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プログラム1

らく次の噺は覚えていない。

ちゃんと聞いていたのにまるで噺の内容を覚えていない。

滑稽ものだか人情ものだかも覚えていない。こんなことは珍しい。

この会場は狭い割には音響が悪い。 口調は良かったと思うのだが何を言っているのかわからないというもどかしい聞こえ方をする。

ちなみに志らくの噺も聞き取りにくかった。大工の棟梁が早口で啖呵を切るところはほとんど聞き取れなかった。 小三治の噺などは後ろの方の席でもよく聞き取れたものだったから発声の問題もあるのかもしれない。

プログラム2

ということで前座のらく次は省略する。

志らくの開口一番は「厩火事」だ。よく知られている割にはあまり高座では演られていない噺だ。 志ん生の名口調で知られているこの噺を志らくがどのように演るか楽しみだった。

まくらで志らくはこういった。

同じ分野では弟子は師匠に勝てない。師匠の小型版になってしまう。だから談志は小さんから離れて自分の一派を立ち上げたのだ。小三治は滑稽噺では小さんに勝てない。

一つの見解だと思った。

志らくはあらゆることについて自分なりの考えを持っている。談志もそれを買っていた。人を褒めない談志が若いころの志らくを褒めていたのは芸の力よりもその考え方を認めていたためだろう。

志らくは「厩火事」を一般的に演られているような人情噺にしない。滑稽話に徹している。 おさきさんが馬鹿なら大家も馬鹿、亭主はもっと馬鹿という表現をする。 志ん生の「厩火事」に慣れた私には少し物足りなかったが、各所で志らく独特の滑稽なしぐさが光っていた。

中入り前の噺は「大工調べ」。 プログラムの解説で志らくはこの噺のテーマを「正義=棟梁」と「正論=大家」の対決とみなし、正義をかざす奴は追い込まれると壊れる、それを表現したい。と述べている。 今までこの噺を「正義=棟梁」が「正論=大家」をやりこめる噺、と解釈していたので志らくの解釈は新鮮であり、驚きでもあった。

トリは「抜け雀」、今日のプログラムは軽くておかしみのある噺でまとめてきた。 この噺も志らくは人情噺になるのをひたすら避けている。元の噺にないようなスラップスティックなギャグをいれて滑稽噺にしている。演る噺家によっては善い行いをすると報われるという「花咲か爺さん」のような噺になりがちである。志らくは絵師に、「女将さんは眼つきの悪い女」と言わせたり、「亭主は好きだが女将さんは嫌い」と言わせたりしながら人情噺になるのを避け、落ちになだれ込んでいる。


(演目)

  • 前座-------立川らく次
  • 厩火事-----立川志らく
  • 大工調べ---立川志らく
  • 仲入り
  • 抜け雀-----立川志らく

(時・場所)

  • 2014年5月8日(木)
  • 19:30〜21:45
  • 渋谷 伝承ホール


<厩火事.com>
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