立川志らく独演会   |
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立川志らくの独演会はひとつのテーマで統一されている。 そのことに気付いたのは2012年の銀座ブロッサムでの独演会の時であった。歌舞伎ネタ「中村仲蔵」と「淀五郎」を前後して演り、登場人物を関連付けて芸道に生きる者の苦しさと醍醐味を表現して見せた。 今年3月の銀座ブロッサムでの独演会では「長短」「笠碁」「柳田格之進」とつなげ「ともだち」というテーマを繰り広げた。後味の悪い結末になるため敬遠されがちな「柳田格之進」をあえてトリにもってきて勝負した志らくにいさぎよさを感じた。ばかりかマイナスとマイナスを掛け算してより大きなプラスにしてしまったのに驚いた。 今回の独演会では「死神」「たまや 〜天国から来たチャンピオン〜」という組み合わせで生と死、運命というテーマを繰り広げた。 「死神」は有名な古典落語で、江戸から明治にかけて活躍した落語家三遊亭圓朝がグリム童話を元に作った噺だという。確かに死神という概念は江戸時代には無かったろう。 ちなみに有名な「芝浜」も圓朝作の噺で客からもらった三つのテーマをつなぎ合わせて即興で作ったものだ。今では古典といわれる噺も当時は新作だった。圓朝が何故数多く新作をやったかというと、あまりのうまさに嫉妬され、前に上がった噺家が圓朝がやるつもりだった噺をやってしまったからだという。 トリの「たまや」というのは初めて聴いた。「たが屋」なら知っているのだが。と思って調べてみたら「たまや」は映画「天国から来たチャンピオン」の筋を江戸時代の花火師の世界に移し替えた噺で、志らくの得意な「シネマ落語」の一種だった。とはいっても登場人物の花火屋の親方や職人の辰吉が完全に落語の世界で呼吸していて、これは古典落語だといわれても誰も疑わないだろう。 どちらかというと滑稽噺の得意な志らくだがこのテーマをこういうプランで演ろう、という思いに滑稽噺とか人情噺とか新作落語とかいうジャンルを超越した迫力を感じた。 これからも立川志らくの独演会から目が離せない。 |
(演目)
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(時・場所)
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