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扇辰日和 in とうわ

コロナもだいぶ下火になり、落語の虫がウズウズし始めてきた。

オリンピックが終わる頃、自宅近くの東和地域学習センターで生の落語を演るという記事を目にした。演者は入船亭扇辰師匠である。

会場のレクリエーションホールは詰めれば80人程度の中規模の会議室。当日は椅子の間隔を広げて定員40名程度に調整してある。当日のチケットは完売だ。

前座は入船亭辰ぢろで演目は「子ほめ」。「子ほめ」は代表的な前座噺。御隠居さんから人の褒め方をレクチャーされた八五郎が教わった通りに褒めようとするが、どこか間が抜けていてうまくいかない、というギャグネタである。上手い人がやるとやたらおかしいが、下手な人がやるとまるで笑えない。前座噺にしては厄介なネタである。

2018年に入門、見習いを経て2020年に前座になったばかりの辰ぢろはこの噺をうまくこなし、客席の笑いをとっていた。独特のフラがある。良い噺家になるかもしれない。

扇辰日和 in とうわ

前座が終わると、今日のお目当て入船亭扇辰師匠が登場した。着物を粋に着こなし、ダンディな姿は千両役者だ。

この会はコロナで何度も流れそうになったが、その都度センター長が粘り強く交渉して、本日実施にこぎつけた、という裏話を披露した。師匠の奥さんの実家がこの近所で、今日は奥さんの兄夫婦が来ている、と紹介した。開始早々、会場はアットホームな雰囲気に包まれた。

悋気(りんき)独楽(こま)」は旦那がお妾さんの家に入り浸りになるのを嫉妬した奥さんが、コマを回して三人の関係を占うという滑稽噺である。扇辰師匠は奥さんとお妾さん、旦那の後をつけさせる丁稚のリアクションをオーバーアクト気味に演じる。会場は大爆笑である。

休憩をはさんでトリは「井戸の茶碗」。登場人物は裏長屋に住む浪人・千代田卜斎、細川家家臣の若い武士・高木佐久左衛門、それと正直者のくず屋の清兵衛の三人である。それぞれが無類の正直者であるために生ずるドタバタ喜劇であるが、最後にしんみりするという落語ならではの話である。会場は暖かい笑いに包まれ、その後、鼻をかむ音や啜り泣く音があちらこちらから聞こえてきた。善良さや思いやりといった人間の良い部分を前面に出す噺である。

この後、浅草演芸ホールで6時15分からの高座があるという扇辰師匠は予定時間を30分オーバーする大熱演であった。

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それにしても「花咲か爺い」の小噺は可笑しかった。


 
(演目)
   ・子ほめ----- 入船亭辰ぢろ
   ・悋気(りんき)独楽(こま)----- 入船亭扇辰
   ・休憩 
   ・井戸の茶碗----- 入船亭扇辰

                
(時・場所)
 ・2021年11月7日(日)
 ・13:30〜15:30
 ・東和地域学習センター レクリエーションホール


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