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JAZZ GODFATHER / クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド / RRR / モリコーネ



--- JAZZ GODFATHER ---


JAZZ・GODFATHER

ジャズ・ベーシスト・オマスズこと鈴木勲のドキュメンタリー・フィルムである。

37才の時、来日したアート・ブレイキーにスカウトされ、ジャズ・メッセンジャーズのメンバーとして渡米した。帰国後、日本ジャズ界の代表的なベーシストとして活躍した。89才で亡くなる直前まで第一線で活動した。

鈴木勲のステージは見たことがなかった。全盛期、どのような活動をしていたのか興味があった。

映画は85才から亡くなる直前までの彼またはその周辺の人たちのインタビューを主体に、練習風景やステージでの演奏の一部を挟み込んだ構成でできていた。

「クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド」のようなワンステージのコンサートを丸ごと撮影した映画を期待していたのだが、それはかなわず、せめて一曲の演奏を丸ごとやってくれないかな、と期待したが、それもかなわなかった。

オマスズさんの演奏をじっくり聴くことはできなかったが、彼の少々エキセントリックで親しみやすい人柄を知ることができた。全盛期のアルバム・ジャケットの写真から想像するオマスズさんは冷静で寡黙な印象だった。若者に期待をかけ、そのなかに入り込んでいく、音楽に貪欲な彼の姿を知ることができた。

(2023.11.14)



--- クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド ---


クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド

クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルが1970年にロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行った演奏の実況版である。

ホールで行われた演奏の前にメンバーの紹介フィルムが収められている。それによると、ジョン・フォガティ(ギター、ヴォーカル)スチュ・クック(ベース)ダグ・クリフォード(ドラムス)は中学時代の友人で、それにジョンの兄トム・フォガティ(ギター)が合流してグループを編成した。バンド名をクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルと決めたのは1968年からとのことである。同年カバー曲の「スージーQ」で知られるようになった。

1970年に行われたロイヤル・アルバート・ホールでのコンサートは大盛況だったから、わずか2年でロック界のスター・グループにのし上がったことになる。

クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル トラヴェリン・バンド

筆者はほぼリアルタイムで彼らの演奏を聴いていた。音源はTBSラジオの「パックイン・ミュージック」である。その時のDJは若山弦蔵と八木誠であった。この二人が担当していた時期は1969年から1970年となっているから、彼らはデビューしたばかりのクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァルをリアルタイムで日本に紹介していたことになる。

コンサートは「ボーン・オン・ザ・バイヨー」からスタート、「グリーン・リヴァー」「トラヴェリン・バンド」「フォーチュネイト・サン」「バッド・ムーン・ライジング」「プラウド・メアリー」など、全米チャート上位にランクインしたヒット・ナンバーが続く。

クリーデンス・クリアウォーター・リヴァイヴァル

ラスト、8分半に及ぶ「キープ・オン・チューグリン」は凄まじい盛り上がりで、クラシックの殿堂にもかかわらず観客は立ち上がって踊りだしていた。

映画館は月曜日の午後2時にもかかわらず、全200席のうち半分くらい入っていた。

このバンドは1972年に解散した。活動期間はわずか4年間であった。それから50年以上経った今でもウイークディの午後の映画館にこれだけのファンが集まるということは、彼らの演奏の求心力の強さを物語っている。

John Fogerty

このライヴは2022年9月、「ライヴ・アット・ロイヤル・アルバート・ホール」としてCD化された。50年ぶりに発見された映像と音源であった。

この映画館、ヒューマントラストシネマ渋谷は座席の幅と全面のスペースが他の映画館より広く、質の良いPAシステムを使っている。音楽を聴くのに最適の映画館であった。

(2023.9.25)



