平成の爆笑王春風亭昇太の独演会である。
いつもながら普段着で出てきての「オープニングトーク」から始まった。特に何ということもなくダラダラと話すのだが無性に面白い。芸を持っている人は普通に話しても面白い。逆の場合もあって何を話してもつまらない落語家もいる。いつもは10分くらいで切り上げて前座に譲るのだが今日は20分くらいやった。 前座の昇羊は5月に二つ目になるだけあって落ち着いていてそれなりにおかしかった。「初天神」は誰がやってもそれなりにおかしくなる噺だ。昇羊は25歳になったばかり、2012年に入門して4年めで二つ目だから将来楽しみな落語家だ。
昇太の「ちりとてちん」は面白かった。滑稽な人物をこれでもかと言わんばかりに思いっきりデフォルメして表現するのが昇太のやり方だ。腐った豆腐をこれでもかという嫌な顔で食べる表情が漫画的でおかしい。昇太の独壇場である。
ここで仲入りかと思ったら違った。噺が終わると立ち上がり、羽織と着物を脱ぎ始めた。あれあれっと思ううちに今まで来ていた着物を丸めて紐で縛り、ボールにしてしまった。そのボールを高座に置くとモーションよろしくフリーキック並みに楽屋に蹴り込むといつの間に用意したのか新しい着物にスルスルと着替え、イチローのまくらから「力士の春」に入っていった。なんとも騒々しい落語家である。
「力士の春」は昇太が二つ目の時に作った噺で30年前に作ったものにしては現代にも通用する話だった。母親が子供を小さい頃から力士として育て上げるという話だがこれは文章にしたのでは面白みが伝わらない。ぜひ昇太の高座を聴いてもらいたい。
「崇徳院」は中高校生の頃の異性に対するドキドキする気持ちはなんだったんでしょうねー、というまくらから始まった。恋煩いで寝込んでいる若旦那にガサツな八っつぁんが見舞いに来る。「こいわずらい」とささやく若旦那に「アリババと40人の盗賊?」と聞き返す八五郎。この辺から昇太独特のドタバタが始まる。面白おかしいだけが落語だ。昇太の落語を聞くとそう感じる。いさぎよい落語家である。
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