ボロディンは「交響詩 中央アジアの草原にて」しか知らなかった。「イーゴリ公」はボロディンが2曲のみ作曲したオペラの作品である。本曲はオペラらしくきらびやかで派手な曲想である。演奏会の開幕にふさわしい曲である。
スメタナの「わが祖国」もまたこれしか知らない。有名なのは第2曲目の「モルダウ」で、これは聴けば誰でも知っているが、本日演奏された「ブラニーク」は第6曲目であり、初めて聴いた。勇壮なテーマで威勢の良い曲である。
休憩の後はお目当ての「チャイ5」こと、チャイコフスキーの「交響曲第5番 ホ短調」である。チャイコフスキーの曲の中で、たぶん今一番好まれている曲である。本曲は第6番の「悲愴」のような副題は付いていない。
第1楽章と第4楽章は「運命の主題」と称される勇壮なメロデイが鳴り響く。特に第4楽章のラストでは、会場全体にトランペットのファンファーレが鳴り響く。運命などなにするものぞ、自分の力で突き進むんだ、というように。筆者も含めてこの曲には誰もが背中を押されるはずである。
「運命の主題」以外に、第2楽章のホルン独奏は印象的である。過激に自分が自分がと主張するのではなく、ゆったりと瞑想する時間も必要なんだよな、とつぶやているようである。
第3楽章では曲想がガラリと変わり、優雅なワルツが演奏される。メロディメーカーとしてのチャイコフスキーの本領発揮の楽章である。
勇壮な曲に背中を押された観客の拍手は鳴り止まない。
指揮者がアンコールをやります、というように指を一本たて、始めたのは鎮魂歌のような静かな曲であった。組曲「モーツァルティアーナ ト長調」より第3曲「祈り」という曲であった。
筆者も含めて、すっかり満足した観客たちは、三々五々感想を言い合いながら、師走の暮れかかる街を京成線青砥駅方面へ向かった。
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