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チック・コリア&ゲイリー・バートン/ 中本マリ/ 日野皓正/ アンソニー・ウイリアムズ/ デューク・エリントン/ ジョン・コーツ,JR./ J.R.モンテローズ/ スタン・ゲッツ/ バーニー・ケッセル/ 秋吉敏子/ ロニー・マシューズ/ リー・モーガン


---チック・コリア&ゲイリー・バートン---


チック・コリア&ゲイリー・バートン「IN CONCERT」

IN CONCERT


チック・コリア「IN CONCERT」

チック・コリア---ピアノとゲイリー・バートン---ヴァイブラフォンのデュオによるライヴアルバムである。

アルバムの日本名「クリスタル・サイレンス・ライヴ」の通り水晶のような透明な音である。どの曲も素晴らしいが1枚目のはじめの曲「セニョール・マウス」がこのアルバムを象徴している。親しみやすくまるでピアノとヴァイブラフォンがじゃれあっているようなメロディは一度聴いたら耳から離れなくなる。

ピアノとヴァイブラフォンという同じような音色の打楽器だけでこんなにお互いの特徴を出し合って演奏できるとはこの二人がやるまでは誰も気がつかなかったのではないか。「セニョール・マウス」における二人の掛け合いは次に出る音が予想できず出た音があまりに期待を上回っているのでドキドキするほどである。

一人でじっくりと聴いてもよし、お正月みんなが集まった中にバックグラウンドとして流すもよし、時と場所を選ばない音楽である。

1979年10月28日、チューリッヒにてライブ録音。

(2016.12.30)


---中本マリ---


中本マリ「MARI」

MARI


本アルバムは中本マリの初期の代表作である。

選曲といいアレンジといいこれほど曲と歌手の相性がぴったり合っているアルバムは珍しい。A面 - Day by day - The very thought of you - Tuxedo junction - Love for saleと流れるようにマリ節が続く。他の誰もこれらの曲をこういうふうに歌わないからマリ節と言わざるを得ない。その微妙な節回しが快感である。アメリカのスタンダードナンバーだが日本人が編曲し日本人が歌うとどうしても日本的になる。そこが日本人には快感になる。アメリカ人には新鮮に映るかもしれない。

B面 - On a clear day - On green dolphin street - No moon at all - P.S. I love youもマリ節全開で歌いまくる。快感としか言いようがない。

効果的に入るギター、テナーサックス、ヴァイブラフォン、ベースの音が効果を高めている。

西洋小唄の小粋な雰囲気を味わいたい時に真っ先に選びたいアルバムである。

  • 中本マリ(vo)
  • 横内章次(g)
  • 稲葉国光(b)
  • 石松元(ds)
  • 西条孝之介(ts)
  • 伏見哲夫(tp)
  • 松石和宏(vib)

1977年4月9日、東京渋谷エピキュラス・スタジオにて録音。

(2016.11.20)


---日野皓正---


日野皓正「May Dance」

May Dance


日野皓正が渡米して2年め、マイルスのリズムセクションと共に録音したアルバムである。

渡米して2年め、34才の日野がよくこんな超一流のメンバーを集められたものだ。ドラマー、トニー・ウイリアムズ。ベース、ロン・カーター。ギター、ジョン・スコフィールド。いずれもマイルス・デイヴィスが見出し、起用したミュージシャンだ。日野のトランペットがすでに本場で認められていたことの証明だろう。

全6曲すべて作曲は日野皓正。日野のトランペットはどの曲においても絶好調だが、特に第一面2曲目の「ザ・ワイルド・レディー」ではツヤがあり伸びがある。日野のトランペットとトニー・ウイリアムズのドラムスとのやりとりはドキドキするほど迫力がある。すべての曲でジョン・スコフィールドのエレクトリック・ギターが見せ場を与えられており、若干25才のスコフィールドが全員から認められていることがわかる。

ロン・カーターのベースはいつも全体を支えていて安心感がある。

このアルバムは時に応じて聴きたい演奏者を聴くために再生するのが良いだろう。

  • 日野皓正(tp)
  • John Scofield(el.g)
  • Ron Carter(b)
  • Tony Williams(ds)

