志らく、喬太郎 二人会  一覧へ


演題

立川らく葉は志らくの17番目の弟子だそうである。「山号寺号」というのは初めて聴く噺だ。言葉のしゃれみたいなものをつなげていく噺でいかにも前座噺だ。前座の常で大きな声を出しているのだが聞き取りづらい。大御所になると声を潜めて話してもはっきり聞き取れる。ひそひそ声が聞き取れるかどうかで修行の成果がはっきりわかる。

「二階ぞめき」というのは有名な古典落語だが今まで聴いたことがなかった。自宅の二階に遊郭を作って大尽遊びをしようという若旦那の話だ。遊郭を作るほどの広い二階があるものかどうかはともかくこれが遊び人の若旦那の究極の夢なんだろう。自宅の二階だから花魁や客引きがいるはずもなく、ひとりで客と花魁を演ってしまう。しまいには他の客とケンカまでしてしまうというシュールな噺だ。

江戸時代の作家が考え出した噺だろうけど、面白いことを考え出す想像力は昔も今も変わらないと思った。

何をやるか予想の付かない噺家柳家喬太郎は「真景累ヶ淵」をおどろおどろしく始めた。明治時代の落語家・三遊亭圓朝作による長大な因縁噺の発端「宗悦殺し」。すべてがこの男から始まる張本人、深見新左エ門。この複雑な悪人を喬太郎は内面の演技で表現する。大きい声低い声ささやく声つぶやく声を自由自在に使って悪の連鎖を見事に表現する。

中入り後は「松倉町の捕物」を演るのか「豊志賀の死」を演るのか、それとも新作か…、結局演ったのは「茶代」という前座噺であった。与論島に行ったという長いまくらから始まったにしては竜頭蛇尾で本題の噺は5分で終わってしまった。二人会のつらいところだろう。独演会なら新作をじっくり演ってくれたのではないか。

志らくのトリは名作「富久」。暮れも押し迫ったころの噺で季節的には少し早いか。得意のスピーディなべらんめえ調で立て板に水、あっという間に会場は志らくの世界になってしまった。観客は安心してその世界に浸っていればよい。富くじが当たってめでたしめでたし、どの観客も満足して家路についたことだろう。


(出演)

  • 山号寺号------立川らく葉
  • 二階ぞめき----立川志らく
  • 真景累ヶ淵 宗悦殺し--柳家喬太郎
  • 仲入り
  • 茶代----------柳家喬太郎
  • 富久----------立川志らく

(時・場所)

  • 2015年11月19日(木)
  • 19:00〜21:10
  • 赤坂区民センター・区民ホール


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