三者三様、特長が出ていて質の高い落語会だった。
花緑は若く見えるが年齢は三三と同じ、40才だ。
「祇園祭」は柳家のお家芸、滑稽ものだ。 花緑は京都の大店の旦那と江戸の若者の対比を大げさに演じて実に面白かった。
大げさだが下品にならないところは五代目小さんの孫という家柄の良さか。
喬太郎は二人より10才年上の50才。あぶらの乗り切った年齢だ。
「花筏」も滑稽もので、普通に演るだけでも面白いのに喬太郎はさらにひと工夫する。
落語の語り口調の合間に本音を呟くような調子で地声を入れる。それがなんともおかしい。
座布団を持って立ち上がり図解するように説明したりする。普通の噺家とは少し違うようだ。
前のふたりがまくらも含めて軽味で勝負したのに対しトリを取った三三はまくらなしでいきなり本題から入った。
ばくち場から朝帰りした亭主に女房が"娘が一晩たっても帰って来ない"と訴える。
人情噺の大ネタ「文七元結」だ。
左官の亭主と女房、鼈甲問屋の主人と番頭と奉公人の文七、女郎屋の女将と左官の長兵衛と娘のお久。
それぞれの事情や思惑が交差して濃密な人情噺が展開する。
三三は40分間見事に語り切った。
噺が進むにつれて周りから鼻をすする音が聞こえ始め、クライマックスでは会場全体が酔いしれていた。
三三を聴くのは10年ぶりだが、うまくなったものだ。
観客たちは今聴いた噺の感想を語り合いながら温かい気持ちでそれぞれの家路に着いた。
|