ビートルズは日本公演の演奏をリアルタイムでテレビで観た。11才だったからファンではなかった。すごい有名なバンドの日本での特別公演ということで見た。初めから最後まで彼らの歌う姿から目が離せなかったという記憶がある。その後フォークやジャズに夢中になったりしたが彼らのファンになったという記憶はない。ただいつも彼らの曲が身の回りにあった。あまりに当たり前すぎてファンになる必要もなかったのかもしれない。
彼らのドキュメンタリー映画がロン・ハワード監督によって作られ上映されていることを知り見に行った。
上映館がものすごく少ない。現在上映しているのは下高井戸シネマのみである。馴染みのない映画館、初めて降りる駅。下高井戸シネマは住宅街のマンションの二階にあった。どれほど狭いんだろう。入って見たら意外に広く客席は120ほどで席もゆったりしている。
映画は2016年制作なので映像も音も修正されていて迫力のある映像と音楽が楽しめた。 英国の下町リヴァプールのロック好き少年たちがいつかは有名になることを目指して狭いクラブで演奏しているシーンから始まる。あっという間に有名になりアメリカのエド・サリヴァンショーに出演するまでになる。5,000人の会場でも間に合わなくなり、5万人のスタジアムで演奏するようになる。大半の観客は女性で演奏の間絶叫に次ぐ絶叫、音楽を聴いていないのか、という有様。これは武道館で行われた日本公演でもそうだった。
彼らのストレスは高まりある時期からスタジオ録音のみの活動になる。
この映画で新鮮だったのはジョン・レノンとポール・マッカートニーの歌う様子、リンゴ・スターのドラミングの様子である。ジョンのギターを弾きながら歌う様子は実に素晴らしかった。リンゴのスピーディで柔らかいドラミングの見事さを初めて知った。CDの音だけでは半分の価値しかないなと改めて思った。
ビートルズの音楽は2種類あると思った。一つはプレスリーのコピー、一つは活動中作った音楽。映画はプレスリーのコピーから出発して徐々に自分たち独自の音楽を作っていく様子を描いている。これは現在進行中ではわからないことだ。現在から過去を振り返って初めてわかることだ。ビートルズ以降の音楽家たちは時代の荒波に揉まれながら作られた極私的な音楽に影響されたのだと遅ればせながらわかった。
(2016.12.30)
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