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午後のこみち

前回の「午後のこみち」は今年の8月8日、真夏の午後であった。今回は師走の12月30日。夏と冬の聴き比べとなった。

前回の初めの噺が「青菜」で真夏の午後に打ち水をするという風流な話題から始まった。今回のトリの噺が「宿屋の富」と、冬の風物にふさわしい話題で、落語というものが季節感なしには語れないという見本のような会となった。

2ヶ月ごとにやっているという「午後のこみち」の会は今回で39回目になったそうだ。シリーズで長く続けているからこそできることがある。この会の常連になったものの役得と言えるだろう。

近況報告も兼ねての長めのまくらに続いて始まった噺が「ぞろぞろ」。神様たちが神無月に出雲に集まって相談を始めたあたりでは「厩火事」かな、と期待した。

午後のこみち 演目

これは本当に神様がいたずらをする噺。時々はさまれる小ネタがバカに可笑しい。

次は林家きく麿師匠作の新作落語「スナック・ヒヤシンス2」。この噺は0から始まって4まであるらしい。そのうちの2である。1のあらすじをざっと振った後2に入っていったが、1を知らなくても十分面白い。

スナックのママと中年と思われるホステスの会話がむやみと面白い。場末のスナックの初老のマダムと中年のホステスとの会話である。下手な話し手がやればうらぶれた会話になりそうなところを、むやみやたらに面白く感じさせる秘密は話し手の教養と諧謔精神という調味料が効いているからに違いない。

若いバスガイドさんの表情と言葉遣いには体を折り曲げて笑ってしまった。

仲入りの後はトリの「宿屋の富」。何度も聴いて知っている噺ではあるが、こみち姉さんは時々はさむ小ネタがバカに可笑しい。富くじが当たったら、ああしようこうしようと言い合う庶民の姿が、こみち姉さんのスパイスの効いたフィルターを通して語られると、切なくも滑稽に我々の胸に響いてくる。

夕方の地蔵通り商店街はまだひとの流れは止まず、参拝客と買い物客が入り混じってにぎやかであった。

 

(演目)
   ・ぞろぞろ----- 柳亭こみち
   ・スナック・ヒヤシンス2----- 柳亭こみち
   ・仲入り
   ・宿屋の富----- 柳亭こみち

                   
(時・場所)
 ・2023年12月30日(土)
 ・14:00〜15:30
 ・スタジオフォー



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