春風亭昇太独演会  一覧へ


チラシ

落語を聴いて半年くらい考えさせられることがある。大笑いするが翌日にはけろりと忘れてしまうこともある。今日演った昇太は後者の代表だ。その時代の爆笑王といわれた噺家はこの部類に入る。

昇太は平成の爆笑王だ。

いつも昇太は開演時間前か開演時間ぴったりに普段着で出てくる。そして普通に最近あったことをしゃべる。昇太独特のまくらだ。

前座の昇也は達者な話しぶりだった。安心して聴いていられた。酒のつまみをどうやってタダで仕入れてくるか。ばかばかしい話を次から次へ繰り出して飽きさせない。かなり点数が高いのではと思ったが、後から出てきた昇太はさかんにダメを出していた。

今日の昇太は落語三題。仕事というテーマでまとめてきた。

まずはスラップスティックの代表的な噺、「鷺とり」。いつ頃作られた噺か知らないが昔から筒井康隆みたいな作者がいたんだろう。日本人は生真面目でユーモアを知らないという人がいたらこの噺を聞かせてやりたい。こんなめちゃくちゃな噺を作った人がいたんだ。「鷺とり」を仕事にする人がいるわけがない。

出し物

そのあと引っ込むかと思ったらやおら座布団の上に立ちあがり着物を脱ぎ始めたのには驚いた。襦袢一枚になり、いつの間に用意したか先ほどとは違う色の着物を着だした。あっという間に着替え、座布団に座ると次の噺「リストラの宴」を始めた。人の意表を突きたくてたまらないようだ。

これは新作落語だ。リストラを題材にしたまさに仕事の噺だ。

トリは「茶の湯」。現役を引退した旦那がこれからは趣味に生きようと取ってつけたように茶道を始める。年を取ってから始める趣味はプライドから人に聞くわけにいかずうまくいかない。茶道がだんだんハチャメチャになってゆく。畑を耕しているお百姓が飛んできて頬に付いた「利休饅頭」をはがすと、「また茶の湯か」とつぶやくラストがたまらなくおかしい。

会場の外に出るまでおかしくて頬が緩むのを止めることができなかった。


(曲目)

  • 寄合酒---------春風亭昇也
  • 鷺とり---------春風亭昇太
  • リストラの宴---春風亭昇太
  • 仲入り
  • 茶の湯---------春風亭昇太

(時・場所)

  • 2015年2月10日(火)
  • 19:00〜21:20
  • かめあり リリオホール


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