2013年  一覧へ
セロニアス・モンク/ ソニー・クラーク/ バディ・デフランコ/ ライオネル・ハンプトン/ アート・ブレイキー/ 沖至/ ビル・エヴァンス/ ポール・デスモンド/ ハンク・ジョーンズ/ ハービー・ハンコック/ 山下洋輔/ アート・ランディ


---セロニアス・モンク---

セロニアス・モンク「ソロ・モンク」

ソロ・モンク

”ソロ・モンク”はミュージカルの主題歌やスタンダードな曲を集め、”ラウンド・アバウト・ミッドナイト”は自分が作曲した曲を中心にモダン・ジャズの名曲を集めている。

両方ともセロニアス・モンクのピアノ・ソロである。モンクのピアノは山下洋輔やセシル・テイラーとは対照的に音の数が極端に少ない。ということはひとつひとつの音の密度が高い。

この時代にこのような曲想でピアノを弾いて観衆によく受け入れられたものだと思うが、その音の密度の濃さに圧倒されて受け入れざるを得なかったのかもしれない。1950年代に発表されたこれらのアルバムの音は2013年に聴いても新しい。そして圧倒される。

モンクの特徴がよくあらわれたアルバムは”ラウンド・アバウト・ミッドナイト”だ。A面3曲目の”煙が目にしみる”以外はすべて自分が作曲した曲である。A面はモンクが作曲した曲の中でもスタンダードになった曲を集め、B面は実験的、意欲的な曲を集めている。

どの曲も聴く者の予想を見事に跳ね返してくれる。予定調和的な聴きかたはモンクに対してはできない。名曲”煙が目にしみる”にしても同様。アレっというところで音が跳んだりはねたりする。

仕事で疲れた脳をマッサージするのに最適なアルバムである。

(2013.11.24)

セロニアス・モンク「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」

ラウンド・アバウト・ミッドナイト


---ソニー・クラーク---

ソニー・クラーク「DIAL

DIAL "S" FOR SONNY

”DIAL "S" FOR SONNY”とはしゃれた題名を考えたものである。

ブルーノートの1570番である。ブルーノート・レコードの1500番台というのはモダンジャズのエッセンスが集まっているので有名である。

その中間に位置する本レコードは手に取っただけでモダンジャズの香りがする。

ソニー・クラークのピアノはもちろんのこと、アート・ファーマーのトランペット、カーティス・フラーのトロンボーン、ハンク・モブレイのテナー・サックスそれぞれに聴きどころがある。

ソニーの小粋なピアノを聴くならB面最後の”LOVE WALKED IN”、カーティス・フラーのドライブ感のあるトロンボーンならB面2曲目の”SHOUTIN' ON A RIFF”が良い。

ソニー・クラーク「DIAL (2013.11.16)

---バディ・デフランコ---

バディ・デフランコ「MR. CLARINET」

ミスター・クラリネット

バディ・デフランコ(cl) ケニー・ドリュー(pf)ミルト・ヒントン(b)アート・ブレイキー (ds) というラインナップもすばらしい。

”エアメイル・スペッシャル”でデフランコを聴いたらこのアルバムが聴きたくなった。

空中に舞い上がってそのまま降りてこないような演奏が次々登場する。このころのデフランコは無敵だった。
一面の”フェルディナンド”、二面の”バット・ノット・フォー・ミー”のデフランコは神がかっている。一時的に神様が降りてきたといってもいいくらいだ。

イケイケのデフランコを聴くならこのアルバムに限る。

(2013.10.6)

---ライオネル・ハンプトン---

ライオネル・ハンプトン「AIR MAIL SPECIAL」

エアメイル・スペッシャル

ライオネル・ハンプトン(vib)オスカー・ピーターソン(pf)レイ・ブラウン(b)バディ・リッチ (ds) バディ・デフランコ(cl)という最強のメンバーによる演奏である。

