チェロの独奏が始まってアッと思った。こんな音だっけ? チェロの音がやけに割れているのだ。
初めの数分間変に割れていた音は曲が進むにつれてだんだんおさまり、普通のチェロの音になった。
開始早々の出来事がこの日の演奏会全体を暗示していた。
オーケストラの音が大きい割にはメリハリがない。
昔聴いたチェコ・フィルとヨー・ヨー・マが演奏したチェロ協奏曲は泣いたり甘えたりといった人間的な感情に満ちていなかったか?
次はお目当てのベートーベンの七番だ。
これで一週間の心の垢を落とそうと考えたがそうはいかなかった。
曲は快調に進むのだが音が大きいばかりでメリハリがない。古代の舞踊音楽のような第四楽章を聴いても心が躍らない。
前半後半を通してCDを聴いているような味気ない演奏に聞こえた。
今日はこちらに音楽を聴く準備ができたいなかったようだ。
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