六代目談笑独演会  一覧へ


チラシ

立川談笑は平成の爆笑王だ。今日の津軽弁版「金明竹」を聴いてそう思わなかった人はいないに違いない。100人の観客のすべてが腹を抱えて笑い転げていた。年配のおじさん、おばさんから女子高校生にいたるまで。これほど会場全体が一体化した舞台は久しぶりだ。会場がそれほど大きいとは言えない、むしろ小さい部類だが寺の本堂という非日常的な空間だったからかもしれない。

200年前の落語家、初代竪川談笑の墓がここ正伝寺にあり、それを3年前に建て替えたという。その時に第一回目の「芝浜落語会」(初代談笑追悼落語会)を開催したと正伝寺住職はパンフレットに書いている。今年が四回目の落語会である。演者は六代目立川談笑、今乗っている落語家だ。

会場間際の5時5分前ころ小学生くらいの男の子と奥さんを連れた談笑が並んでいた我々の前を横切って寺の事務室に入っていった。普通に浜松町から歩いてきたんだ。あまりに何気なく来たんでほとんどの人が気が付いていないようだった。

本堂

津軽弁版「金明竹」の後は仲入りなしで「子別れ(昭和30年代版)」。古典落語の傑作「子別れ」も談笑はその通りに演らない。舞台は昭和30年代後期、高度成長時代の真っただ中だ。子供は自分のことを「あたい」とは言わない。棟梁がたぶらかされる女も女郎ではなく、キャバクラの女である。棟梁も大工の棟梁ではなく、建設現場の親方である。この設定でどうやってあの落ちに持って行くのか?

煙草に火をつけようとしてその手を止め、吸うのはやめた、また猿になるといけない。といった絶妙な落ちを考え出す談笑だ。期待感は高まった。

そしてあの落ちだ。それまで泣くチャンスを待ち構えていた100人の観客は安心して泣くことができた。古典落語をそのまま演ったのでは談志に弟子入りした価値はないとばかりに談笑は我が道を行く。

前座の笑坊は前座噺「寿限無」を前座らしい初々しさで語った。親しみやすい愛嬌のあるキャラの笑坊が師匠ばりの「独創」を身につければ将来有望となるに違いない。

寺の本堂という独特の空間、100人余りの観客、仲入り抜きの落語会は観客に我に返る暇を与えず、濃密な2時間であった。帰りがけに初代談笑の墓を詣でた。ライトアップされた墓はなんとなく笑っているようだった。

チラシ チラシ 初代談笑の墓

(出演)

  • 寿限無-----------------立川笑坊
  • 金明竹-----------------立川談笑
  • 子別れ(昭和30年代版)---立川談笑

(時・場所)

  • 2015年12月13日(日)
  • 17:30〜19:30
  • 芝 正伝寺 本堂


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