落語会期待の二人ということで今日の会は前売りで完売したようだ。外はかんかん照りの日曜日の午後、古書会館5階のらくごカフェの客席も熱気があふれていた。
まずは二人の雑談からスタートした。狭い舞台に二人が立つとそれだけでいっぱいになってしまう。吉笑の頭が天井につきそうだ。二人が何気なく話す落語会の噂話は興味深い。快調なスタートだ。
宮治の「壺算」は口跡も調子も良く笑いやすい噺だ。滑稽噺の似合う噺家だ。
吉笑は新作で「連立方程式」という噺。XYZの連立方程式を行間から読み解くという珍妙な話だ。京都教育大学教育学部数学科中退という経歴を彷彿する話。
仲入り後は吉笑の「十徳」。新作ではおやっと思う切れ味を見せた吉笑だが古典だと少々もたつくようだ。八五郎と大家さんの会話がトントントンとは進まない。会話の得意な噺家ならここが聴かせどころになるところだろう。
トリは宮治の「寝床」。楽屋でウトウトしていたらしく眠そうな目をこすりながら出てきた。それでも旦那が繁蔵を長屋に使いをやるところからは調子が出て話がトントンと進む。時にはやりすぎのところもあったがサービス精神たっぷりに滑稽噺を快調に話し終えた。
理論の吉笑vs情熱の宮治という好対照の二人であった。こういう実力派が二つ目に控えている。落語会の将来は明るいと思った。
(Tの言葉)
桂宮治
「壺算」
スピード感がすごく心地よかった。
壺屋を騙す時の流れるような詐欺口調がプロのようだった。
古典に忠実に演じながら、ちょいちょい自分色を出すのがうまいと思った。
これなら古典派のファンも違和感を感じず楽しめるのでは。
「寝床」
義太夫にやられる長屋の住民たちのリアクションが文句なしに面白かった。
旦那の義太夫を、電車のキューブレーキと十円玉をガラスにキーっとやった音を合わせて4倍にした騒音、という表現は非常にわかりやすかった。それを近距離で長時間やられたら一気に白髪にもなるし、胸にあざもできるわと納得した。
臨場感とスピード感を出す芸が得意な人なのかと思った。スカットするので定期的に聴きたい。
立川吉笑
「連立方程式」
発想がとてもユニークで面白かった。登場人物は家庭教師と男の子。数学が苦手な男の子に教師が自分で考えた問題を解かせるという生活の一場面を切り取った噺。
数学の問題なのに台本のように気持ちを込めて読んだり、文脈を読み解くなどの国語のような場面が斬新で、どこからそういう発想が出てくるのか、感心するばかりだった。
勉強している場面しかないにも関わらず大変笑った。吉笑ワールドに引き込まれた。
「十徳」
おなじみの八っあんと隠居噺だった。
古典もやるんだーと思った。上手だった。庶民のたまり場である床屋でみんなでバカ話をする場面は面白くもあり会場が和んだ。
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