第373回巣ごもり寄席  一覧へ


チラシ

すがも巣ごもり寄席は2018年以来だから4年ぶりになる。コロナ旋風で3年間ほとんど文化的な催しに触れていない。

今回のお目当ては上方(かみがた)の若手講談師旭堂南歩だ。1991年10月生まれの30才。2019年に旭堂南三衛門に弟子入りして3年目の若手である。贔屓(ひいき)の神田松之丞が真打に昇進して神田伯山となり、成金の二ツ目落語家たちが次々と真打に昇進した。桂宮治にいたってはテレビ番組「笑点」のレギュラーになってしまった。

ここは何とか二ツ目以下の若手を開拓しなければならない。

今年の春先からチラシ等で何度か目にする若手講談師旭堂南歩というのはどうであろうか。

旭堂南歩

親しみやすい顔、多彩なゲストとのやりとり、企画力もありそうだ。

南歩の出し物は「太閤記 三日普請」。木下藤吉郎が他の大名が3ヶ月かけてもできなかった塀の敷設を3日で仕上げてしまうという話である。声が大きく口調にメリハリがある。松之丞ほどの迫力はないが、講談になっている。なかなか良いのではないか。

時々上方(かみがた)流のオーバーアクションで笑いを取ろうとするが、シニカルな東京人はこういうアクション芸には反応しない。東京で1年も暮らせばその辺はわかってくるだろう。上方から東京に出てきた先輩の笑福亭羽光さんに聞いてもいいだろう。

立川かしめも久しぶりに目にした。2015年、立川こしらに入門。2020年4月、二ツ目に昇進。2025年1月30日、真打に昇進予定である。4年ぶりに見たかしめはすっかり噺家さんの顔になっていた。

演目

顔ばかりでなく、話しっぷりも噺家さんである。若手を応援する醍醐味はこれである。

かしめは「長めの寿限無」か「気味の悪い猫と金魚」のどちらがいいですか、と客席からアンケートを採った。結果8対0で「気味の悪い猫と金魚」になった。確かに「猫と金魚」のようで「猫と金魚」ではない。「気味の悪い猫と金魚」としか言いようのない噺であった。

桃月庵白浪は桃月庵白酒門下の二ツ目。2014年10月に桃月庵白酒に入門。2015年10月1日に前座となり、2019年5月21日に二ツ目に昇進した。今日はコロナに似た症状がでて急遽休演。代演として柳家あお馬の出演になった。

柳家あお馬は1989年7月生まれの33才。2014年6月、五代目柳家小せんに入門。2015年5月、前座となり、2019年2月に二ツ目に昇進した。今日の3人の出演者とひとりの休演者はほぼ同格の芸歴である。

入門が1日早ければあにさんと呼ばれ、絶対服従が芸人の世界である。出演順は当然南歩、かしめ、あお馬となり、あお馬がトリをとることになった。

それにしてもあお馬の「居残り左平次」は素晴らしかった。江戸前の噺家が歯切れの良い江戸言葉でポンポン啖呵を切るという感じだった。経歴を調べる前はあお馬が二ツ目とは思わなかった。なぜ真打がこの巣ごもりの会に出るのだろう、と不思議に思ったほどだ。知らなければ、この話しっぷりで二ツ目になって3年目とは誰も思わないだろう。

本日の有力な若手探しは大成功だった。おもてはまだ暑かったが、実に清々しい気分であった。


 

(演目)
   ・太閤記 三日普請----- 旭堂南歩
   ・猫と金魚----- 立川かしめ
   ・居残り左平次----- 柳家あお馬

                   
(時・場所)
 ・2022年7月27日(水)
 ・13:00〜14:30
 ・スタジオフォー


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