立川志らく独演会  一覧へ


みなみホール入口

落語に粗忽者の話はつきものである。 「粗忽長屋」「粗忽の釘」「転宅」「堀の内」とたくさんあるのだが長屋の住人が主人公のことが多く、今回の「松曳き」のような武士が主人公の話は少ない。

三太夫と殿さまの掛け合いが面白い噺なのだが、らく次のテンポが悪く面白いところをたたみかけてくれない。初めはゆったりとそして佳境に入ったら加速度をつけてたたみかけてくれないと笑うほうとしても勢いがつかない。

「二人旅」は弥次さん喜多さんみたいな二人連れが旅をする話。ストーリーがあるわけでもなく、何何と掛けてなんと解く、のような掛け合い問答をしながら旅をするだけの噺で前座噺だろう。このような軽い噺は二つ三つ続けてするのがいつもの志らくだが今日は一つでやめて早々に仲入りになった。トリは何を演るんだろう。

吉原に居続けて三日ぶりに自宅に帰ってきた大工の熊さんが女房に謝るところから話は始まった。初めは低姿勢だった熊さん、女房にやり込められているうちにだんだん腹が立ってきて開き直る。逆に女房を追い出してしまう。ひどい話から始まったなー、と思っていたら熊さん女郎を家に引き込んで女房にしてしまう。その女房がひどい女で…、というところで噺の題がわかった。「子別れ」だ。「子別れ」じゃあハンカチが必要だから早々に用意した。

演目

ひどい女に懲りた熊さんは改心して仕事に精を出す。3年後棟梁になった熊さんは道で自分の息子が遊んでいるのを見る。あの時6才だったから今は9才になっているはずだ。前半は登場しなかった子供がここで登場し重要な役どころを担う。子供がきっかけとなって以前の女房とよりを戻す。子は<(>かすがい<)>である。という見事な落ち。「子別れ」は古典落語の名作である。

長い噺のため前半では子供がほとんど登場しないにもかかわらず「子別れ(前)」「子別れ(後)」と二つに分けて演じられることが多い。

今日は通しで全部演ってくれた。50分間観客は人情噺の名作をハンカチを握りしめながらたっぷりと聴くことができた。

落語ファンには今日の一席はこたえられなかったろう。

桜島 おまけ

後日談がある。

その晩、鹿児島の街である店にお酒を飲みに入った。鹿児島は芋焼酎に黒豚、地鶏がうまい。落語の話をしている我々に店のお姉さんが話しかけてきた。どこから…、何をしに…。落語を聴くためにわざわざ鹿児島までというのが珍しかったらしい。ただ志らくという落語家は知らなかったようだ。落語は「笑点」しか知らないという。年を聞いたら18才。それでは無理もない。

帰りがけ、お皿にデザートを乗せてきてくれた。それが右の写真である。へー、しゃれてるなー。何よりの歓迎の挨拶だ。一辺で鹿児島が好きになってしまった。

帰宅後あることを言うのを忘れていたと気が付いた。立川志らくは「笑点」を作った立川談志という落語家の弟子なんだよ。


(演目)

  • 松曳き---立川らく次
  • 二人旅---立川志らく
  • 仲入り
  • 子別れ---立川志らく

(時・場所)

  • 2015年7月11日(土)
  • 15:30〜17:30
  • みなみホール


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