立川志らく独演会  一覧へ


チラシ

午前中は晴れていたが午後からは降ったりやんだりののはっきりしない天気。今回の舞台は京都芸術センターの講堂という珍しい場所である。明治2年に設立された明倫小学校が閉校したときにその施設を利用して京都の芸術文化振興の拠点にしようという理念のもとに作られた施設である。入ってみると木造の教室は昔のままに再現されている。廊下を歩くとギシギシ音がする。古いものを大切にする京都らしい建物である。

初めはらくみんの「二人旅」。特に筋があるわけではない。ダジャレを言いながらの二人旅である。どこで終わってもいい。前座向きの噺である。入門して1年半というらくみんはそつなくこなした。

志らくの開口一番は時事ネタのまくらから談志の得意だった「源平盛衰記」に入っていった。談志がそうだったように講談調のところは立て板に水、実に滑らかに進む。脱線しながら時事ネタを織り込んでいく噺だが、時事ネタが新鮮で心地よい。ところどころ昭和のネタが入ったり、得意の映画ネタが入ったり、自由自在に話が飛ぶ。

壇ノ浦で平家が惨敗し、しとしと降る雨の中を向こうから鼻歌を歌って踊りながら来る者がいる。これがなんとシンギング・イン・ザ・レインを歌うジーン・ケリーなのだから愉快だ。

観客のひとりひとりの頭の中にそれぞれのイメージを描き出すという落語独特の表現である。このシーンを小説でやったり、映画でやったりしたら不自然にならざるを得ないだろう。落語だとごく自然に壇ノ浦でジーン・ケリーを踊らせることができる。

トリはプログラムで予告した「文七元結」。円朝作、古典落語の名作だ。

大勢の登場人物を難なく演じ分ける。特に左官の親方と女房のやりとりはリズムに乗って名調子だ。親方と女房が言い争っているところへ吉原からの使いがぬっと入ってくるところなどはとてもひとりでやっているとは思えないほど鋭い場面転換だ。

吉原に身売りした娘が不幸になる暇がないほど急速な場面転換であっという間に大団円を迎える。万事めでたしめでたし、観客も安心して家路につくことができる。


(演目)

  • 二人旅-------立川らくみん
  • 源平盛衰記---立川志らく
  • 仲入り
  • 文七元結-----立川志らく

(時・場所)

  • 2016年2月21日(日)
  • 14:00〜16:00
  • 京都芸術センター・講堂


<厩火事.com>
Copyright(C) 2012 Umayakaji.com ALL rights reserved.