土曜日の夜、上野の鈴本演芸場へ行った。
チケット売り場の前は開演前から並んでいた。寄席は廃れたという説もあるがそうでもないようだ。
今夜は喬太郎がトリとあって楽しみにしていた助六弁当は早くも売り切れになっていた。
開口一番は三遊亭わん丈の「初天神」、前座にしては達者な話しぶりで、たこを揚げるシーンは結構おかしかった。
次は柳家小太郎の「やかん」。あれ、さっき切符売り場の前を通った奴じゃないか。落語家は普通の格好をしているときは一般の人と見分けがつかない。話ぶりは手慣れたもので知ったかぶりの大家さんがおかしかった。
次は紙切りの林家楽一。題材は客のリクエストだから即興だ。「スキーのジャンプ」「半額になったビーフカツを待つ主婦」「出初式」、それぞれよくできていて見事にものだ。出来上がりは以前は黒いバックの額に入れて見せたものだが、今回はなんとプロジェクターで壁に写して見せる。大きくなるから後ろからでも見やすかった。
一人15分だからどんどん出てくる。次は春風亭正朝の「浮世床」、これも軽い噺だ。床屋の待合室で若い衆がいろいろな話をする。一人黙々と本を読んでいる者をからかう噺。
柳家さん助の「阿弥陀が池」。シャレの噺。
柳家小菊の「三味線漫談」漫談というほどしゃべらない。俗曲や都都逸を唄うのみ。それぞれの唄に味わいがあってへたにしゃべられるより気持ちがいい。
春風亭百栄は新作落語で「コンビニ強盗」。ヘタウマなしゃべりでコンビニに強盗に入った男が結局弁当とミネラルウォーターを860円で買って出てしまうという噺。強盗もマニュアルにはかなわないといったところ。
前半最後は三遊亭歌奴の「大岡政談」人情さじ加減の巻。歌奴は口舌がはっきりしていてこういう噺に向いている。ここで仲入りとなる。鈴本は椅子の前にテーブルがついていて自由に飲み食いができる。昔の寄席の良さを残している。早速ビールとつまみを買いに行く。
中入り後はダーク広和の奇術。トリ前は色物中心。トリの邪魔になるような重いものは出さない。
桃月庵白酒の「三十石船」も同様。微妙にトリの噺とつながっていた。
漫才のホームラン。寄席で楽しいのはテレビでは見ることのできない芸人が見られることだ。60才と67才のベテランの漫才コンビは何よりも安定感があった。
本日の大トリは柳家喬太郎。仲入りの時に驚いたことがある。女子トイレの前に並んでいた女性たちが皆若かった。通常はおばさんたちが並ぶ場所に20台30台の女性たちが並んでいた。落語会ではこういうことは極めてまれである。喬太郎の人気の高さを再認識した。
演題は「任侠流山動物園」。冒頭おじいさんと孫が流山動物園にいるシーンから始まる。孫は「豚と牛と鶏しかいない動物園なんてやだよ」といい、おじいさんは「だけどすいててよく見えるだろ」となだめる。流山動物園の平均入場者数1.8人、今日はそれを上回ったと中では喜んでいる。だけど入場者2人では俺たちの飯代は出ないんじゃないか? と豚の豚次は怪しんでいる。
よくこんなおかしい噺を考えるものだと思って調べてみたら原作は三遊亭白鳥。羽織のたもとを変な形にして白鳥の羽根の絵を描いている落語家だ。原作は50分くらいあるらしいが今晩は寄席なので30分でやらねばならない。30分でも十分面白かったがもっとたっぷりやってほしかった。
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