1996年のアトランタ・オリンピックで実際に起こった話である。
オリンピック公園で爆破事件が起き、爆弾の第一発見者の警備員、リチャード・ジュエルがFBIの捜査を受ける。嗅ぎつけた新聞社によって報道され、捜査中なのにも関わらず犯人扱いされる。
映画はマスコミによって英雄扱いされ、その後一転して犯人扱いされたリチャード・ジュエルを描く。
誰でも見に覚えのない疑いをかけられたら、どうしていいかわからずオタオタする。ジュエルには頼りになる弁護士がついていたからよかったが、日本でこのようなことが起こったら疑いを晴らすのに何年もかかってしまうのではないだろうか。とくにジュエルのような社会的に弱い立場の人では・・・。
クリント・イーストウッド監督はオタオタするジュエルを、闘争心旺盛な弁護士を、功名心からフライングするFBIの担当官と新聞記者を見事に表現する。
サム・ロックウェル扮する弁護士が功名心に燃える女性記者に「キス・マイ・アス」と捨て台詞を吐くシーンは胸がスーッとした。キャシー・ベイツ扮するジュエルの母親が記者会見するシーンでは、切々とした母親の心境があまりにも真に迫っていたため涙せずにはいられなかった。
ラストシーンも爽やかで131分の上映時間が長いとは感じられなかった。昨年の「運び屋」に続き、今年も観賞するに値する作品を世に出したクリント・イーストウッド監督は89才。来年も期待してしまう。
(2020.1.20)
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