小かじの「二人旅」は印象が薄かった。だが小かじは元気のいい話しぶりなので好感が持てた。
三三の「浮世床」はまくらも含めて面白かった。三三はまくらや本題の話しぶりがますます小三治に似てきた。前回の「文七元結」があまりにはまっていたのでこの人は人情噺が得意な人なのかな、と思っていたが今日の2題は滑稽噺だったので小三治同様万能型の噺家なのだと思った。
喜多八は前回馬鹿に面白かったので楽しみにしていた。今日も前回同様「親子酒」だったのでまたかと思ったがこの人の酒の話は面白い。
ここで仲入りとなり後半は三三の「粗忽の釘」だ。今日の三三は軽い噺に徹するようだ。それでも小三治ゆずりの滑稽噺は面白い。
トリの喜多八は何をやるんだろう?と思ったら、廓話をやります、といってはじめたのが「お直し」だった。普段あまり聴くことのない話なので何の廓話かな?と思いながら聴いていたら話がだんだん破滅的になってくる。もしかしたらこれは志ん生が演って文部大臣賞を取ったあの「お直し」ではないかと思い始めたのは噺も半ばを過ぎたころだった。吉原のトップの花魁が年を取り容色も衰え、「蹴転(けころ)」と呼ばれる最下層の色街に落ちていくあたりだ。
いざというときの女は強く、しぶとい。普段は威勢のいいことを言っている男は追いつめられると弱く、もろい。そのへんのところをこの噺家はじめつかずにさらっと表現する。
最後に酔っ払いが二階に向けて「直してもらいなよ〜」と軽い調子でいう台詞でこの地獄めぐりのような噺は終わる。
筆者にはその言葉がまるで天上から地獄に差した一条の光のように思われた。
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