古今亭佑輔は古今亭志ん輔の弟子で30才の女流落語家である。二つ目になって4年目。「やかんなめ」は女性の病気「癪(しゃく)」の治療に銅のやかんを舐めると良い、という民間治療から発想した噺である。
滑稽噺だが、こういう話はまじめくさってやればやるほど面白みが増す。佑輔は話は上手いが、女流独特の臭みがある。それが笑いを妨げている。
立川寸志は「くしゃみ講釈」。この話は去年の夏、このスタジオフォーで柳亭こみちで聴いたのが最初であった。恋敵の講釈師を胡椒で燻して邪魔しようとする噺である。
寸志の「くしゃみ講釈」は後半になればなるほど、畳み込むようなリズムで進んでいく。絶頂に達した時にストンと落とす。その手際が実に良い。観客全員が寸志さんのリズムに乗って進んでいく感じが心地よい。
柳家小ふねは今日31才になった。二つ目になって2年目。
寸志さんが彼がいるだけで楽屋が不穏な空気に包まれる。今日はなんかやりますよ、と評していた。出てきた彼はごく普通の青年であった。
話し始めたら、普通の青年ではないことがわかった。何か違うのだ。無表情で淡々と話すだけなのだがやたらおかしい。彼が「山田!」とか「大家!」というだけで会場大爆笑になる。なんなんだ、これは。こんなの初めてだ。
これを「フラ」というのか。「鮑のし」を淡々と喋るだけで30人ほど入った会場が揺れるほど笑いに包まれた。15分ほどの噺だったがこんなに笑ったのは久しぶりだった。
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