山下洋輔が自分の後世を託す若手ジャズミュージシャンをプロデュースしたコンサートである。
まずは高橋信之介、彼のドラミングは相変わらず見事だ。音よりも形を見ているだけで惚れ惚れする。スピード感があって滑らか、そして要所要所にワイルドになる。
ニューヨーク在住なので好きなときに見るというわけにはいかない。今回もこのコンサートのためだけに帰国したという。
挟間美帆は作曲、編曲家である。20才のときに山下洋輔の”ピアノ協奏曲第3番”をアレンジして注目された。今回は自分の作編曲した曲3曲を小編成のストリングスとパーカッションで表現した。
それらの曲は現代音楽に近いジャズかジャズに近い現代音楽で私にはその良さがよくわからなかった。
スガダイローは山下洋輔と連弾で山下作曲の”キアズマ”と”クルディッシュ・ダンス”を超高速で弾いた。目にも留まらぬとはこういうことだ。手が見えないほど速い。
ただやり方が山下が開発した方法なので独自性は感じられなかった。
寺久保エレナは22才のアルトサキソフォン奏者。現在バークリー音楽大学に在学中。この人の演奏にはぶっ飛んだ。チャーリー・パーカーを生で聴いたらこういう感じではなかろうか。
それでいて彼女独自のものを持っている。山下洋輔が彼女に贈った曲”North Bird”よりも自分が作った曲”Burkina”のほうがずっと生き生きしていて独自性が感じられた。
山下洋輔はソロをとったときの派手なパフォーマンスもよいが、じつは他のミュージシャンが演っているときのバッキングが素晴らしい。
下でじっくり支えながらも邪魔にならないように自分のものを出している。
それに注目して聴いていると体が自然に動いてくる。しっかりしたフォービートでパッキングしているからだ。
昨年肝臓を悪くして2ヶ月間入院したという。72才、これからも体を大事にして活躍してほしい。
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