座席はオーケストラを真横から見下ろす位置であった。目の下にハープが2台見える。指揮者とピアニストの視線での合図や、楽団員の各パートへ出す指示もはっきりわかった。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲はメリハリのある演奏で、オーケストラはピアノをサポートする役割を十分に果たしていた。ラストでピアノとオーケストラが小気味の良いアンサンブルで同時に終わるところでは思わずため息が出てしまった。
コンサートの前半でアンコールが出ることはあまりないことだが、ピアニストの川田健太郎氏はショパンの夜想曲を弾いてくれた。
リヒャルト・シュトラウスの「アルプス交響曲」は大変大掛かりな曲であった。舞台全体に隙間なく楽団員が配置され、舞台上方にはパイプオルガン奏者がいて、さらに舞台の外では10名ほどのホルン奏者が演奏に参加していた。
曲はメロディよりもリズムやアンサンブル重視で、鳥や小動物たちの鳴き声、風の音や太陽の輝きといった大地の自然を表現しているようであった。
パイプオルガンやヴァイオリンを擦った音が風になり、ティンパニと大太鼓の音が大地の振動になった。指揮者の咆哮は通常の観客席からは見えないし、聞こえなかったろう。
大自然の叫びは約1時間後に終息したが、指揮者はしばらくの間そのまま静止していた。
アンコールはドビュッシーの「月の光」であった。
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