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新日本フィルハーモニー交響楽団 第11回定期演奏会

コンサートは「フリーメイソンのための葬送音楽」から始まった。重厚で壮大なイメージの曲である。 新進の指揮者冲澤のどかが自己紹介をしたように感じた。

マーラーの「亡き子をしのぶ歌」のメロディは彼の交響曲にも使われている。歌曲の伴奏というよりも歌と対等の存在感を持つ曲である。バリトンの大西宇宙は体が大きくオーケストラと対等の存在感を持って堂々と歌った。

休憩の後はブラームスの最後の交響曲である。「交響曲第4番 ホ短調」はよく知られたメロディから始まる。特筆すべきは指揮者の沖澤のどかの堂々とした指揮ぶりである。すっと立って左右の腕を大きく広げ、力強く優雅に指揮棒を振る。こんなに堂々とした指揮者を見るのは久しぶりである。というより初めてかもしれない。

たいていの指揮者はケレン味がある。小澤征爾でさえ師匠のカラヤンを真似て姿勢が悪い。モンキースタイルである。何十年もあの格好で指揮をしていたのでは腰が悪くなるのは当然である。飛んだり跳ねたりする指揮者も多い。ダンスをするように指揮台の上を歩き回る指揮者もいる。

沖澤のどかの指揮スタイルは羽を広げた白鳥のようである。その優雅な指揮ぶりは故カルロス・クライバーを彷彿させる。

アップテンポな第3楽章ではオーケストラの全員が彼女に集中しているのが感じられた。周りを見ると観客も身を乗り出すようにして彼女の指揮ぶりを見つめている。舞台と観客が一体になった幸福な時間が過ぎて行く。

新星が頂点を目指して駆け上っていく瞬間とはこのようなものではないかと思った。


 
(曲目)
   ・フリーメイソンのための葬送音楽----- モーツァルト
   ・亡き子をしのぶ歌----- マーラー
   ・休憩 
   ・交響曲第4番 ホ短調----- ブラームス
(演奏)
   ・演奏----- 新日本フィルハーモニー交響楽団
   ・バリトン----- 大西宇宙
   ・指揮----- 沖澤のどか

                
(時・場所)
 ・2022年11月18日(金)
 ・14:00〜15:45
 ・すみだトリフォニーホール


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