夏になるとよく雑誌などで「無人島へ持っていく本」という企画で著名人たちがこれぞと思う本を紹介している。
実際に無人島へ行ったら生き延びていくのが大変で、本を読む時間などないのでは、と思われる。
以前無人島ならぬ久米島へ行って困ったことがある。1ヶ月の予定で行ったのだが、数冊持って行った本が面白すぎて1週間も経たずに読み終えてしまった。面白すぎる本というものは繰り返し読むには耐えないことが多い。
さあどうしよう。絶望的な気分になった。次の休みの日に沖縄本島まで高速フェリーがジェット機に乗って買いに行くか。高速フェリーだと往復2万円、ジェット機だと往復3万円ほどかかる。島民割引だと半額で済むが、それでも1万円はかかる。離島の不便さを実感した。
久米島にも本屋くらいあるだろう。島内を一周してみた。一軒だけ本屋があった。本屋というより文房具屋の片隅に雑誌が置いてある程度の店だった。文庫本の棚に幅50センチメートルくらい文庫本が置いてあった。いずれも軽めの内容の本だった。
中に一冊だけ角川文庫版の「吾輩は猫である」があった。何度も読んでいるが、とりあえずこれでいいか。結局これ一冊で残りの3週間を過ごすことができた。
ということで無人島ならぬ久米島に一年間滞在するなら何を持っていくかと考えてみた。
難解でじっくり読んでもよくわからないものや、面白すぎて、すぐ読み終えてしまう本は向かない。長ければ良いというものでもない。「戦争と平和」や「カラマーゾフの兄弟」、「ドン・キホーテ」や「レ・ミゼラブル」などは長くて面白い。が話の筋が明快で分かりやすく、短期間に何度も読むと飽きてしまう。もちろんつまらない本は、初めから読む気にならないので向かない。
無人島へ持っていくのに理想的な本は、適度に難解で、適度に面白く、物語ではあるが著者の意見も述べられていて、それが自分にとって興味深く、多方面の分野に及んでいるものが良い。
ということで、以下のようになった。
- 魔の山(トーマス・マン)
- 吾輩は猫である(夏目漱石)
- 白鯨(ハーマン・メルヴィル)
- 死の家の記録(フョードル・ドストエフスキー)
- 国家(プラトン)
(2022.5.31)
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