選曲もおなじみの曲ばかりで心地よい。特にA面1曲目の”AIR MAIL SPECIAL”はライオネル・ハンプトンの極め付けである。特別航空便で送る手紙は誰の手に届くのだろうか? 羽の生えた手紙がウキウキしながら飛んでいく様子が目に浮かぶようだ。

B面2曲目の”IT'S ONLY A PAPER MOON”はミスター・クラリネット、バディ・デフランコのソロから始まる。空中に舞い上がってそのまま降りてこないような演奏だ。名人ぞろいのこの演奏はLPレコードの制約があり、A面14分、B面18分で終わってしまう。金曜日の夜などはずっと聞いていたいレコードである。

(2013.9.27)

---アート・ブレイキー---

アート・ブレイキー「a night at bird land」

バードランドの夜-Vol.1-

クリフォード・ブラウン(tp)ルー・ドナルドソン(as)ホレス・シルバー(pf)カーリー・ラッセル(b)アート・ブレイキー (ds)というブルーノート・レコードの最強メンバーによる演奏である。

ジャズ・メッセンジャーズの初代メンバーたちの演奏である。
クリフォード・ブラウンがいる、ホレス・シルバーがいる、…そして御大アート・ブレイキーがいる。

1面の"ONCE IN A WHILE"や"QUICKSILVER"でのクリフォード・ブラウンの包み込むようなトランペットの音は限りなくやさしい。

2面の"A NIGHT IN TUNISIA"におけるホレス・シルバーのピアノ・ソロなどはまるで天空を舞っているようである。

このレコードは交通事故でクリフォード・ブラウンが亡くなる2年前、1954年2月21日の午後11時から午前3時の間にニュー・ヨークの52nd St.のジャズクラブ"Birdland"で演奏されたものを録音した2枚のレコードのうちの1枚目のレコードである。

(2013.8.3)

---沖至---

沖至「ミラージュ」

ミラージュ

沖至(tp)加古隆(pf)富樫雅彦(per)翠川敬基(b)という1977年当時の日本ジャズ界の超豪華メンバーによる演奏である。

今でもこのメンバーで演ったら行きたいくらいだが、富樫雅彦が鬼籍に入った今となってはかなわぬ夢である。

スタジオ録音とはいえ36年前の録音とは思えないほど各楽器の音が鮮明に聞こえる。

全5曲のどれもすばらしい演奏なのだが、A面1曲目、加古隆作曲の"チトン通り11"がスピード感、楽器同士の絡み合いがすばらしい。

沖至のつぶやくようなトランペットの音が堪能できる1枚である。

(2013.6.23)

---ビル・エヴァンス---

ビル・エヴァンス「trio '65」

トリオ’65

1面3曲目の"'ROUND MIDNIGHT"はビル・エヴァンスのピアノ演奏のために作られたような曲だ。"真夜中あたり"に聞くにはふさわしい曲だ。

1面4曲目の"OUR LOVE IS HERE TO STAY"「わが愛はここに」はジョージ・ガーシュウィンの遺作。"パリのアメリカ人"にも使われた名曲。ビル・エヴァンスのピアノはここでも絶好調だ。

2面3曲目、"COME RAIN OR COME SHINE"「降っても晴れても」はチャック・イスラエルのベースとビル・エヴァンスのピアノの絡み具合がなんとも言えず良い。

全体的にアップテンポの軽やかな曲が多く、聞きやすい名盤だと思う。

(2013.5.25)

---ポール・デスモンド---

ポール・デスモンド「The Only Recorded Performance Of Paul Desmond With<br> The Modern Jazz Quartet」

The Only Recorded Performance
Of Paul Desmond With
The Modern Jazz Quartet

デイブ・ブルーベック・カルテットを退団したポール・デスモンドがモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)と一緒に演った珍しいアルバム。
タイトルも"The Only Recorded Performance Of Paul Desmond With The Modern Jazz Quartet"と生涯一回だけの共演を強調している。