1977年5月7日、ニューヨークにて録音。

(2016.9.19)


---アンソニー・ウイリアムズ---


アンソニー・ウイリアムズ「spring」

spring


トニー・ウィリアムズのリーダーアルバムである。

ドラマーがリーダーアルバムを作るとあまり楽しい演奏にならない。ドラムスはメロディー楽器ではないからだと思う。本アルバムも第2面1曲目の「ラヴ・ソング」以外はフリー・ジャズの形式をとっている。リズムはあるがメロディがない。

第1面1曲目の「エクストラ」は面白い曲だ。初めは右から次は左からテナーサックスが吠える。どちらがウエイン・ショーターでどちらがサム・リヴァースかわからないがなかなかいい音だ。次にゲイリー・ピーコックの奏でるベースの不気味な音。近くになったり遠くになったりするハイスピードのブラシワークはトニー・ウイリアムズだ。この曲の緊張感はただ事ではない。名手たちならではの音だ。

第2面1曲目の「ラヴ・ソング」はこのアルバム唯一のモダンジャズである。ハービー・ハンコックのピアノ、ゲイリー・ピーコックのベース、サム・リヴァースのテナーサックス。名手たちと一緒にやるトニー・ウィリアムズはこの時20才だ。名手たちのバックでリズムを刻むトニーのドラムスは軽やかで素早くて実に気持ちがいい。

1965年8月12日、ニューヨークにて録音。

(2016.8.22)


---デューク・エリントン---


デューク・エリントン「MONEY JUNGLE」

MONEY JUNGLE


It Don't Mean A Thing (If It Ain't Got That Swing)
スウィングしなけりゃ意味ないね。

自分の楽器はオーケストラだ、といったデューク・エリントンがピアノトリオで演奏したアルバムは珍しい。 しかもベースがチャールズ・ミンガス、ドラムスがマックス・ローチと個性的なメンバーだ。 普通のリーダーだとバラバラになってしまいそうだが、御大デューク・エリントンがリーダーとあっては勝手なことはできない。実にバランスの良いピアノ・トリオになっている。

三味線のような変わった雰囲気のベースの音から始まる。やがて打楽器のようなピアノの音が入ってくる。裏では三味線のようなベースの音が続いている。なんとも変わった雰囲気のピアノトリオだ。1面1曲目はタイトル曲の「マネー・ジャングル」。「アフリカの花」「ヴェリー・スペシャル」と可愛い曲が続き1面の最後はバラード風の「ウォーム・ヴァレイ」。西洋小唄といった雰囲気の洒落た曲だ。ベースの音が寄り添うようにピアノにかぶる。

2面2曲目の「キャラバン」は斬新なアレンジだ。自由奔放にピアノを演奏し、ベースとドラムスがやっとそれに付いていくという感じだ。

次の「ソリチュード」も目立つのはピアノの音だ。右手と左手を過不足なく動かすことによって1台のピアノがオーケストラのように聞こえる。

ビッグバンドで演奏するときはあまり前に出てこないエリントンのピアノの音が前面に出てくる、ピアノ好きにはたまらないアルバムとなっている。

1962年9月17日、ニューヨーク・シティにて録音。

(2016.7.7)


---ジョン・コーツ,JR.---


ジョン・コーツ,JR.「ALONE AND LIVE」

ALONE AND LIVE


ペンシルベニアにあるジャズ・クラブ「ディア・ヘッド・イン」で行ったステージを録音したソロ・ピアノのライブ盤である。

ジョン・コーツ,JR.という人はキース・ジャレットが有名にならなければ生涯表舞台に出ることのなかった人である。ペンシルベニアのデラウェアに住み、街に一軒だけあるライブハウスで週2回演奏するという生活をずっと続けていた人である。

彼の演奏は耳に心地よい。ピアノの音をできるだけ純粋に響かせることに苦心していることがわかる。2曲目以外は全て本人の作曲によるものであるが音の一つ一つが我々の耳に明快に届く。曲のどれもが懐かしさを覚える。じっくり聴いてもいいし、部屋に流しておくだけでもいい。

1977年6月24日、7月1日録音。全9曲の題名は以下の通り。

  • PROLOGUE
  • WHEN IT'S SLEEPY TIME DOWN SOUTH
  • NEVER HAVE KNOWN AN ESTHER
  • SKETCH
  • MIXED FEELINGS
  • HOMAGE
  • SOMETHING KINDA SILLY
  • THE END OF THE BEGINNING
  • THE PRINCE

(2016.5.30)


---J.R.モンテローズ---


J.R.モンテローズ「ウェルカム・バック・J.R.」

WELCOM BACK, J.R.


