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學而不思則罔 / 無人島へ持っていく本 / 縦と横の関係


---學而不思則罔---

「子曰、學而不思則罔、思而不學則殆」

(のたま)わく、学んで思わざれば則ち(くら)し。思うて学ばざれば則ち(あや)うし。

論語の為政(いせい)篇第二集に出てくる言葉である。

【學而不思則罔】

(くら)し」というのは網で捉えるということから、手の内に入れる、理解する、という意味になる。学んでも自分で考えることをしなければ、理解したことにならない、という意味である。

言葉では立派なことを言うが、行動が伴わない。世の中を見ているとそういう人が多い。国立大学を出てキャリアと言われる国家公務員になり、事務次官という国家公務員の頂点にいる人が、スーパーで買い物をしたときに、ついでに無料のポリ袋を大量に巻き取ってリュックに入れ、平然と持ち帰るということがあった。犯罪ではない。大量の買い物をしているのだから。だけどなんだかせこい。行政のトップにいる人にやって欲しくない行動である。

大学で大量の知識を取り込んで、優秀な成績で卒業した。知識は記憶の部分に残っているが、脳の自分で考える部分、もう少し深い場所には届いていなかった。勉強以外のことをやってこなかった人だろう。

【思而不學則殆】

派手好きで何事においても世間の脚光を浴びたい政治家がいる。オリンピックというのは脚光を浴びるのにうってつけの舞台である。

現在の日本の世界の中での立場や財政状態を考えると2020年のオリンピックは招聘すべきではなかった。コロナで一年延期になったときに中止すべきだった。強行したあげく費用は計画時の予算の2倍かかった。回収する見込みはない。全て税金である。

反省するどころか、冬季オリンピックを札幌に招聘しようとしている。自分たちの置かれた状況から目を背けて、脚光を浴びることだけしか頭にない政治家たち。

(あや)うし」というのは危険ににさらすという意味である。情動のみで知識を持たない者を指導者に選ぶと、国家財政を危険にさらし、国民の財産を危険にさらすことになる。

(2022.6.25)


---無人島へ持っていく本---

夏になるとよく雑誌などで「無人島へ持っていく本」という企画で著名人たちがこれぞと思う本を紹介している。

実際に無人島へ行ったら生き延びていくのが大変で、本を読む時間などないのでは、と思われる。

以前無人島ならぬ久米島へ行って困ったことがある。1ヶ月の予定で行ったのだが、数冊持って行った本が面白すぎて1週間も経たずに読み終えてしまった。面白すぎる本というものは繰り返し読むには耐えないことが多い。

さあどうしよう。絶望的な気分になった。次の休みの日に沖縄本島まで高速フェリーがジェット機に乗って買いに行くか。高速フェリーだと往復2万円、ジェット機だと往復3万円ほどかかる。島民割引だと半額で済むが、それでも1万円はかかる。離島の不便さを実感した。

久米島にも本屋くらいあるだろう。島内を一周してみた。一軒だけ本屋があった。本屋というより文房具屋の片隅に雑誌が置いてある程度の店だった。文庫本の棚に幅50センチメートルくらい文庫本が置いてあった。いずれも軽めの内容の本だった。

中に一冊だけ角川文庫版の「吾輩は猫である」があった。何度も読んでいるが、とりあえずこれでいいか。結局これ一冊で残りの3週間を過ごすことができた。

ということで無人島ならぬ久米島に一年間滞在するなら何を持っていくかと考えてみた。

難解でじっくり読んでもよくわからないものや、面白すぎて、すぐ読み終えてしまう本は向かない。長ければ良いというものでもない。「戦争と平和」や「カラマーゾフの兄弟」、「ドン・キホーテ」や「レ・ミゼラブル」などは長くて面白い。が話の筋が明快で分かりやすく、短期間に何度も読むと飽きてしまう。もちろんつまらない本は、初めから読む気にならないので向かない。

無人島へ持っていくのに理想的な本は、適度に難解で、適度に面白く、物語ではあるが著者の意見も述べられていて、それが自分にとって興味深く、多方面の分野に及んでいるものが良い。

ということで、以下のようになった。

  1. 魔の山(トーマス・マン)
  2. 吾輩は猫である(夏目漱石)
  3. 白鯨(ハーマン・メルヴィル)
  4. 死の家の記録(フョードル・ドストエフスキー)
  5. 国家(プラトン)

(2022.5.31)


---縦と横の関係---

人間関係には縦と横の関係がある。縦の関係は親と子供、上司と部下、先輩と後輩、師匠と弟子、先生と生徒などであり、横の関係は同級生、同期入社の社員、友人関係などである。

企業や官庁が新入社員を募集する時、重要な要素として、その者が縦の関係を大切にする人かどうかを観察される。企業は社員同士団結して会社と対立する人間よりも、上司の命令をよく守り、部下をうまく統率できる人間を求める。法人としての自己存続のためには当然のことである。

時間の経過と共に横軸の関係に変化が現れ始める。

人の向上心には個体差がある。ある者はいつまでも現状に満足しているだろうし、ある者は現状より上のものを求め始める。横軸の中で、縦の関係が現れ始める。横軸にいた者の一部は縦軸に移動していく。

時間の経過と共に横軸にいた者の人数が減り、縦軸の人数が増えていく。

年月の経過と共にさらに同列にいた者が減り、上下の位置にいる者が増えていく。

人間に限らず、動物は若い頃は群れ、年をとると孤立する。自然の摂理である。

年月の経過によって、自分に関係がある者たちがどのくらい残っているかは、個人によって異なる。縦軸にいた者も横軸にいた者も減少することは間違いない。

現役にこだわる企業人や政治家たちは、年をとっても縦軸の人脈を大切にし、会社を早期退職したり、組織からドロップアウトする人たちは横軸の人脈を大切にするのではないだろうか。

(2022.2.1)


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