演目は「徳川天一坊」。全20話のうち第2話、第3話、第5話、第8話の抜き読みである。
天一坊は徳川吉宗の御落胤が亡くなる顛末を聞き、同年同月同日生まれの自分が成り代わってやろうと決意する。この時12才。
20才になったとき行動を開始する。ひとりではできない。悪党を選択し仲間にしていく。大阪に乗り出し、勢いをつけて江戸に出向く。
老中以下将軍家の主だった家臣を騙すのに成功する。一人だけ疑いの目で見ているものがいた。南町奉行大岡越前守である。
さあ、これからどうなるのか、というところで今日の公演は終了。観客から「残念」のため息が漏れた。
今日は全20話のうち第8話まで。これからどうなるのか。「閉門破り」「水戸殿登場」「網代問答」「紀州調べ」「龍の夢」…「召し捕り」まで。題名を見ただけで波乱万丈の匂いがする。 講談や落語が庶民の唯一の娯楽であった時代、わずかな木戸銭を持って毎夕続きを聴きに行ったのだろう。講談の続き物は日本のネバーエンディング・ストーリーであった。
天一坊が伊賀之亮を味方につけるシーンで言うセリフがいい。「天下泰平の世の中、イチかバチかの面白い生き方をしてみないか?」
来年6代目神田伯山になることが決まっている松之丞。今乗りに乗っている。
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