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RRR / モリコーネ



---RRR---


RRR-1

タイトルの「RRR」は、「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字に由来する。

映画は冒険活劇、民族独立、潜入スパイ、ミュージカルなど色々な要素を含んでいる。3時間の長尺であるが、時間の経過を忘れてしまうほど見どころが多く、ダレ場がない。

映画の冒頭で主役のひとりがイギリス人の総督に投石したインド人を捕まえるシーンには驚いた。犯人を捕まえるために群衆の中に踊り込み殴られても蹴られても一切構わず、犯人を追いかけていく警官の姿に悪魔的なものを感じた。過去の映画にこのようなシーンを探すとすれば「ターミネーター」で壊されても潰されても主人公を追いかけるロボットくらいのものではないだろうか。

ふたりの主人公の乗り物は馬とオートバイ。馬に乗る主人公が森の中を疾駆するシーンは黒澤明の作品を思い出させた。

RRR-2

主人公たちがパーティで「Naatu」というダンスを踊るシーンはジーン・ケリー全盛期のハリウッド映画を追い越す勢いであった。正装の女性たちも交えて大勢で踊るシーンで、地面から土埃がじわーっと上がってくる。過去のダンスシーンの舞台はたいてい室内で、屋外にしても舗装された地面で、土埃を利用した演出は映画史上初めてではないか。

RRR-3

本作品は昨年から公開されていて半年以上になる。これほどのロングラン作品は最近では「グレイテスト・ショーマン」か「ボヘミアン・ラプソディ」以来ではないか。

しかも日本ではあまり公開されることのないインド映画で半年以上のロングランは初めてのことだろう。

(2023.5.25)



---モリコーネ---


モリコーネ

2020年に亡くなったエンニオ・モリコーネを偲んで「ニュー・シネマ・パラダイス」を監督したジュゼッペ・トルナトーレが2021年に映画化した作品。作品は全編エンニオ・モリコーネ本人が自分の作品を振り返るモノローグでできている。本人が生きているうちに作られたものを、亡くなってから編集して公開されたのであろう。

この映画を観るとモリコーネはどんなに褒めても足りないくらいの業績を上げた人物であることがわかる。

彼が作曲した作品を挙げると誰でも知っている映画がひとつやふたつは必ずある。たとえば、

  1.  荒野の用心棒(1964)
  2.  夕陽のガンマン(1965)
  3.  夕陽の用心棒(1965)
  4.  アルジェの戦い(1966)
  5.  続・夕陽のガンマン(1966)
  6.  ウエスタン (1968)
  7.  狼の挽歌 (1970)
  8.  死刑台のメロディ (1971)
  9.  オルカ (1977)
  10.  遊星からの物体X (1982)
  11.  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ (1984)
  12.  ミッション(1986)
  13.  アンタッチャブル (1987)
  14.  ニュー・シネマ・パラダイス (1988)
  15.  ディスクロージャー (1994)
  16.  めぐり逢い(1994)
  17.  海の上のピアニスト (1998)
  18.  オペラ座の怪人(1998)
  19.  鑑定士と顔のない依頼人 (2013)
  20.  ヘイトフル・エイト (2015)
  21.  ある天文学者の恋文(2016)

1964年から2016年まで切れ目なく映画音楽を作曲し、それぞれの音楽が独立していて、ジャンルを問わないところが彼の特徴である。彼を賛美する映画人の中には、彼をベートーヴェンやモーツァルトにたとえるひともいる。

筆者はマカロニ・ウェスタンの作曲家というイメージを持っていたが、本映画を観て決してそれだけではないことがわかった。「ミッション」や「ヘイトフル・エイト」を観ると壮大な交響曲を聴いているようである。

映画は157分(2時間37分)と長く、尻が痛くなったが、彼の業績を表現するには不足であった。これだけ数があると、選曲に監督の好みが出てくるのは仕方がない。「オルカ (1977)」や「遊星からの物体X (1982)」ってどんな音楽だったっけ、とかチャールズ・ブロンソン主演の「狼の挽歌 (1970)」の音楽って? 、と思うひともいるに違いない。

モリコーネを偲ぶにはそれぞれのひとが思い入れのある映画を2、3本DVDなどで観るしかないだろう。

(2023.1.16)


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