THE SKY MINGUS DYNASTY

同裏面


ダニー・リッチモンドはチャールズ・ミンガスお気に入りのドラマーであった。ミンガス亡き後、ミンガスゆかりのミュージシャンたちを集めて、ミンガス・ダイナスティ(ミンガス王朝)を作り、演奏活動を行なった。もちろん選曲はチャールズ・の曲に限られる。

チャールズ・ミンガスというベーシストはどういうベーシストだったのだろうか。作曲家としてのミンガスは「直立猿人」「フォーバス知事の寓話」「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」など個性的な曲で知られているが、ベーシストとしてはどうだったのか。ビル・エヴァンス・トリオのスコット・ラファロやウェザー・リポートのジャコ・パストリアス、オスカー・ピーターソン・トリオのレイ・ブラウンのような圧倒的なベース・プレイとは違うような気がする。これがミンガスだ、というものを持っていたのかどうか、筆者にはわからない。

とはいえ、チャールズ・ミンガスという名前はデューク・エリントン、マイルス・デイヴィス、ジョン・コルトレーン、ソニー・ロリンズというビッグ・ネームと並んで、ジャズ界で燦然と輝いていることは間違いない。大きな要因を占めているのが、黒人差別に対する彼の戦闘的な姿勢と独特の作曲手法なのであろう。

アルバムの最初の曲「ブギ・ストップ・シャッフル」は独特のリズム感とグループ音楽の傑作だと思う。誰が聴いてもひとりでに体が動いてしまう。

2面の2曲目「デ・モインのおしゃれ賭博師」は題名が示すとおり洒落た曲である。しっかりしたベースラインの上でホーン・セクションが喋りまくる。アルト・サックス2本とトランペット2本が際限のない井戸端会議を繰り広げる。名手チャーリー・ヘイデンのベースは堅固でどんな状況でも崩れることがない。

最後の曲「グッドバイ・ポーク・パイ・ハット」はモダン・ジャズの名曲である。ドン・ピューレンのアコースティックなピアノとジミー・オーエンスのフリューゲルフォーンがこのアルバムをしっとりと締めくくる。

Side ONE
  1. BOOGIE STOP SHUFFLE
  2. A CHAIR IN THE SKY
  3. MY JELLY ROLL SOUL
  4.  
Side TWO
  1. SWEET SUCKER DANCE
  2. THE DRY CLEANER FROM DES MOINES
  3. GOODBYE PORKPIE HAT

1979年7月9日、10日 ニューヨークで録音。

(2021.1.2)

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