A面はスタンダード曲、B面は自作曲という構成。

A面はビリー・ストレイホーンの「ラッシュ・ライフ」、ジョン・コルトレーンの「ジャイアント・ステップス」、そしてサン・コズローの「マイ・オールド・フレーム」。B面はどれも自身の曲で「ルーアン」、「イヴリンズ・デライト」、「マーティズ・プレイス」。

J.R.モンテローズはどの曲でもアルバムのスポーツカーのように軽快にテナーサックスを吹きまくる。時々ピアノソロが入る程度でテナーサックスの独演会といった雰囲気だ。テナーサックスの音が好きな人にはたまらないアルバムである。

1979年5月18日録音、メンバーは以下。

  • J.R. Monterose(ts)
  • Hod O'Brien(pf)
  • Teddy Kotick(b)
  • Jimmy Wormworth(ds)

(2016.5.12)


---スタン・ゲッツ---


スタン・ゲッツ「STAN GETZ AND J.J.JOHNSON AT THE OPERA HOUSE」

STAN GETZ AND J.J.JOHNSON AT THE OPERA HOUSE


聴き返すたびにこのコンボのツー・トップ、スタン・ゲッツとJ.J.ジョンソンの掛け合いの凄さに感動する。

バックにオスカー・ピーターソン、レイ・ブラウンという強力なプレイヤーがいるのだがほとんど彼らの演奏は聞こえてこない。

1面の「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」、2面の「クレイジー・リズム」におけるゲッツとJ.J.の軽いアドリブと激しい掛け合いは聴きものである。観客が喜んでいるのが演奏の合間に聞こえてくる。ライヴ録音のいいところだ。

2面の「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」という小さな曲で初めてオスカー・ピーターソンがソロをとる。ピーターソンのピアノに静かにゲッツのテナー・サックスが絡んでくる。激しい演奏の合間にこういう演奏があるのも楽しい。

1957年10月19日シカゴのオペラ・ハウスにおけるライヴ録音、メンバーは以下。

  • Stan Getz(ts)
  • J.J.Johnson(tb)
  • Oscar Peterson(pf)
  • Ray Brown(b)
  • Herb Ellis(g)
  • Connie Kay(ds)

(2016.4.7)


---バーニー・ケッセル---


バーニー・ケッセル「summertime in montreux」

summertime in montreux


1973年7月4日モントルー・ジャズ・フェスティヴァルにおけるライヴ録音である。

バーニー・ケッセルはここで自由自在にアコースティックなジャズギターを弾きまくっている。

ステージで聴くアコースティックギターはエレキギターに比べて音も小さく頼りなげだが、上手く録音されたアルバムで聴くと音に深みがあって表現力が豊かで思わず聞き入ってしまう。

2面の「サマータイム」と「ブリッジング・ザ・ブルース」が楽しい。

「サマータイム」はギターソロから入り、そこにピアノが絡んでくる。その内にギターの音とピアノの音がシンクロしてどちらの音だか分からなくなってくる。サイドメンたちのパッキングもいい。

「ブリッジング・ザ・ブルース」はバーニーのオリジナルだそうだがどこかで聞いたことがあるメロディである。1973年の録音だから今ではスタンダード化していても不思議はない。最後の曲だからステージでも最後に演奏されたのではないたろうか。ジャムセッション的に全員がからんで盛り上がっている。観客の拍手喝采もすごい。

1973年7月4日モントルー・ジャズ・フェスティヴァルにおけるライヴ録音、メンバーは以下。

  • Barney Kessel(g)
  • Danny Moss(ts)
  • Brian Lemon(pf)
  • Kenny Baldog(b)
  • Johny Richardson(ds)

(2016.3.19)


