連休3日目。渋谷区文化総合センター・伝承ホールに大西順子ファンが集まった。
久しぶりにジャズシーンに復帰したとは言っても出る舞台は限られている。ファン待望の舞台である。場所は渋谷の伝承ホール。300席あまりの小さなホールである。ピアノトリオを聴くには最適の大きさである。1,000席以上のホールだと生の音を聴くというよりPAで作られた音を聴くことになってしまう。
まずは若手からスタートということで栗林すみれトリオ+山本玲子。今日のコンサートのテーマは「Jazz 100年の名曲」。出演者はそれぞれJazzの名曲を用意している
。
栗林すみれは「オール・ザ・シングズ・ユー・アー」「ワルツ・フォー・デビィ」とスタンダード曲から入る。彼女は見るからに楽しげにピアノを弾く。スタンダード曲の合間に自作の曲も演奏する。「森の妖精」「ワイルド・テイル」。自作の曲を演奏するときは音が張って躍動感がある。女性ピアニスト期待の新人である。
次は山本剛トリオ+小林桂。軽く弾いているように見えるが山本剛のピアノはめちゃくちゃスイングする。ベース奏者香川裕史、ドラム奏者石若駿を加えたトリオはスイング感あふれる演奏を展開する。「ライク・サムワン・イン・ラヴ」「キャラバン」「ミスティ」…、思わず体が動いてしまう。
今夜のお目当ては大西順子である。直前に入ったトイレでも大西はどんな演奏をするんだろうという話で持ちきりだった。
いきなり弾き始めたのは「エイプリル・イン・パリ」。ピアノの音が全然違う。一つ一つの音がはっきりしていて揺るぎがない。クラシックのピアニストの音を聞いているようだ。
次の曲は菊地成孔作の「ティー・タイムII」、セロニアス・モンク作のきわめつけ「ラウンド・ミッドナイト」と続く。新作、自作、スタンダード曲にかかわらず大西順子のピアノの音は暴力的なまでに強い。スイング感はないが緊張感に満ちている。ジャズというよりクラシック音楽か現代音楽を聴いているようだ。
最後の曲「ユーロジア」では際限もなくくねりまくるピアノのフレーズにコルトレーンのサキソフォンを連想してしまった。
大西順子が復帰したことで日本のジャズシーンは一つステップアップした。
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