和泉、一左二人会  一覧へ


和泉、一左二人会

会場に入ったら座席が7つしかない。予約の台帳を見たらそれより少ない。結局観客は4人だった。

4人が正方形の4隅の位置に座った。真ん中がガラ空きだ。これはやりにくいだろうな、と思った。

最初に出てきた弁財亭和泉は平然としている。会場を見渡すと、こういうのは慣れてますから、と言って「寿限無」に入っていった。「寿限無」・・・?

「寿限無」とはどういうことだ。弁財亭和泉師匠は新作落語の噺家さんではないか。彼女の高座は10年くらい聴いているが、古典落語は聴いたことがない。どういう心境の変化なのだろう。

彼女の心境はわからないが、これも一期一会だ。

古典をやっても彼女独特のフラは変わらない。何度も聞いた噺だが思わず聞き入ってしまう。と、突然サゲをつけて終わってしまった。時計を見ると6分しか経っていない。

次は春風亭一左。2004年春風亭一朝に入門。2020年真打昇進。一之輔の弟弟子になる。落語協会サーフィン部副部長。運動神経の良い人なんだろう。

和泉が6分しかしゃべっていない。あわてて出てきたということをまくらに「転宅」に入っていく。

入った家のおかみさんにだまされ、お金も巻き上げられる、という間抜けな泥棒の噺。一左は表情豊かに話す。

仲入りのあとはまず一左が出て、話は「金明竹」。何を言っているのかわからない関西弁の男を相手にして困る与太郎。おかみさんに助けを求めるが、おかみさんも早口の関西弁が聞き取れず、困りはてる、という噺。

一左はそれぞれの役を表情豊かに演じた。

さてトリは和泉師匠。何をやるんだろう。

まくらなしでいきなり恋わずらいで伏せる職人をおかみさんが見舞うシーンから始まった。はてこれは「千両みかん」?「紺屋高尾」?「幾代餅」?

旦那が()き米屋の主人とわかって、「幾代餅」ね。古典落語の大ネタできたもんだな。

幾代太夫が搗き米屋の奉公人の清蔵に、嘘で塗り固められた世界に住む自分は、あなたによって初めて真実(まこと)の心に触れることができた、と述懐する場面。

この場面は以前から嘘くさい、と思っていた。お大名を相手にする吉原遊廓のナンバーワンの花魁(おいらん)が搗き米屋の職人に惚れるだろうか。

和泉は「嘘くさい」と思わせずに幾代大夫を演じた。演じている時は幾代になりきっていた。幾代の言葉に涙が出た。

40分間の大ネタだが、和泉はみごとに演じきった。6分間の「寿限無」はこれをやるための仕込みだったか。

これから弁財亭和泉がどういう方向に向かっていくのか、興味深い。

 

(演目)
   ・寿限無----- 弁財亭和泉
   ・転宅----- 春風亭一左
   ・仲入り
   ・金明竹----- 春風亭一左
   ・幾代餅----- 弁財亭和泉

                   
(時・場所)
 ・2024年1月17日(水)
 ・14:00〜15:30
 ・らくごカフェ



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