---秋吉敏子---


秋吉敏子「TOSHIKO PLAYS TOSHIKO」

TOSHIKO PLAYS TOSHIKO

秋吉敏子「TOSHIKO PLAYS TOSHIKO」


秋吉敏子カルテット・フューチァリング スティーブン・ハフステッターといったアルバムである。

秋吉敏子の本格的なフォービートのピアノとスティーブン・ハフステッターの冬の青空のような透明なトランペットの音が楽しめる。

どちらを聴いてもいい。私はA面1曲目の「Notrous Tourist From The East」の初めの音が鳴り響いた瞬間から耳がスティーブンのトランペットにとらえられてしまい、最後までトランペットの音を聴いてしまった。

「Notrous Tourist From The East」はスペインのフラメンコのような曲調でトランペットの音が闘牛士のように我々の前に立ちはだかるようである。

A面2曲目の「Soliloquy」はトランペットによるメロディアスな「独り言」が延々と続く。秋吉のピアノも途切れることなく続く。ピアノのパートになると思わずスイング感に体が乗ってしまう。

B面1曲目の「Hangin' Loose」はルー・タバキンのユーモラスなサキソフォンの演奏でおなじみな曲だが、スティーブンのキレのあるトランペットで聴くと別の曲のように聞こえる。秋吉のキレのよいピアノがそれにかぶさるように続く。

秋吉のエレクトリックピアノソロによる「Memory」はビッグバンドで聴くよりもさらに思索的に聴こえる。

ジャムセッション風の「After Mr. Teng」でお祭り風ににぎやかに終わる。ここでは全員が自己主張する。

このアルバムでは秋吉敏子が作った曲をいつものビッグバンドではなくカルテットで演奏している。ひとつひとつの楽器が際立って聞こえ、冬の夜楽しむのにふさわしいアルバムである。

1978年12月5日, 6日録音、メンバーは以下。

  • Toshiko Akiyosi(pf)
  • Steven Huffsteter(tp)
  • Gene Cherico(b)
  • Billy Higgins(ds)

(2016.2.17)


---ロニー・マシューズ---


ロニー・マシューズ「ROOTS,BRANCHES,& DANCES」

ROOTS,BRANCHES,& DANCES


30数年前ロニー・マシューズがジャズの大物のサイドマンとして来日した時に聴きに行き、その軽快でノリのいいピアノに感動した。このレコードはその直後に購入したものである。

今聴いてみてロニー・マシューズはいい、とあらためて思った。

軽快でノリのいいピアノを聴きたかったら第2面2曲目の「スーザニータ」がいい。ベースのレイ・ドラモンドの作品だがどこかで聴いたような曲と思えるのは既にスタンダードになっているのかもしれない。ここでのロニーのピアノは軽快そのもので思わず体が動いてしまう。

第1面の3曲と第2面の3曲どれを聴いても出しゃばらないピアノ、よく歌うテナーサックス、しゃれたベース、リズミカルなドラムス、目立たないが確実なパーカッションのアンサンブルを聴くことができる。気持ちのいい一枚だ。

1978年12月7日録音、メンバーは以下。

  • Ronnie Mathews(pf)
  • Frank Foster(ts,ss)
  • Ray Drummond(b)
  • Al Foster(ds)
  • Azzedin Weston(perc.)

(2016.1.14)


---リー・モーガン---


リー・モーガン「here's LEE MORGAN」

here's LEE MORGAN


「here's LEE MORGAN」、まさしく「リー・モーガンここにあり」である。

キリキリするようなリー・モーガンのトランペット、それを支える包容力のあるアート・ブレイキーのドラムス。A面3曲目の「MOGIE」を聴けば誰でもリー・モーガンのファンになるに違いない。

天馬空を行くトランペット、リー・モーガンが吹くと周りのすべての音を奪ってしまう。彼の音しか聞こえなくなってしまう。

天才の寿命は短い。だが彼は33才で奥さんに撃ち殺されるまでに必要十分な仕事をした。

1960年2月3日録音、メンバーは以下。

  • Lee Morgan(tp)
  • Art Blakey(ds)
  • Wynton Kelly(p)
  • Cliff Jordan(ts)
  • Paul Chambers(b)

(2016.1.4)

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