--- RRR ---


RRR-1

タイトルの「RRR」は、「Rise(蜂起)」「Roar(咆哮)」「Revolt(反乱)」の頭文字に由来する。

映画は冒険活劇、民族独立、潜入スパイ、ミュージカルなど色々な要素を含んでいる。3時間の長尺であるが、時間の経過を忘れてしまうほど見どころが多く、ダレ場がない。

映画の冒頭で主役のひとりがイギリス人の総督に投石したインド人を捕まえるシーンには驚いた。犯人を捕まえるために群衆の中に踊り込み殴られても蹴られても一切構わず、犯人を追いかけていく警官の姿に悪魔的なものを感じた。過去の映画にこのようなシーンを探すとすれば「ターミネーター」で壊されても潰されても主人公を追いかけるロボットくらいのものではないだろうか。

ふたりの主人公の乗り物は馬とオートバイ。馬に乗る主人公が森の中を疾駆するシーンは黒澤明の作品を思い出させた。

RRR-2

主人公たちがパーティで「Naatu」というダンスを踊るシーンはジーン・ケリー全盛期のハリウッド映画を追い越す勢いであった。正装の女性たちも交えて大勢で踊るシーンで、地面から土埃がじわーっと上がってくる。過去のダンスシーンの舞台はたいてい室内で、屋外にしても舗装された地面で、土埃を利用した演出は映画史上初めてではないか。

RRR-3

本作品は昨年から公開されていて半年以上になる。これほどのロングラン作品は最近では「グレイテスト・ショーマン」か「ボヘミアン・ラプソディ」以来ではないか。

しかも日本ではあまり公開されることのないインド映画で半年以上のロングランは初めてのことだろう。

(2023.5.25)



--- モリコーネ ---


モリコーネ

2020年に亡くなったエンニオ・モリコーネを偲んで「ニュー・シネマ・パラダイス」を監督したジュゼッペ・トルナトーレが2021年に映画化した作品。作品は全編エンニオ・モリコーネ本人が自分の作品を振り返るモノローグでできている。本人が生きているうちに作られたものを、亡くなってから編集して公開されたのであろう。

この映画を観るとモリコーネはどんなに褒めても足りないくらいの業績を上げた人物であることがわかる。

彼が作曲した作品を挙げると誰でも知っている映画がひとつやふたつは必ずある。たとえば、

  1.  荒野の用心棒(1964)
  2.  夕陽のガンマン(1965)
  3.  夕陽の用心棒(1965)
  4.  アルジェの戦い(1966)
  5.  続・夕陽のガンマン(1966)
  6.  ウエスタン (1968)
  7.  狼の挽歌 (1970)
  8.  死刑台のメロディ (1971)
  9.  オルカ (1977)
  10.  遊星からの物体X (1982)
  11.  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ (1984)
  12.  ミッション(1986)
  13.  アンタッチャブル (1987)
  14.  ニュー・シネマ・パラダイス (1988)
  15.  ディスクロージャー (1994)
  16.  めぐり逢い(1994)
  17.  海の上のピアニスト (1998)
  18.  オペラ座の怪人(1998)
  19.  鑑定士と顔のない依頼人 (2013)
  20.  ヘイトフル・エイト (2015)
  21.  ある天文学者の恋文(2016)

1964年から2016年まで切れ目なく映画音楽を作曲し、それぞれの音楽が独立していて、ジャンルを問わないところが彼の特徴である。彼を賛美する映画人の中には、彼をベートーヴェンやモーツァルトにたとえるひともいる。

筆者はマカロニ・ウェスタンの作曲家というイメージを持っていたが、本映画を観て決してそれだけではないことがわかった。「ミッション」や「ヘイトフル・エイト」を観ると壮大な交響曲を聴いているようである。

映画は157分(2時間37分)と長く、尻が痛くなったが、彼の業績を表現するには不足であった。これだけ数があると、選曲に監督の好みが出てくるのは仕方がない。「オルカ (1977)」や「遊星からの物体X (1982)」ってどんな音楽だったっけ、とかチャールズ・ブロンソン主演の「狼の挽歌 (1970)」の音楽って? 、と思うひともいるに違いない。

モリコーネを偲ぶにはそれぞれのひとが思い入れのある映画を2、3本DVDなどで観るしかないだろう。

(2023.1.16)


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