歌劇「運命の力」序曲は勇壮で派手な曲だ。長大なマーラーの交響曲の前にやるにはふさわしい。
マーラーの交響曲第5番はトランペットのファンファーレから始まる。印象的な出だしである。
全曲的に張り上げるところは雄大に、歌わせるところはゆっくりと十二分に歌わせていた。
第三楽章のスケルツオではホルンによるテーマが繰り返される。ホルン奏者は本楽章ではソリストのように立って演奏していた。
ハープと弦楽器のみで演奏される第四楽章のアダージェットは夢の中にいるような演奏だった。この曲を聴くとビスコンティ監督の映画「ベニスに死す」でダーク・ボガード演ずる作家アッシェンバッハが美少年タッジオの姿を追い求めてさまよう海岸のシーンが目に浮かぶ。アッシェンバッハのモデルはマーラーであった。
曲を演奏するうちに指揮者のガウンの色が変わってきた。よく見ると背中に張り付いている。まさに大熱演であった。
アンコールのディベルトメントは通常よりも高速で演奏するしゃれた編曲であった。
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