じゃんけんは口跡の良いはっきりした口調で心地よかった。「元犬」は前座噺の定石でどこでも止められる便利な噺だ。
三遊亭兼好も口跡の良いはっきりした口調で喋る噺家だった。今日の舞台深川江戸資料館という江戸情緒たっぷりの場所で口演するにはぴったりの話口調である。江戸っ子というのにぴったりの人だ。福島県会津若松市の出身で28歳の時に入門したとは思えない。
「ちりとてちん」は滑稽噺、「佃祭」は人情噺とそつなくこなしこれぞ落語という話しっぷりだった。ただ上手いんだけど何か足りない。本人の癖というかそのひと独特のもの、他人にはないそのひとの感覚が欠けているように感じた。噺をうまく話せるんだけど彼独自の解釈というものが欠けている。志らくや喬太郎や談笑にあって兼好にないものはそれだ。
講談の神田春陽は「楠の泣き男」、楠正成の色々な話の中の一つだろう。講談は久しぶりだが実に口調がよく話を聞き入ってしまう。気持ちがいいほど口調が良い。落語と似ているが何か違う。講談師が減っているのだろうか寄席でもなかなか見ることがない。日本の大事な芸能だ、廃れないでほしい。それには我々が寄席に足を運ぶしかない。 |