前半「居残り佐平次」後半「品川心中」という品川の遊郭でまとめたブログラムである。たっぷり遊郭の世界に浸ることができた。
「居残り佐平次」は2013年12月東京芸術劇場シアターウエストでやった林家たい平の噺が印象的だった。志らくはどのようにこの話をやるのかと期待をしていた。映画「幕末太陽伝」の話からフランキー堺の思い出をまくらに最初の部分を省略気味に入っていった。ところどころダジャレをはさみながら比較的正攻法に演じた。志らくの特徴は演じるところにある。観客は早口で語られる大勢の登場人物を間違えることなしに話を聴く。それは志らくの演ずる力が優れているからだ。前座が話すと誰が誰だかわからなくなることがある。そういう時は話の筋を追いかけるだけになり笑うどころではない。志らくは口調、表情、身振りのちょっとした違いから的確に人物を描き分ける。
たい平の「佐平次」は力わざだった。人物を描き分けるのではなく佐平次になり切って佐平次の独白で押し通した。志らくの「佐平次」は巧みに周りの人物を表現しながら佐平次の軽さを描いていた。最後に花魁たちが遊郭の2階から佐平次を見送るシーンは映画の俯瞰から引いていく手法を応用していて映画好きの志らくらしい演出だった。
「品川心中」は容色に陰りが見えてきた花魁の話で、外からは華やかにみえても中にはいるとそうでもない。今は夏の真っ盛りでもやがて秋が来て冬が来る。くすぐりはあるが基本的には寂しい噺である。落語なので寂しい話や残酷な話はあまりやらない。「品川心中」は最後までやることはあまりない。だいたい途中のドタバタのところで落ちを付けてやめてしまう。
今回は最後までやった。面白おかしいだけが落語ではない。江戸の庶民の生の感情を表現するのが古典落語だ。志らくはそういいたいのではないか。
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