立川談笑独演会  一覧へ


チラシ

立川談笑は平成の爆笑王だと思っていた。今日の3題の演目からはそれが感じられなかった。もう少し皮肉で悲観的または考え深い談笑がいた。

「饅頭とか怖い」は「饅頭怖い」をバージョンアップしたような噺で饅頭にいくまでの話が長い。長屋の連中が延々と自分の嫌いなものについて話す。本題の饅頭よりもこちらの方が面白いほどだ。中でも面白かったのはネズミが嫌いという話で、ネズミは虫偏じゃないだろう、ミッキーマウスは人偏だけどよ、とか、ナチスの拷問ではネズミを使うとかいう話が興味深かった。饅頭ではどうなるのかと思っていたらいろいろな種類の饅頭が出てきた。中には饅頭でないものも。これでは最後に苦ーいお茶が怖いという落ちは出てこないだろうと思っていたら案の定苦いお茶ではなく…。

落ちの後引き込むかと思ったらそのまま居続け、「天災」に入っていった。短気でDVの常習者である八五郎が大家さんが紹介してくれた易者のところへ行くと…。ここから八五郎と易者のやり取りが延々と続く。そこで短気な自分を反省した八五郎は隣人の夫婦げんかの仲裁に入る。

演目

易者から諭されたことを実行しようとするがなかなかうまくいかない。本来の噺ではこちらの方がメインだと思うが、談笑の「天災」では前半の易者との掛け合いがメインになる。八五郎にやられて半死半生になりながらも更生させようとする易者の存在が神々しくもあり、不気味でもある。この辺を語る時の談笑は役に入り込んで迫真の演技をする役者のようだった。

ここまで1時間半、長い前半の後は「ろくろ首」。トリでやるには軽い噺かな、と思ったがここでも本来の噺から逸脱する。談笑は古典落語を普通には演らない。ろくろ首に遭って逃げ帰った与太郎に大家さんがおっかさんが首を長ーくして待ってたよというと、うちにもろくろ首がいた、といって落ちになるという本来の噺にはならない。新婚初夜に新郎に逃げられた新妻がかわいそうでならない、と談笑はいう。それではどうなればいいのか。こうではないかというのが談笑の考えで、実に人間的な落ちになる。そこには若い女の子の犠牲の上に成り立つような噺は演らないという談笑の決意が感じられた。

古典落語をそのまま演ったのでは現代から取り残されてしまう。という危機感から談志は師匠を見限り立川流を創った。その信念は弟子たちに受け継がれ、師匠談志よりも先鋭的に実行している。立川流の弟子たちの会では客層が若い。これからは古典も新作も同じレベルで語られ、受け継がれていくと思った。


(出演)

  • 饅頭とか怖い---立川談笑
  • 天災-----------立川談笑
  • 仲入り
  • ろくろ首-------立川談笑

(時・場所)

  • 2015年12月5日(土)
  • 18:00〜20:30
  • 国立演芸場


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