神田ようかんは2022年に神田春陽に弟子入りして、今年4年目の前座である。滑舌が良く、説得力もある。「和田平助 道場破り」は水戸光圀の家来で、居合の名人和田平助の物語である。剣豪ものを心地よく聴くことができた。
2番手に出た田辺いちかさんは「黒雲のお辰」というスリの女親分の話である。以前助けたことのある老人に、命を助けられるという人情ものである。いちかさんは登場人物たちの表情を演じるのが巧みである。
一龍斎貞寿は「好き好き金右衛門様」。赤穂義士伝の登場人物である岡野金右衛門を主人公にした新作講談である。作者は神田茜。
神田あおいは「初代波の伊八」。波の伊八は実在の人物で、江戸時代後期、主に房総各地で約50の寺社に作品を納めた宮彫師。本名は武志伊八郎信由で、躍動感ある波を表した欄間が見事であったため、このような異名で呼ばれている。あおいは真打になって今年で10年目のベテランである。この話そのものが平板な作りになっているのかどうかわからないが、あおいの読み方は単調でメリハリが乏しく、身を入れて聴くことができなかった。
仲入りをはさんでトリは神田愛山先生。「強迫神経症一代記」は講釈師品川陽吉先生の話と言いながらも、実は自分の話であった。外出の時に鍵をかけたかどうか、台所の火を消したかどうかが気になったりすることは誰にでもある。それを何回も確認しに行かないと気が済まなくなると、強迫神経症という病気と判断される。自分が病気であると自覚した愛山先生は岸田秀やフロイトの著書を読んで研究した。こんなことが講談になるかどうか自信がなかった愛山先生は、今日の会でやってみて、拍手の音によって今後使えるかどうか判断したい、とこの話をかけたそうである。
読み終えて頭を下げた瞬間、すごい拍手が会場に鳴り響いた。
|