1面の"Green Sleeves"、"You Go To My Head"、"Blue Dove"とどれもこれぞデスモンドというリリカルなアルト・サックスの演奏を聴くことができる。デスモンドのアルトはほかの人とは音がぜんぜん違う。音が空中遊泳している感じだ。

2面の"East Of The Sun"におけるミルト・ジャクソン(バイブラフォン)との掛け合いはどこまで行ってしまうんだろうと思わせるほど上空まで飛んでいる。このアルバムが最初で最後の共演とはとても思えない。

(2013.5.3)

---ハンク・ジョーンズ---

ハンク・ジョーンズ「Live In Japan」

ライブ・イン・ジャパン

1979年5月2日鹿児島県医師会館ホールにおける実況録音盤。
ハンク・ジョーンズ;ピアノ、ジョージ・デュヴィヴィエ;ベース、シェリー・マン;ドラムスという黄金のトリオ。

ハンク・ジョーンズは本国よりも日本での人気のほうが高く、日本で作られたアルバムが多い。これもその1枚。。

最後の曲はアンコールの曲で「オン・グリーン・ドルフィン・ストリート」。乗りに乗った演奏で会場の拍手喝采の様子が延々と録音されている。自分もライブ会場にいる気分だ。

(2013.4.29)

---ハービー・ハンコック---

ハービー・ハンコック「SPEAK LIKE A CHILD」

スピーク・ライク・ア・
チャイルド

60年代後半のブルー・ノート盤。この当時独特のモダン・ジャズ。

当時のハービー・ハンコックはアコースティック・ピアノしか弾いていない。
エレピのハンコックは好きではない。

タイトル曲の"Speak Like A Child"もいいが、2面の"Goodby To Childhood"も内省的でいい。

ハービー・ハンコック「SPEAK LIKE A CHILD」裏面

ハービー・ハンコック「SPEAK LIKE A CHILD」中面

当時のブルー・ノート盤はジャケット写真も(おもむき)がある。

裏面と中面の写真も載せておく。見開きつきのLPなので中面もある。

(2013.3.30)

---山下洋輔---

山下洋輔「INVITATION -YOSUKE in the GALLERY-」

インヴィテイション
-Yosuke In The Gallery-

軽快な"Green Sleeves"から始まる。場所はフジTVギャラリー、谷川晃一の"アール・ポップ・ライフ"展の会場で行われた演奏会のライブ録音です。時は1979年2月22日(木)。山下洋輔37才、アブラが乗り切った頃の演奏です。もっとも72才の今でもアブラが乗り切っていますが…。

一面の"Green Sleeves"と"Mokujiki"は最高の演奏。

二面の"Let's Cool One"と"I Can't Get Started"と"A Night In Tunisia"もソロ・ピアノとしてのテクニックは完成の域に達している。
要するにすべてが最高の一枚です。

まるでピアノが私たちの心に直接話しかけてくるような…、雨の日にじっくり聞くには最高の音楽です。

(2013.3.18)

---アート・ランディ---

アート・ランディ「The Eccentricities of Earl Dant」

The Eccentricities of
Earl Dant

じっくり聞くためのピアノ・ソロアルバムです。漫然と聞き流してしまったのでは「はて、今のはなんだったんだろう?」と思ってしまいます。

アート・ランディはこのアルバムと"ルビサ・パトロール"、"ルビサ・パトロール2"くらいしか 日本では出ていないのではないかと思います。

二面の"《I've Grown Accustomed To Her Face「忘れられない彼女の顔」》と《Get Me To The Church On Time「時間通りに教会へ」》はミュージカル "マイ・フェア・レディ"の中の音楽ですが、アート・ランディにしか弾けない曲想になっています。

ほどよく頭の中をかき回して思考の粒々を正しい位置に配置してくれる整粒器のような音楽です。

(2013.1.23)

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