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第一夜:初天神 第二夜:粗忽の釘 第三夜:百川 第四夜:ちはやふる 第五夜:青菜 第六夜:らくだ 第七夜:笠碁 第八夜: 第九夜:お見立て
第十夜:花見の仇討ち

4月7日、新型コロナウイルスのため、緊急事態宣言が発令され、都内のほとんどの寄席が閉鎖されてしまった。

上野・鈴本演芸場の4月の下席でトリをとることになっていた春風亭一之輔は時間が空いてしまった。

予定していたものと同じ演目を同じ時間に、YouTubeでやってやろうじゃねえか、ということになった。聴きたくても地方在住だったり、チケットが買えなくて行くことのできないファンにとっては天の恵みであった。YouTubeにアクセスしたファンの数は毎回1万を超え、落語会としてはケタ外れのものになった。ちなみに鈴本演芸場のキャパシティは285席である。10日間連続満席だったとしても2,850人にしか聴いてもらえない。こちらは10日間で10万人以上の人が聴いたことになる。5日目から解禁された「投げ銭」の額も馬鹿にならない。

緊急事態宣言がいつ解除されるのか。解除されたらすぐ寄席が再開されるのか。今の時点では誰にも分からない。一之輔の試みは今後のライブの方向を指し示すものである、と同時に前座、二つ目たちの底辺を広げることにもなるだろう。

第一夜、「初天神」は一之輔、得意中の得意の噺である。自分の次男の生態を観察して、それを「金坊」にうまく応用している。一之輔の「金坊」は他のどの落語家がやる「金坊」より生き生きしている。おとっつぁんと金坊のやりとりは普段の一之輔親子を見るようである。

第二夜、「粗忽の釘」。第三夜、「百川」。第四夜、「ちはやふる」。第五夜、「青菜」。以上は典型的な滑稽噺である。観客は落語家扮する勘違い男や知ったかぶり男たちを笑っていれば良い。

第六夜になって少し傾向が変わってきた。「らくだ」である。第五夜までの滑稽噺から一転、クズ屋の久六とヤクザ、丁の目の半次の人間関係のアヤを表現する大ネタである。酒を酌み交わしながらの二人の会話は迫力満点であった。

第七夜、「笠碁」は人情噺を滑稽化したような噺である。一之輔のキャラクターに一番あっている。老人同士の友情が滲み出ていた。春風亭一朝に入門を申し出た日が19年前の今日(4月27日) であったとか。まくらにその時の話をした。

第八夜、「鰻の幇間」は先々代の三代目春風亭柳好が得意にしていた噺である。あのリズミカルで調子の良いタイコ持ちが耳に残っていて、今日のはイマイチであった。名演のアーカイブが残っているとそれを超えるのはなかなか大変だと思う。今「替り目」をやる人がなかなかいないのも古今亭志ん生の名調子が記憶に残っているからだろう。

第九夜、「お見立て」。花魁喜瀬川を待つ杢兵衛大尽の噺。猿蟹合戦の長いまくらの後、花魁噺へ。少し間延びした感じ。50分の制限時間に拘らない方がリズムに乗って話せるのでは。

第十夜、「花見の仇討ち」は本来やるはずだった鈴本演芸場で収録した。9日目までのらくごカフェよりだいぶ格調が高い。三味線お囃子も生演奏でやってくれた。
一之輔の噺もリズムが良く、10日間で一番いい出来だった。


 
(演目)
   ・第一夜: 初天神      ・第六夜: らくだ
   ・第二夜: 粗忽の釘      ・第七夜: 笠碁
   ・第三夜: 百川      ・第八夜: 鰻の幇間
   ・第四夜: ちはやふる      ・第九夜: お見立て
   ・第五夜: 青菜      ・第十夜: 花見の仇討ち
(演者)
   ・春風亭一之輔 

                
(時・場所)
 ・2020年4月21日(火)〜4月30日(木)
 ・20:10〜21:00
 ・YouTube : 一之輔チャンネル


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